
写真は、「中国 胡錦濤国家主席の訪問に抗議して、炎に包まれ通りを走るチベット人」
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6月末 新大阪行き新幹線車内でガソリンをかぶって焼身自殺した71歳容疑者の身勝手な行動により、巻き添えで52歳の女性が死亡、多数の負傷者も出て、新幹線車両も損傷、新幹線の運休も相次いだ。
常識的に考えると 他人の迷惑を考慮しない、身勝手極まりない、非難されるべきことだが、自殺する人というのは、そこまで配慮するほど理性的な精神状態ではないのかも知れない。 理性的な精神状態だったら、自殺しないだろう。
JR 東海の特急券払い戻し分と車両の損害の合計で 5億円 超になり、加えて 事故対応に当たった社員の残業代、特別な警備に当たった人の人件費なども考えると、損害額は 10億円 の試算もあるが、これは巻き添えで死亡・負傷者の賠償金は含まれていないから、人的賠償は別の話しになるらしい。 容疑者の遺族は困難な問題を抱えることになった。
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「新幹線『焼身自殺老人』の遺族に降りかかる『巨額賠償金』の計算式」(7月16日 週刊新潮) __ ※追加1へ
「新幹線で焼身自殺 暴走老人の心に火がつくまで」(7月16日 現代ビジネス) __ ※追加2へ
「老後貧困の恐怖! 貯蓄 3千万 でも破産の恐れ、年金のみでは月 8万 も生活費不足?」(7月16日 神樹兵輔/ビジネスジャーナル ) __ ※追加3へ
「老人が新幹線で焼身自殺、『社会的な孤立が大きな問題』」(7月8日 週刊女性 PRIME)
「新幹線で焼身自殺 暴走老人の心に火がつくまで」(7月16日 現代ビジネス) __ ※追加2へ
「老後貧困の恐怖! 貯蓄 3千万 でも破産の恐れ、年金のみでは月 8万 も生活費不足?」(7月16日 神樹兵輔/ビジネスジャーナル ) __ ※追加3へ
「老人が新幹線で焼身自殺、『社会的な孤立が大きな問題』」(7月8日 週刊女性 PRIME)
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もう一つ この事件で注目されたのが、”35年働いて月 12万円 の年金では介護保険料や家賃、光熱費を払うと手元にほとんど残らないので生活できない” という容疑者の悩みだった。
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記事3はそこから逆算して、容疑者の生涯平均給与額は 35万円 前後であったと推定、厚生年金保険料は会社と本人分の合計で月額 6万1159円 の年金保険料になる (本人負担分は半額の 3万579円)。 それを35年間納めた場合の合計は、年間 73万3908円×35年=約 2569万円 になる。
容疑者は60~70歳までの10年間ですでに 1350万円 前後の年金を受給、日本人男性の平均寿命 (80歳) まであと9年生きたとすると、さらに 1296万円 受給できるので 合計で 2646万円 になり、本人と会社が折半で支払った合計保険料 (2569万円) は元が取れるという試算だ。
65歳以上の高齢者世帯で平均年金受給額は月約 19万円 だから、他の年金受給高齢者世帯と比べても特段に “容疑者の年金が少ないとはいえない” としている。
また この容疑者が住んでいた東京都杉並区の月額生活保護額は、約 14万円 (生活扶助と住宅扶助) なので、この男性の年金額より多くなり、生活保護受給世帯になれば、税金も健康保険料も介護保険料も免除され、医療費、介護費、都営地下鉄、都営バスも無料になる。
ただし なまじ貯蓄があったり持ち家などの資産があるため、生活保護を受けられずに暮らす65歳以上の高齢者世帯も多いらしいが、この容疑者はアパート暮らしだから 特に資産はなかったのではないかと想像する。
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「生活保護者のほうが平均的サラリーマンより実収入が上?」(6月9日 週刊朝日) __ 勤労者の平均年収は 414万円 だが、年収 400万円 の人の手取り額 (税金と社会保障費を引いた額) は、配偶者と高校生の子供2人がいる家庭では 330万円 。 また「配偶者と高校生の子供2人がいる50歳代の生活保護者への給付額」が東京都三鷹市では 340万円 だという (抜粋)。
