hiyamizu's blog

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『献体-遺体を捧げる現場で何が行われているのか-』を読む

2011年10月15日 | 読書2
坂井建雄著『献体-遺体を捧げる現場で何が行われているのか-』2011年7月技術評論社発行、を読んだ。

医療従事者の教育のために,解剖体として遺体を捧げる「献体」。この献体を希望する人が増加している。
この本は、献体をするにはどうするのか、遺体はどう扱われ,どのような状態で戻ってくるかなど、献体に関する疑問に答え、献体したい人に具体的手順を示す実際的な本だ。さらに、世界の献体事情、日本と世界の解剖の歴史が教科書風に語られる。献体をまともに取り上げた初めての本だそうだ。



献体を希望する人は、住所地に近い大学の医学部、歯学部の解剖教室に連絡する。献体で金銭的メリットや病院での特典がないこと、家族の同意が必要なことなどが説明され、申込書が送られる。

献体者が亡くなり登録大学に連絡する。役所に死亡届を提出し火葬(埋葬)許可証を受取る。遺体の引取りは、病院で、自宅で一晩過ごしてから、告別式後など、遺族の希望に合わせる。ただし、遺体を大学に引き取った後は遺体に面会することはできない。解剖後、遺骨として返還するのは2~3年後になる。このあたりの具体的手順、注意事項はかなり細かく記述されている。

大学での遺体の処理は、まず腐敗を抑えるため血管に10%ホルマリン液を数リットル注入する。1~2日後にホルマリンが浸透しにくい脳を摘出してホルマリン液に浸す。その後、遺体をアルコール溶液に数ヶ月浸し、有害なホルマリンを減らしてから、ビニール製の袋に密閉し専用ロッカーに保管して解剖を待つ。
私には興味津々な解剖の手順などの記述もあるが、ここでは省略。解剖実習は3ヶ月かかる。

昔は献体が足りなかったが、最近は献体希望者も増えてきており、大学によっては登録申込みをお断りしているところもあるという。2009年度中に献体実行数は3402人。



坂井建雄(さかい・たつお)
順天堂大学医学部教授(解剖学・生体構造科学)。1953年大阪府生まれ。1978年東京大学医学部医学科卒業。ハイデルベルク大学研究員,東京大学医学部解剖学助教授を経て,1990年から現職。
おもな研究・活動領域は,解剖学,腎臓と血管系の細胞生物学,献体と解剖学の普及,医学と解剖学の歴史。著書多数。



私の評価としては、★★★(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)

「お好みで」と評価したが、怖いもの見たさの人がいるかも知れない。確かに、解剖の具体的手順などの記述もあるのだが、著者には、興味をかきたてようとする気はまったくなく、淡々と語るだけだ。献体に関する取扱説明書と献体・解剖に関する教科書といった真面目一方な本だ。その方が私には面白かったのだが、一般的ではないだろう。

私は、以前、解剖標本を展示する「人体の不思議展」を見たことがあった。プラスティネーションという技術による標本で、人体の水分を取り除きプラスチックに置換えるもので、人体のスライス標本が展示されていて、センセーショナルなものだった。この本によれば、非合法に遺体を輸入しているなどとの疑惑があるようである。




目次
第一章 献体をすること
献体登録はどのように行うのか? /自分の意志を尊重してもらうには/

第二章 献体者を見送る側――遺族の立場
献体者がお亡くなりになると/会員の確認と代表者の決定/死亡届の提出/遺体の引き渡し,その後/

第三章 献体者を受け入れる側――大学側の実務
/遺体の保存処置/解剖実習における学生の指導/遺体の火葬/遺骨の返還

第四章 遺体の扱い――解剖実習と学生
/正常解剖とその他の解剖との違い/遺体の保存処置/ホルマリンの注入/

第五章 献体運動はどのように行われているのか

第六章 世界と日本の献体事情

第七章 日本における人体解剖と献体の歴史

第八章 世界における人体解剖の歴史



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