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すべて世は

 連休2日目、することもなくぼ~~っとしてたら、あまりの太平楽さに思わず、「すべて世はこともなし」という詩句が頭に浮かんできた。これはたしか、と思って、検索してみたら、詩全部がちゃんと載っていた。イギリスの詩人 Robert Browning の詩を上田敏が訳している。

  春の朝(上田敏訳詩集「海潮音」より)
 時は春 
 日は朝(あした) 
 朝(あした)は七時 
 片丘(かたおか)に露みちて 
 揚雲雀(あげひばり)なのりいで 
 蝸牛(かたつむり)枝に這ひ 
 神、そらに知ろしめす 
 すべて世はこともなし

 (原文)
  Pippa's Song  Robert Browning(1812-1889)
 The year's at the spring
 And day's at the morn
 Morning's at seven
 The hill-side's dew-pearled
 The lark's on the wing
 The snail's on the thorn
 God's in his heaven
 All's right with the world

上田敏の訳と原文を読み比べてみると、これほど見事なシンメトリーを描いたものはないように思える。素晴らしい。しかし、「God's in his heaven」がどうして「神、そらに知ろしめす」なんだろうかと不思議に思った。別に「神は天にいらっしゃる」でいいではないか。それに、そもそも「知ろしめす」という言葉の意味が分かるようでわからない。辞書を引くしかないなと調べてみた。 
【知ろしめる】
「しらしめす」の音変化で、平安時代以降の語,「知る」の尊敬語。
1. 知っていらっしゃる。おわかりでいらっしゃる。
2. お治めになる。
3. 管理なさる。お世話なさる。

とあった。ここでの意味は2の「お治めになる」になるのだろう。例文として、
「いますべらぎのあめのあめのしたしろすめすこと」と古今和歌集の仮名序があげられている。
 要するに、「神が天にいて、地上をあまねく統治しているから、この世のことはすべてうまく行っているんだ」と最後の二行で言っていることになるのだろう。確かに、昨日のような穏やかな陽気で、仕事も休みでのんびりした気分を味わえる日には、そんな感謝の気持ちも持つことはできる。しかし、それも特別な日だからこそのことであって、また忙しい毎日に戻ってしまえば、そうした悠揚たる思いなど吹き飛んでしまう。
 でも、やっぱり心のどこかにそうしたゆとりを持ち続けていなくてはいけないだろう。心にゆとりのない人間にまともな仕事ができるはずもない。

 まあ、私には忙しいほうが似合いではあるけれど。





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