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確かに 容疑者の月 12万円 の年金では、まず家賃を例えば 5万円 払うとして、残額から健康保険料と介護保険料で 1~2万円 (年金額によって違う)、電気/水道/ガス代などで 2~3万円、食料雑貨が 3~4万円 となり、ギリギリの生活だったのかも知れない。
岩手の親戚に仕送りもし 全部で 1500万円 は送ったとのことらしいが、それで都心ではなく 郊外か岩手の家なりマンションを購入していれば 家賃の負担はなくなり、月 12万円、年 144万円 の年金でやっていけたのではないか。
或は 生活保護を受給すれば、ということになるのだろうか? ことはそう簡単ではない。 生活保護は仕事が見つかるまでの一時的なもので、生涯 永遠に支給されるものではないだろう。 やはり 人生設計が不足だったのかも知れない。
以上
※追加1_ 死に場所に新幹線を選んだ代償が、莫大なものになるのは間違いない。 71歳の容疑者、林崎春生の身勝手極まりない「焼身自殺」の巻き添えで、52歳の女性が死亡し、多数の負傷者も出ている。 さらに 新幹線の運休も相次ぐことになった。 もし 林崎の遺族に賠償金が請求された場合、その計算式はというと……。
神奈川県小田原市を走行中に、焼身自殺を図られた『のぞみ225号』の損傷は甚大だった。
県警詰めの記者によると、
「林崎は、先頭1号車の最前列座席付近でガソリンをかぶって火を点けた。 なので、前から3列目まで凄まじい燃え方をし、座席はアルミの骨組みがむき出しで、床を覆う塩化ビニール製のシートや樹脂製の窓なども高熱によって溶けていた。 車両以外にも、JR東海の被害としては 43本の新幹線を運休せざるを得なくなり、約 9万4000人の乗客に影響が及びました」
また、人的被害としては、お伊勢参りに向かう途中だった整体師の桑原佳子さんが気道熱傷のため窒息死し、一酸化炭素中毒や気道熱傷で、28人が重軽傷を負った。 いうまでもなく、林崎は死亡しているため、これらの賠償請求は林崎の遺族が対象になる。
最近の例では、愛知県で2007年、認知症を患う91歳の男性が列車にはねられて亡くなると、JR 東海はその妻と子どもらに、振り替え輸送の費用など 720万円 の支払いを求めて提訴している。
■相続放棄
果たして、今度のケースでは、どれくらいの金額を求められるのか。
鉄道評論家の川島令三氏が解説する。
「特急券は本来の到着予定時刻より、2時間以上遅れたら払い戻すという規約がある。 焼身自殺によって、東海道新幹線は最大で4時間半の遅れが出ました。 ですが そのうちの2時間分については払い戻しの必要がないわけです。 単純に、その比率に従えば、約 9万4000人のうち、払い戻しに該当するのは約 5万2000人という計算になる。 名古屋や新大阪までの特急券は 5000円 前後ですから、JR 東海はだいたい 2億6000万円 を乗客に支払わなければならなくなります」
まず JR 東海は林崎の遺族にこの払い戻し分を請求できるという。
「加えて、車両の損害への賠償も求めることができる。 燃え方からして1両まるごと交換しなくてはなりませんから、それだけで約 2億5000万円 が必要です」
少なくとも、5億円 超の賠償金になるのは確実なのだ。 さらに 人的被害の償いもしなくてはならない。
損害賠償に詳しい、甲本晃啓弁護士の話。
「巻き添えになった桑原さんは、本人にまったく過失がありませんし、1億円 の賠償が認められてもおかしくはない。 また 重傷者は治療費、慰謝料含めて 300万円、他は1人あたり 50万円 前後で、ざっと28人で賠償額は 1600万円 くらいになるはずです。 ただ 問題なのは、容疑者には姉と弟の遺族がいますが、もし相続放棄されたら、JR 東海も被害者も損害賠償請求する相手がいなくなってしまうこと。 泣き寝入りするしかなくなるのです」
死してなお、「焼身自殺老人」は禍根を残したのだ。
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※追加2_ 前代未聞の「自爆テロ」だ。 日本列島の大動脈ともいえる東海道新幹線を麻痺させ、巻き添えの死亡者も出した焼身自殺事件―当事者である林崎春生容疑者は、いかにして暴走老人と化したのか?
