ビールを飲むぞ

酒の感想ばかり

「切腹禁止令」 山田風太郎

2015-05-27 21:36:25 | 読書

この短編には様々な読者から、様々な感想が投稿されていた。

自分自身読んだこともない。

読者たちの感想は、山田風太郎っぽくない。異色の小説。みたいに評されていた。

読んでみた。

長年の風太郎読者の自分としては、風太郎らしさが満載の話だ。明治ものからしたら異色かもしれない。しかし、初期のミステリーの系譜そのものだ。他愛もない話に始まり、皮肉な結末で終わるという。

この皮肉な結末で終わるというのは、初期の風太郎小説に特徴的だ。ある時期の(これまた初期の)田中芳樹のSF小説と近似している。

要はどんでん返しが巧みなのだろう。

自分としては、

過去の因習、切腹というものが理不尽なものだということ。つまり、重大な過ちを犯した時の責任や、自分が恥ずかしいと思うことによって自死を選ぶということ。それに対して切腹することが山田風太郎には理解できないのだ。ここでは特定されていないが、自分で思うに三島由紀夫が割腹したことにも触れられていて、それは好ましくはないことだと言っている、場面が出てくる。ストーリーよりその山田風太郎と三島由紀夫の時代性を推測して、そこから様々な推測が膨らむ。

