hiyamizu's blog

読書記録をメインに、散歩など退職者の日常生活記録、たまの旅行記など

村上春樹、安西水丸『日出る国の工場』を読む

2011年10月27日 | 読書2
村上春樹、安西水丸著『日出る国の工場』新潮文庫 む-5-7、1990年新潮社、発行を読んだ。

村上春樹が、お友達でイラストレーターの安西水丸と7つの工場を見学したレポートだ。
取材工場は、人体模型の工場、結婚式場、消しゴム工場、小岩井農場、コム・デ・ギャルソンの洋服工房、CD工場、かつら製造工場。
取材したのが1986年と工場自体はだいぶ古いのだが、工場の紹介というより、村上さんの変な妄想混じりの文章と、安西さんの脱力系イラストのゆる~い話が主体だ。

メタファー的人体標本 京都科学標本
学校の理科室でおなじみの骨格標本やどぎつい色の臓器の人体解剖模型などを作る日本で唯一の工場だ。浣腸練習用の浣腸施薬シュミュレーター25万円など誰が買うのだろうか。

工場としての結婚式場 松戸・玉姫殿
特定の新郎新婦になりきって相談カウンター担当者との会話を創作する。会話が進み、次々と段取り、値段が決まっていく。まさに流れ作業で工場のように。

消しゴム工場の秘密 ラビット
今は少数派になった合成ゴムの消しゴムのけっこう複雑な製造工程に取材チームはただうなずくだけ。
消しゴムの角を取る工程は5時間くらい機械の中で回す。硬いゴムは金網のなかで、柔らかいのは木の中で回す。
たぶん僕なんかはまわりが金網の方に放りこまれちゃうんじゃないかという気がする。5時間くらい回されて出てきたらすっかりカドがとれていて、『笑っていいとも』に出て「ワッ」なんてやってたりしてね。どうでもいいようなことですけど。


経済動物たちの午後 小岩井農場
牛は乳の量と脂肪の率から能力指数を算出され名札に付けて偏差値のように牛はこの値だけで評価される。擬牝台(ぎひんだい)というダッチワイフのようなものまでもある。牧場は工場で、牛は単純に製品として扱われている。

思想としての洋服をつくる人々 コム・デ・ギャルソン
コムデギャルソンは業界雑誌からはかなりな反撥をくらっている。
たしかに僕なんかから見ても、なんとなく生意気そうだし、つきあいも悪そうだし、自分のことしか考えていないように見えるから(僕の人間的特性と酷似している)・・・。


ハイテク・ウォーズ テクニクスCD工場


とことん明るい福音製産工場 アデランス
かつらというのは口コミがまったくない商品だ。品質が良くてもペリペリとはがして見せて他人に勧めてくれることは期待できない。
アデランスの本社地下には個室理容室がある。カツラをとって地毛を散髪し、その間にカツラのメンテをしてもらう。
日本の推定薄毛人口は約750万人、かつら使用者数は約50万人。
でも女の人の切った髪ってじっと見ていると何となく恐いですね。僕も昔、ある女の子に切ったばかりの長い髪をもらったことがあるけど・・・まあ、いいや、この話は。


この作品は1987年4月平凡社より刊行された。



私の評価としては、★★★(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)

めったに見ることもない工場をのんびり、ふむふむと見学する村上さん、安西さんと編集者の3人。典型的な工場の消しゴム工場やCD工場見学は“うなずきトリオ”になって面白みがないが、式次第を決めていく工程を工場のように進め結婚式場の章や、牛を経済動物として完全に割りきって扱う牧場の章が面白い。アデランスは特殊な商品で、なるほとと思うことが多く、自分の頭を忘れて笑ってしまった。



コメント
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