樋口恵子著『老いの福袋 ――あっぱれ! ころばぬ先の知恵88』(2021年4月25日中央公論新社発行)を読んだ。
宣伝文句は以下。
老年よ、大志とサイフを抱け! 88歳のヒグチさんの日常は初めてづくしの大冒険。トイレ閉じ込め事件から介護、終活問題まで、人生100年時代を照らす「知恵とユーモア」がつまったエッセイ
著者の樋口恵子さんは、評論家としてTVにも良く出演していて、50代にはNPO法人「高齢社会をよくする女性の会」を結成し、介護保険実現に大いに貢献した。本書は平均寿命の88歳になった著者が「老い」の先達として「ころばぬ先の杖」となる88の知恵を紹介したエッセー。
「まえがき」
高齢化率(全人口に対する65歳以上の割合)は、2020年9月、日本が世界一で28.7%、2位のイタリアが23.3%。
(現在、最も多く死亡する年齢は、男性88歳、女性92歳とか。(p124))
(団塊の世代がすべて75歳以上になる2025年には、認知症の人が700万人に達するだろう(p182))
(65歳以上は女6に対して男4,85歳以上で女2に男1,100歳で9対1。(p135)(100歳になってモテモテになろう!)
「ヨタヘロ期」がやってきた!
フレイル:加齢とともに心身の活力が低下し、健康や生活に障害を起こしやすくなった状態
サルコペニア:高齢になるに伴い筋肉量が減少していく現象
樋口さんは、両者合わせて「ヨタヘロ期」と呼ぶ。
第1章 ローバは一日にしてならず
「朝起きるだけでも一仕事」、「ひといい300メートル、座れる場所を求む」、「一人だと食事がいい加減になり、栄養バランスを崩しやすい」、「予定を入れて「老(お)っ苦う」の連鎖を断ち切る」
第2章 老いの暮らし、どうしたものか
第3章 「金持ち」より「人持ち」でハッピーに
第4章 「老いの大冒険」を乗りきろう
第5章 あなたも私も介護する人される人
第6章 力を合わせて「五つ星の高齢社会」を
あとがきにかえて
略
本書は書き下ろし
私の評価としては、★★★★☆(四つ星:お勧め、 最大は五つ星)
80歳間近の私には、おっしゃることはいちいちごもっとも。日々体の弱りを実感する日々だし、夫婦二人暮らしでも食事はどんどん簡単になっていくし、おっくうで何でもパスしがちだし、……。しかし、50~70代の方々は本当に老いがどんななものか、読んでみることをお勧めする。親の老いを外から見ていたのとも、やはり違うのだ。
私が樋口さんと異なる意見なのは、「子供に多くの荷物を残さない」(p62)ことと、「あなたの世話にならないようにしたいと言う」(p73)こと、「財産を早めに渡す」(p76)ことだ。私は、子どもの負担を少しでも軽くしたいし、金が本当に要る時に渡したいと考えるからだ。
樋口さんといえばネーミングの名手。本書でも、「老いるショック」「ヨタヘロ期」「老年よ、財布を抱け」「『じじばば食堂』がほしい」「すべての道はローバへ通ず」など衰えない見事な腕前を示している。ちょっとやり過ぎではあるが。
樋口さんは「自分はわきまえつつ蛮勇をふるう女」だという。公的機関などと交渉するためには、「これは素人考えですが」などと「わきまえ」の枕詞が必要だと言う。実績を上げてきたひとの言葉だが、これからの女性にも必要なのだろうか?
樋口恵子(ひぐち・けいこ)
1932年、東京都生まれ。東京大学文学部卒業。時事通信社、学習研究社、キヤノン株式会社を経て、評論活動に入る。1986年から東京家政大学名誉教授、現在名誉教授。2014年から同大学女性未来研究所所長。日本社会事業大学名誉博士。NPO法人「高齢社会をよくする女性の会」理事長。
読売新聞の「人生案内」のほか、雑誌連載も担当。内閣府「高齢社会フォーラム・イン東京」などの講演やコーディネートにもかかわる。
著書に『人生100年時代の船出』『その介護離職、お待ちなさい』『老~い、どん! あななにも「ヨタヘロ期」がやってくる』などがある。
医者の一人娘と同居している。(p33)
お勉強の時間
親子が同居していれば、私が亡くなった際、細かい条件はありますが、娘は相続税が8割減額さえます。(p60)
和気藹々:わきあいあい(p209)