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医学部

 いささか旧聞に属するが、4/21号の「週刊朝日」に国公立大医学部合格者数ランキングが載っていた。それによると私の出身高校が、合格者81人で全国1位になったそうだ。一昨年にも1位になっていたから、返り咲きであり、学校関係者はさぞや誇りに思っていることであろう。1学年が400人前後の男子校であるから、およそ5分の1の生徒が国公立の医学部に進学している計算になり、他にも私立大学の医学部進学者多数いるだろうから、学年の3分の1近くが医学部に進学しているのではないだろうか。
 私にとってそれは別に特筆すべきことではない。私の同級生で、医者をやっている者をあげろ、と言われれば20人近くはすぐに言える。現在の在校生で、私の塾に通っている者の話を聞いても、少し勉強ができる生徒は、ほとんど全て医学部進学を希望しているという。親が医者である生徒も多く、いわば代々続いている家系も多いようだが、そうでない者たちも「成績優秀者=医学部進学者」という図式にのっとって、大した考えもなく医学部へ進学する者が多いようである。確かに現状では、医者は優秀な人材がなるものであり、高収入を得られる職種であるという認識が幅を利かせている。大学を選択する際に、将来のステータスを念頭におくことは当然のことであり、少しでも高い地位に上ることのできる職業に就ける学部を選ぶことも至極もっともなことである。そうした考えでみれば。県内でも有数の進学校である私の母校が、医学部進学者全国一位になるのも何ら不思議ではない。しかし、どうしても異論を挟みたくなるのは、私が天邪鬼であるせいだけでもないだろう。
 私の娘の出身校は同じランキングで、22位になっている。私立の女子高では桜蔭高校の42人に次ぐ30人で2位だ。先日娘が台湾旅行に一緒に行った高校の友人2名も、今は岐阜大と三重大の医学部の学生である。200人に満たない卒業生の多くが医学部に進学し、今年など地元の名古屋大学の医学部に進学した生徒は、私の母校の18人に次いで2位の8名いる。その娘が大学受験の際に、「ただ成績がいいっていうだけで医学部に行きたいっていう子が多くっていやになる。ただ収入が多いからという理由だけで、大した考えもなく医者になりたいって子が多すぎる。だから私は医学部には絶対行きたくない」と、自分の成績も省みずに偉そうなことをよく言っていたが、ある意味真実を語っていて、わが娘ながらなかなかしっかりした考えを持っているなと感心したものである。(医者になって親に楽させてくれよと思わないでもなかったが・・・)
 
 言うまでもなく、医者というのは人命を預かる大切な職業である。おいそれと簡単に自分の命を他人に任せるわけにはいかないから、医者には有能な人材がなってもらわなければならないだろう。しかし、現状では有能な人材、すなわち学校での成績優秀者であるとされていることに問題点がある。成績がよければ医者にならなければならないといった風潮が、私立進学校のトップレベルで蔓延しているのは危険である。私の同級生でも、「あいつが医者をやっているの?」と言いたくなるような奴がいっぱしの医者となっている。とても他人のことを思いやるような奴ではないのに、よくやっていられるものだと感心する。そんな奴には絶対にかかりたくないと思うが、それでも医者としてそこそこ羽振りを利かせている現状はかなり危ない。
 学校の先生でもそうだが、いったん免許を取得してしまえば、不適格な者でも続けていってしまえる現在の制度は見直されるべきであるし、そういう動きも現れてきつつある。医学部の入試でも、以前は理科で生物を選択しなくても入学できた。それは愕然とする事実であるが、昨今はやっと生物を必須の科目とする大学が増えてきた。歩みは確かにのろいが、高齢化社会が進むにつれてますます医者の資質が問われることが多くなるであろうから、ただの秀才クンではなく、社会の将来を見越したビジョンを持った、真に人のためになることを望む者たちが一人でも多く医者になれるような制度を作り上げていくことが急務である、と私は思う。


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