月 12万円 じゃ足りない
「私は火災のあった1号車の6列目に座っていました。 男は新横浜を出発して2~3分過ぎた頃、後方から1号車に入ってきて、通路を2度ほど行ったり来たりした後、姿が見えなくなった。 1号車は自由席なのになぜ座らないんだろうとちょっと不思議に思いました。
再び客室に戻ってきたときには白いポリタンクを右手に持っていました。 キャップはすでに外れていて、ピンク色の液体が漏れていた。 私はとっさに『ガソリンだ』と思い、急いで席を立ちました」
6月30日 午前11時30分頃、神奈川県小田原市を走行中の東海道新幹線のぞみ225号に乗り合わせていた50代の男性会社員は、恐怖の瞬間をこう振り返った。 火災によって焼け焦げた上着を手にしており、煙の臭いが周辺に漂う。
走行中の新幹線で焼身自殺を図るという前代未聞の事件で、横浜市青葉区の整体師、桑原佳子さんが煙を吸い込んで死亡。 他に乗客26人が救急搬送された。
名古屋方面へ向かう高速鉄道を一瞬にして阿鼻叫喚の地獄に突き落とした男は、林崎春生容疑者 (71歳)。 東京都杉並区西荻北にある築45年以上の木造アパートに暮らす独身の男だった。 部屋に風呂はなく、トイレは共同の物件だ。 近隣に暮らす50代女性が語る。
「いつもハンチングのような帽子をかぶっていて、手ぶらでしたね。 一度 夜中に電話で怒鳴っている声を聞いたことがあります。身内と揉めているようで、1時間くらい怒鳴っていた。 また数ヵ月前、酔って帰ってきて鍵を失くしたのでしょうか、窓ガラスを割って自室に入ったこともありました」
家主の話では、林崎容疑者は15年前に入居して以来、一度も家賃を滞納したことはなかったが、1年ほど前に「生活が苦しいので、(月 4万円の) 家賃を安くしてほしい」と電話してきたという。 家主は相談に応じ、1000円 程度家賃を下げた。
40年来の付き合いがあるという女性によると、男は「岩手県出身で、出会った当時は流しの歌手をしていた」という。
「私は西荻窪で割烹の店をやっていたんだけれど、いつも一仕事を終えた夜の12時頃にやってきて、静かに1~2杯飲んで帰っていきました。 あのころの稼ぎは4曲歌って1000円 くらいだったかしら。 十八番はサブちゃんで、『兄弟仁義』をよく歌ってたわね」
その後 流しの常連客だった鉄工所の社長に誘われて勤め始めたが、20年ほど前に その工場も倒産。 幼稚園のバスの運転手を務めた後、ごみ収集会社に就職した。 だが1年ほど前に、「もう歳だし、走って缶を集めるのはつらい」と仕事を辞め、年金暮らしを始めていた。
「今年に入ってから、おカネのことでぼやくことが多くなりました。 年金は月 12万円 位もらっているということでしたが、介護保険料や家賃、光熱費を払うと手元にほとんど残らないので生活できないってね。『ロープを用意して年金事務所で首を吊ってやる』と話したこともありました。『35年も払ってきたのにこれだけしかくれない』と怒っていた」(同・知人女性)
年金額の少なさを役所に訴えたり、区会議員の事務所に相談の電話をかけたりもしていたようだ。
真面目に働いてきたのに
「競輪、競艇、パチンコなんかはやっていたけど、派手なおカネの使い方はしない人でした。 贅沢といえば、たまに昼から回転寿司屋で飲むくらい。 働いていた頃は、岩手の親戚に仕送りもしていたみたいです。『全部で 1500万円は送った』といっていましたよ」(同・知人女性)
一時期は地元の草野球チームに所属したり、友人と釣りに出かけたりするなど、それなりの人付き合いもあった。 この知人女性の夫が語る。
「うちの店の常連さんと一緒に野球チームを作ったんです。 彼はセカンドでね、なかなかうまかった。 おとなしい人だったけれど、流しをやっていると、ショバ代のことなんかでヤクザと衝突することもあったようです。ギターでヤクザを殴ったことがあるともいっていました。 理屈に合わないとなると、とことん自分を通す人だったからね」