これは山田風太郎初期の作品の傾向であり、それをSFで表現した、初期の田中芳樹なのだ。


アサヒドライプレミアム 贅沢香り仕込み

2015-05-27 20:00:12 | ビール

アサヒもここのところいろんなバージョンを造っている。

稀少ホップの「アマリロ」というのをしかも3倍使っているらしい。

爽やかで華やかに香るとのことだ。

さて、

香りは一番搾り的だ。

飲むと確かに爽やかなホップの香りがする。華やかなホップ系となると薄いイメージだが。プレミアムらしく味はしっかりしている。

一番搾りほど複雑な味でもなく、エビスのように濃くもないので、さらりとはした印象だ。


船中八策 うすにごり生

2015-05-27 19:37:41 | 日本酒

松山の津田酒店で購入。

これは高知の酒で、司牡丹のブランドの一つ。辛口がウリだ。学生の時に普通のバージョンを飲んだことがあるが味の記憶はない。

この、うすにごり生は季節限定で720mlのみの発売で、年間1500本しか生産されないそうだ。それが良く手に入ったものだ。

しかし晩冬から初春にかけて作られるらしいので、はっきり言って売れ残りだ。

純米超辛口と表示されている。

日本酒らしい香り。しかし辛口ゆえか高知の酒ゆえか生ゆえか、フルーティーささえ連想させる、キレのよさそうな(べったりしていない)香り。

フレッシュな飲み口で、すぐに日本酒っぽさが現れてくる、しかし、さらに辛味というのか渋味というのか甘ささえ感じるものがかぶさってきて、日本酒の不快さは感じない。

そしてキレはいい。これは高知らしい。キレはいいが高知の酒らしい、辛味のような余韻がしばらく残る。

全体的にパンチのある酒と言える。

悪くない。

このあとに石鎚正宗を飲むと、船中八策の苦味渋味が残っているので、石鎚正宗のきれいさ繊細で女性的な味を実感することができる。


「地の果ての獄」 山田風太郎

2015-05-24 02:01:33 | 読書

20年以上振りの再読。
「明治十手架」と姉妹編のようであるが、こちらが先に書かれ、反対に舞台となる時代はこちらの方が後となる。有馬四郎助が主人公ではあるが、明治十手架の主人公原胤昭も出てくる。冒頭で、昔幕府の与力であったこと、本屋をやっていて福島事件の折に反政府の人間の錦絵を売って石川島の監獄に入れられたこと。そこで腸チフスにやられたことなど「明治十手架」のエピソードが出てくる。しかも、書かれたのはこちらの方が先なので何ともおかしい。「明治十手架」では江戸弁だったが、こちらでは上品な標準語なのが少し違和感があるが。
初めに文春文庫でこれを見て買ったときに思ったのは、表紙の図柄と相まってだが、暗い、寂しげな内容を想像させた。エンターテイメントよりは、純文学的なものを。当時はどう感じたかわからない、思い出せないが、その当時の妙な文学さをその後思い続け、今、読み返すと、確かに、後期の風太郎小説にあるような娯楽的な空気はあまり感じられず、シリアスな雰囲気だ。姉妹編の明治十手架と比べると、時代はこちらが後だがかかれたのはこちらが先であるということから、どことなく固い文体、雰囲気で、それが純文学的でさえある。冒頭はそう思わせられるくらい、純文学小説と行っても過言ではない。エンターテイメント性を持ちながら、情緒的な文学性も持つ山田風太郎に感服する。
「五寸釘の仁義」の章。五寸釘の寅吉の半生を振り返る話。妻や娘に対する思いがせつない。自分が泥棒であるばかりに、妻は世間から白い目で見られ、娘も友達ができず一人でいるしかない。そんな家族へのいたたまれなさ、それでいて足を洗うこともできない。
それにしても読むほどに、本当に過去に読んでいたのだろうか?というほど記憶にない。有馬四郎助が主人公の小説だ、言葉も薩摩弁で特徴的なのだが、まったく思い出せない。
それは、この小説は、有馬四郎助が囚人の話を聞くという体裁だからなのかもしれない。つまり囚人が次々と自分の身の上話を有馬に話す連作形式だからか。
この囚人たちの物語が物悲しく、印象的だ(過去読んだ時にただ一つのエピソードも記憶に残っていないのが情けないが)。関連があるのかわからないが、その一つ一つのエピソードはポールオースターに近いものを感じる。奇想天外なストーリーと展開。そして、終わった時にしみじみとした感動を誘う。年代的にはポールオースターの方が後なので風太郎の焼き写しの可能性もあるが、オースターの数年前にこんな不条理で感動的な話があったのだと感慨深い。
 「邏卒報告書」の章。真面目な畑寺重蔵、それに対して遊び人の高戸宇之助
真面目なのに不遇の生活を送り、それでいて世渡り上手の宇之助に一目おいている。その愚鈍さ。いや、純粋なのだ。情報の発達した現代では考えがたいが、その当時ならあり得る。自分がどういうたち位置なのかわからないのだから。なんの情報もなく、自分が感覚的に信じられる対象に無私で依存する。今の我々からすれば信じがたいがそうなのだ。
「凍姦刑」の章はまるで怪奇小説のようだ。
 「西郷を撃った男」は我こそは西郷を撃ったと内心思っている囚人2人と看守1人の複雑な心理劇。結末がひねくれていて、それでいて悲しい。
「雪飛脚」有馬四郎助が、処刑に立ち会うのに耐えかね、猛吹雪の中、空知に会えて出張する。途中で逃げ出してきたお篠を連れて行くのだが、さらに吹雪が強まり、もうダメだと思った時に、独休庵の犬ぞりと出会い九死に一生を得るという場面。これだけは前回読んだ時のかすかな記憶がよみがえった。
「空知集治監」風穴の鉄は、炭鉱のガス爆発の予兆がわかると言うその特殊な能力のために重宝されていたのだが、犯罪の残虐性は今までに登場した囚人のような人情味は全くない。それが脱走を企てるが、結局それは皮肉な運命で結末を迎える。しかし他のエピソードでは感じなかった。安堵感を感じた。
最後の2章はクライマックスに向けての山場だ。少し非現実的な展開で進むのだが、息もつかせぬ大活劇。そして感動。章のタイトル通りの大奇蹟だ。
原胤昭が不可思議な技で、石川県令の岩村高俊のステッキをへし折る、などという場面が出てくるが、後年に書かれた明治十手架に出てくる十手架を使ったのではないかと思った。もちろんそんなことは山田風太郎は考えていなかったと思うが。
やはり山田風太郎はキリスト教に思い入れがあるように思われる。原胤昭にも思い入れがあるようだ。また、弱い立場の人間が虐げられていることに対し怒り、強者に反抗することに共感する。ヒーローは自己犠牲を厭わない。
 最後もこんな展開とは全く覚えていなかった。そのおかげで、新鮮な気分で読むことができた。
明治ものでは一番良かったかもしれない。
あと長編で未読なのは警視庁草紙だけか。

こちらは初めて読んだ文春文庫版の表紙。すごくクールで淋しくて冷たい印象の表紙だ。
時代を反映しているともいえるし、デザイナーの感覚にもよる。
これはこれで好きだ。ただ、このイメージと内容は少しギャップがあるのは事実。しかし、そのギャップも味なのだ。

上巻
20150429読み始め
20150519読了

下巻
20150520読み始め
20150523読了


サッポロ百年のキセキ 魅惑の黄金エール

2015-05-23 15:48:35 | ビール

香りはヴァイツェンのような酸味のある香り

味はというと、渋味がありながら地ビールレストランで飲むような味が広がる。心地よい。

飲んで行くと必ずしも地ビールという表現が合致はしない。

もしかしてオレンジピールなども入っているのではないかと思うくらいの渋味が感じられ、全体的には刺激感のある味だ。

華やかな香りがあり、後ろで乳酸味も感じられるか感じられないかあるがそれはそこまで強くない。

そして渋味が大きくかぶさってくる。ある意味個性的、妥協の産物である一般的なビールとは少しだが毛色が違う。