hiyamizu's blog

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川端裕人・海部陽介『我々はなぜ我々だけなのか』を読む

2019年04月22日 | 読書2

 

川端裕人著、海部陽介監修『我々はなぜ我々だけなのか アジアから消えた多様な「人類」たち ブルーバックスB-2037、2017年12月20日講談社発行』を読んだ。

 

裏表紙にはこうある。

最新の研究成果が、これまでの人類観をくつがえした!

教科書に載っているジャワ原人や北京原人だけではない。

我々ホモ・サピエンスの出現前、アジアには実に多様な「人類」がいたことがわかってきた。そして「彼ら」は、我々の祖先と共存する「隣人」だったかもしれない!
ならば、なぜ今、我々は我々だけなのだろうか?
アジア人類進化学の第一人者に導かれ、「我々とは何か」を問いつづけた著者が最後に出会った衝撃の仮説とは?
知的興奮に満ちた、我々のための新しい人類学!

 

科学ジャーナリストである川端氏が、国立科学博物館の人類進化学者・海部氏に監修者というより共著者として密着し、研究室と発掘現場を訪れ、アジアの原人の歴史を探り、最新の研究成果を交えて語る。
さなざまな原人、旧人が入り乱れるなかで、なぜ現在の我々、ホモ・サピエンスだけが生き残ったのか、その疑問に答えようとす本だ。残念ながらまだ最終的答えは得られていないのだが、アジアでも北京原人、ジャワ原人以外にもフローレス原人、澎湖人などの原人が存在したという新真実が紹介される。

人類は、初期の猿人、猿人、原人、旧人、新人と5段階を通って700万年ほどで進化してきた。

 

ラミダス猿人:440万年前の初期の猿人。アフリカの森林で生活し、木に登り、地上で二足歩行した。
脳は類人猿と同じくらいの300cc、身長120センチ。

非頑丈型猿人:代表格がアウストラロピテクス・アファレンシス「ルーシー」。110センチ、脳は400cc。

頑丈型猿人:非頑丈型猿人から270万年ほど前に出現。頭骨は異形。

最初期の原人、ホモ・ハビリス:200万年前頃。猿人より脳が大きく、歯や顎が縮小。石器に依存。

ホモ・エレクトス:アフリカを出た。脳サイズは現代人の2/3。

ジャワ原人:学名はホモ・エレクトス(旧名ピテカントロプス・エレクトス)。120万年位前にはジャワ島にいて、5万年前まで生き延びで、この間、進化していた。脳は1200cc(現代人は1400cc)。身長160~170センチ。
フローレス原人:ホモ・フロレシエンシス。身長1m。通称ホビット(小さな人類)。2003年発見。閉ざされた島の環境では、大型動物が矮小化し、小型動物が大型化する(島しよ効果)。

澎湖人:(ほうこ)2015年発表の台湾の原人

旧人:原人より脳が大型化。100万~60万年前アフリカで原人から進化し、60万年前欧州、30万年前アジアに出現(多地域進化説もある)。例はネアンデルタール人、シベリア南部アルタイのデニソワ人。

新人:現生人類。ホモ・サピエンス。4万7千年前までには(アフリカから)オーストラリア大陸に来ていた。
ホモ・サピエンスの均質さは、長い時間をかけて身体を大幅に変えるのでなく、洗練された石器を使い、海洋には舟を、寒冷地には毛皮服をといったふうに、時と場合によって適した技術を創造したためだ。


私の評価としては、★★★★☆(四つ星:お勧め)(最大は五つ星)

原人といえば、北京原人、ジャワ原人しか知らない私に、最新の原人情報を教えてくれる。原人にもいろいろな種類が居たこと、同じジャワ原人でも進化の跡がみられることなどが分かる。

頭部の復元写真や、各種測定データが分かりやすく表示されていて、推測が横行しがちな本分野での論旨に説得力がある

 

現在では原人や旧人がまったく消え去って、ホモ・サピエンスだけだ生き残っている理由は、まだ不明で研究中だ。ごく一部で混血していてネアンデルタールの遺伝子が現代人にも残っていることがあるようだが。

 

 

 

川端裕人(かわばた・ひろと)

1964年明石市生まれ、千葉市育ち。東京大学教養学部卒。文筆家。

日本テレビ報道局で科学報道に従事し、」1997年よりフリーランス。

小説『夏のロケット』『銀河ワールドカップ』など。その他、ノンフィクション・科学書多数。

 

海部陽介(かいふ・ようすけ)

1969年東京都生まれ。東京大学大学院理学系研究科博士課程中退。理学博士。人類進化学者。

国立科学博物館人類研究部人類史研究グループ長。「3万年前の航海 徹底再現プロジェクト」代表。

著書『日本人はどこから来たか?』など

 

目次

プロローグ 「アジアの原人」を発掘する

第1章 人類進化を俯瞰する

第2章 ジャワ原人をめぐる冒険

第3章 ジャワ原人を科学する現場

第4章 フローレス原人の衝撃

第5章 ソア盆地での大発見

第6章 台湾の海底から

終章 我々はなぜ我々だけなのか

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