若い頃には歌手になるという夢も見たが、それなりに真面目に働いて、年金の保険料も納めてきた。 それなのに月額 12万円 では、思ったような暮らしができず、いまさら働き口もない―林崎容疑者はカネのやりくりに悩み、人付き合いも減っていった。 カネに対する複雑な思いは、死の直前まで彼の脳裏から離れなかったようだ。
「容疑者はガソリンを浴びる直前、女性の乗客に『拾ったからあげる』と 1000円 札数枚を渡そうとしたようです」(神奈川県警の捜査関係者)
男がどのような思いで、お札を女性に押し付けたのかはわからないが、そのカネは彼にとってなけなしの数千円だったことだろう。しかし その後、男が引き起こした騒動は、多くの人々に桁違いの損害を与えることとなった。
フラクタル法律事務所の佐藤祐介弁護士は、「鉄道でこのような事故が起きた場合、遺族に鉄道会社が受けた損害額が賠償金として請求されることになる」と語る。
「損害額は、切符の払い戻しや振り替え輸送にかかった費用、破損した車両などの修理代、事故対応の人件費などを合計したものになります」
損害額は10億円以上
6月30日に運休になった新幹線は全部で43本。 火災が発生した225号には約 1000人が乗っていたので、単純計算すれば 4万3000人の人たちが、運休扱いで運賃の払い戻しを受けることになる。 1人 1万3000円 の払い戻しを受けるとすると、合計で 5億5900万円 の損害だ。
また 上下線合計で106本の電車に遅れが生じた。 JR 東海の約款では、遅延時間が2時間を超えた場合のみ特急券が払い戻されることになっている (乗車券の払い戻しはなし)。 半分の53本が払い戻し対象になったと仮定しよう。 計 5万3000人の乗客に対して、特急料金 (約 5500円) をかけると、2億9150万円 になる。 他に大きな額になると予想されるのが、車両の破損被害額。 鉄道ジャーナリストの梅原淳氏が解説する。
「JR 東海の投資計画書によると、N700A (火災があったものと同じ車両) 288両に対して約 880億円 の投資がなされており、単純計算で1両が約 3億円 です」
加えて 事故対応に当たった社員の残業代、特別な警備に当たった人の人件費などもかかってくることを考えると、損害額は 10億円 を下らない。
問題は、これを賠償金として請求できるかという点だ。 交通事故の賠償問題に詳しい好川久治弁護士が語る。
「理屈のうえでは、鉄道会社は本人の遺族に賠償請求できます。 ただし 遺族が相続放棄してしまえば泣き寝入りになる」
今回は林崎容疑者が相続するに足る遺産を残していた可能性は低いので、現実的に賠償は難しいだろう。 JR としては丸損ということになる。 しかし 巻き添えとなった桑原さんへの補償はどうなるのか。 これも泣き寝入りでは、あまりにむごい。
「国の犯罪被害給付制度が適用される可能性があります。 これは通り魔殺人等の故意の犯罪行為により、死亡した人の遺族や、重傷病を負った被害者に対して給付されるものです」(好川氏)
死亡の場合は、遺族の生計の立て方によって額は異なるが、320万円~約 3000万円 の遺族給付金が支払われる。
無論、何千万円というカネを積まれたところで、大切な人を失った悲しみが癒えるはずもない―爪に火をともす暮らしより、ガソリンに火をつけることを選んだ暴走老人の罪は計り知れない。
