食後に紅茶をいれる時だけは、今でも真剣になる。
決して手を抜かない。
多めにお湯を沸かし、ポットとティーカップを温める。
お湯を注いだ後には砂時計を返し、ティコジーをかぶせて待つ。
仕事に追われているときこそ、最高のティーセットを出してくる。
見ているだけでため息が出るほど美しいポット。
たくさん素敵な器があるけれど、その中でもこれは私の宝物。
数年前、柴田雅章氏の展示会で、会場に入った瞬間に目が合った。
値段を見る前に、誰にも渡さないよう確保した。
それから値段を見て飛び上がったけれど、手放す気にはなれなかった。
これが他の誰かのものになるなんて考えられない。
器との出会いは、一期一会。
逃したらもう終わり。二度と出会えない。
お金はまた稼げばいいと、貧しい財布を空けた。
私はどんなに良い器も普段使いにしているけれど、
これはあえて「特別」なときに使用する。
落ち込んでいるとき、気分がいいとき、仕事がいそがしいとき、自分を慰めたいとき。
飴釉の艶やかな肌を長めているだけで幸せな気持ちになるからだ。
今日の紅茶はTWGのイングリッシュ・ブレックファースト。
単独の葉ならインド系のダージリンやアッサムが好きだけど、
ブレック・ファーストティーは、各メーカーのこだわりのブレンドが楽しくて、よく選ぶ。
TWGのは、華やかでややスパイシー。ミントのような爽やかさもある。
仕事の合間の気分転換にはちょうどいい。
実家に帰ると、今でも食後の紅茶をいれるのは、私の役目だ。
「かおりちゃんがいれると、なぜか同じ紅茶なのにおいしいのよね」と母が言う。
それで気を良くして、いつも率先していれている。
こんなに酒飲みになる前は、紅茶マニアだったんだよな、と思い出す。
珈琲を飲めない体質だったこともある。
(今では良い豆を使えば胃に悪くないと知り、毎日2、3杯は飲むが)
珈琲の豆を挽いたり、紅茶をいれたり。
そういうゆったりした時間って、毎日の生活の中で大切な気がする。
なんて。
余裕かましてる場合じゃないんだけど。
仕事は山を越えたと思いきや、さらに連なっていて、なかなか平地には辿り着かない。
土曜日はリフレッシュして、昨日からまたひたすら原稿を書いている。
今週も取材5本。毎日が締め切り。
ただ、酒蔵の原稿が終わったので、ちょっと気持ちはラクになった。
書けば書くほど自分の才能の無さに気づかされ、課題だらけになっていくけれど。
でも、チャレンジし続けられるというのはいいことだ。
あと10日、しっかり走り続けよう!