散歩から探検へ~個人・住民・市民

副題を「政治を動かすもの」から「個人・住民・市民」へと変更、地域住民/世界市民として複眼的思考で政治的事象を捉える。

カトリックとロシア正教との和解~無限の歴史的教訓

2016年02月13日 | 永井陽之助
報道によれば、ローマ・カトリック教会を率いる法王フランシスコと東方正教会の最大勢力、ロシア正教会の最高位キリル総主教は2012/2/12に、キューバの首都ハバナで会談に臨む。キリスト教会が1054年にカトリック教会と東方正教会に分裂して以降、ローマ法王とロシア正教会トップの会談は初めて。双方は歴史的な和解への一歩を踏み出す。これは、2014年に法王フランシスコと総主教バルソロメオス1世が統一へ向けての共同宣言に署名したことを受けている。


 
 ローマ法王フランシスコ(左)、ロシア正教会キリル総主教(右)=AP

一方、今回の事案の報道に関連して次のことを筆者は初めて知った。1964年にローマ法王パウロ6世と東方正教会のコンスタンティノープル総主教アテナゴラスが会談し、対立解消に向け前進したのが、その始まりとのことだ。

丁度1年前の本ブログで、「平和の代償」において永井陽之助が以下のことを記述していることを述べた。今を去ること50年前に、である。
カトリック教会が信仰の自由を認めたのは、1965/1/19バチカン公会議での宣言の承認によってである。これは非カトリック教徒が良心に基づいてそれぞれの信仰を持つ権利を認めたもので、その歴史的意義はカトリック教会だけのものではなく、少なくともキリスト教全体の統一にも関わるものだ。
 『カトリック教会、信仰の自由を承認1965年 150211』

続いて氏は次の様に云う。
「このニュースは日本で注目を引かなかったが、私には、キリスト教の持つ不寛容性、妥協しない西欧的イデオロギーの強靱さを思い知らされた。現代という“宗教戦争”の時代に生きる、我々にそれは無限の歴史的教訓を与えている。」
氏が存命であれば、今回も同じことを述べるに違いない。

ここから永井は西欧における「政経分離」と「政教分離」の成功が、平和共存を導き出したことを指摘し、宗教的情念が噴出するのを抑止したのは、「平和」を「正義」より上位に位置づける一般民衆の価値観によるとした。
この永井の洞察は今日のイスラム教の政治的台頭と、それにともなう世界的混沌を予測したかの様に思える。長期的な見通しを持ち、しかし、一般民衆の平和への思いをも、その見通し中に織り込んだ発想を示している。
 『西欧の平和は「政教分離」と「政経分離」で~「平和の代償」永井陽之助150212』

今回のトップ会談では、当然、中東過激派組織・イスラム国の勢力拡大を意識して、中東、アフリカ等で、迫害を受けがちになるキリスト教徒の保護が先ずの議論になるであろう。東西キリスト教会の関係修復が進めば、バチカンが影響力を持つ欧米と、正教の信者が多いロシアとの対立緩和などの基盤が固められるはずだ。