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※追加3_ 先月 走行中の新幹線車両内でガソリンをかぶり焼身自殺した男性 (71) は、2カ月ごとに支給される年金額が 24万円 だったといいます。 年間 144万円 になるわけですが、この老人は「35年働いて月 12万円 では少ない」と不満を漏らし、「家賃も住民税も払えない」とこぼしていたとされます。「住民税が払えない」というのは、おそらく前年まで働いていた清掃会社での課税分と思われますが、年金加入35年間の単身高齢者の年金受給額が月額 12万円 というのは本当に少ないのでしょうか。
というのは、老齢厚生年金・老齢基礎年金の月額 12万円 から逆算すると、40年間払い込みのケースで月額生涯平均給与は 30万円 レベルだったことが想定されます。 この男性は35年間という若干短い期間であり、生涯平均給与額は 35万円 前後であったと推定できます。 ちなみに 生涯平均給与額は、一般的に38歳時点の水準といわれます。
給与が 35万円 だった場合、現時点での計算ですが厚生年金保険料は 17.474% (2015年度) なので、会社と本人分の合計で月額 6万1159円 の年金保険料になります (本人負担分は半額の 3万579円)。 月額 6万1159円 を35年間納めた場合の合計は、年間 73万3908円×35年=約 2569万円 になります。
男性は71歳なので 昭和19年生まれとすれば、60歳時点から老齢厚生年金の報酬比例部分が全額支給され、62歳からは定額部分 (基礎年金額と同額) も受給していたはずなので、60~70歳までの10年間ですでに 1350万円 前後の年金を受給していたことになります。 ちなみに 現在、厚生年金は65歳からの受給開始に移行中です。
日本人男性の平均寿命 (80.21歳) まであと9年生きたとすると、さらに 1296万円 受給できるので合計では 2646万円 になり、本人と会社が折半で支払った合計保険料 (2569万円) は元が取れます (金利計算は除外)。 なお 平均寿命は実際には同年代の半分以上がまだ生き残っており、男性の場合90歳でも 21% の人が生き残っています (女性は 47% が生存)。
今回焼身自殺した男性は平均寿命以上に長生きしていたら、払い込んだ年金保険料以上を受給でき、かなりトクをすることになったでしょう。 また 仮に同年齢の専業主婦 (無職) の妻がいた場合、35年加入で妻の老齢基礎年金額も 67万円 ほど加算されるため、70歳までで約 2000万円、80歳までには4110万円 の合計受給額となり、支払った保険料の総額 (2569万円) をはるかに上回っていたことがうかがえるのです。
このように、年金は単身よりも夫婦世帯で受給するほうが、何かとトクをするのです。 妻が会社員だった場合には、妻も老齢厚生年金を受給でき、妻が年下だと65歳になるまで夫には年額39万円の加給年金も支給されます。 ちなみに、これは50歳以上の人に届く年金定期便の「65歳から支給される年金見込み額」に記載されていない金額です。
このように考えてくると、この男性の場合、他の年金受給高齢者世帯と比べても特段に年金が少ないとはいえないのではないでしょうか。
単身の自営業者だった場合には、国民年金だけにしか加入できず、月額 1万5590円(15年度)を40年間払い込んで、65歳からの受給額はたったの月額 6万5000円 だけなのです。 妻が専業主婦の場合でも国民年金は支払い義務があり、その場合 65歳以降は夫婦での合計受給額は 13万円 です。 ただし 国民年金も65歳以降の10年間受給 (1人 780万円) しただけで、40年間の支払い総額 (1人約 748万円) の元は取れます。
年金より生活保護受給のほうが高額のケースも
ところで、この焼身自殺した男性が住んでいた東京都杉並区の月額生活保護額は約 14万円 (生活扶助と住宅扶助) なので、この男性の年金額より多くなってしまいます。 生活保護受給世帯になれば、税金も健康保険料も介護保険料も免除され、医療費、介護費、都営地下鉄、都営バスも無料になります。
実は65歳以上高齢者世帯の4割が、すでにこの男性同様に生活保護以下の「老後破産」状態にあるといわれます。 また 実際に貧窮度が高いために生活保護を受給している世帯の約半数は、すでに高齢者世帯になっている現実もあります (162万世帯中 76万世帯が65歳以上の高齢者世帯)。 生活保護水準以下の老後破産状態であっても、なまじ貯蓄があったり持ち家などの資産があるため生活保護を受けられずに暮らす65歳以上の高齢者世帯は多いのが現状です。
厚生労働省のデータによると、平均年金受給額は65歳以上の高齢者世帯で約 19万円 です。 総務省の家計調査による無職の老後夫婦の最低生活費は約 27万円(年 324万円)なので、平均年金受給額との差額は月 8万円 (年 96万円) の不足になります。 少し余裕のある生活には、夫婦で合計約 38万円 (年 456万円) が必要といわれており、月 19万円 (年 228万円) の不足となります。 65歳以降も10~20年と長生きすることを考えると、貯金が 3000万円 あっても安心できない状況であることがわかります。
65歳時点で 3000万円 の貯蓄があっても、長生きすると貯蓄が尽きた時点で生活保護水準以下の「老後貧乏」「下流老人」「老後破綻」の状態になるのは確実なのです。 日本人の60歳時点における貯蓄 (中央値) は約 1400万円 なので、60歳以降働かなければ、65歳までは無年金のため、老後世帯の最低生活費 27万円 で暮らしたとしても5年間で 1620万円 かかります。 この場合、65歳から老後破綻状態となってしまいます。
「人生の3大無駄遣い」をしない
年金は今後約30年経過した段階で、公的年金支給額の伸びを賃金や物価の上昇分より抑えるマクロ経済スライドにより、厚生年金が2割、国民年金が3割減らされる見通しです。また 受給できる年齢も65歳からではなく、67~70歳に繰り延べされることも予想されます。
現在は 130兆円 ある過去の積立金も、これまでのように毎年 4兆円 ベースで取り崩されていけば、30年後にはほぼ枯渇します。 年金財政は確実に先細りしていくわけです。 なにしろ30年以降は現役世代 (15~64歳) 1.3人で65歳以上の高齢者1人を支える構造になりますから、今以上に税金投入を増やしても年金財政は綱渡り状態になるのです。
年金が破綻した場合、65歳時点で貯蓄が 5000万円 以上なければ、安心して老後生活を迎えることができないという事態になりかねないのです。
老後資金を貯めるには、まず「人生の3大無駄遣い」をやめることが貯蓄を成功させる要諦になります。 3大無駄遣いとは、「住宅ローンによるマイホーム取得」「生命保険への加入」「マイカーの保有」の3つです。 これらからすみやかに脱却し、貯蓄に励み、資金を複利・分散・長期に殖やしていく手立てが欠かせないわけです。
住宅ローンによるマイホーム取得は、ローン完済後に 3500万円 以上の損失を生みます。生命保険への加入は、1世帯当たり 1200~1500万円 の損失を生みます。 そしてマイカー保有は、30年間で 3000万円 の損失を生みます。
住宅は価値が大幅に毀損し、民間の生命保険は代替手段 (健保による傷病手当金制度や高額療養費制度、年金による障害年金、遺族年金制度、企業の死亡退職金、格安の共済など) が充実しているため不要です。 また、マイカーはコストに含まれる税金が高額のため、できるだけ保有しないことが肝心です。
詳細は拙著『40代から知っておきたいお金の分かれ道』(フォレスト出版) をご参照いただければと思いますが、この「3大無駄遣い」をやめれば 5000万円 ぐらいの資金は簡単につくり出せ、それをさらに大きく殖やしていくことも可能になるのです。
以上