散歩から探検へ~個人・住民・市民

副題を「政治を動かすもの」から「個人・住民・市民」へと変更、地域住民/世界市民として複眼的思考で政治的事象を捉える。

政権中枢も実体経済をようやく認識か~世間に対する数学的判断

2014年09月05日 | 経済
消費増税後の実質GDP成長率が大きく落ち込んだことをトリガーに、実体経済がグローバル化の影響をこれまで受け、大きく揺らいできたことを、マスメディア、各機関がようやく認識し、それが政権中枢へも及んできたようだ。
以下、その間の事情を報道で辿ってみよう。
 『「日本経済を取り巻く国際環境」~齊藤誠教授のエッセイより140831』

8月半ば、政権幹部から景気に対する慎重な見方が相次いだ。以下は報道のまとめ。経済関係に関する政権幹部とは、
甘利経財相「デフレ脱却宣言は時期尚早」、
麻生財務相「企業はそう簡単に借り入れを増やせる状況にはない」、
に他なら合いない。当然、彼らは内閣改造でも依然、中枢にいる。

「消費増税の影響が予想より大きく、政府が慎重姿勢に転じる可能性」とは、マスメディアの一般論だ。しかし、政府中枢の考え方は、メディアに乗って、これを消費増税の影響と誘導するかの様にも見える。

甘利発言は、第2四半期期の実質GDP成長率の前年同期比較、-1.7%(年率換算、-6.8%)を受けたもので、この落ち込みは消費増税の駆け込み需要に対する反動が大きいのは確かだ。第1四半期期は+1.5%で次期の数字を見る必要がある。しかし、今後も順調に回復との見方まで踏み込めずにいる。

麻生発言は、最近の金利急低下を評して「国債大量発行、長期金利上昇」とはいかないのは、企業の慎重姿勢と指摘する。中小企業の経営者は、多少景気が回復との感覚があっても、容易に融資を増やす状況ではないと考えるだろう。また、大企業も同じで300兆円ほどの内部留保を抱え、目立った投資先が国内になく、資金を余らせている状況が続く。

今年の春闘では賃上げが実施されたが、消費増税、物価上昇により、実質的な賃金は下落している。先行き不透明で、企業がこれ以上の賃上げを実施する可能性は低く、消費の回復力は弱いままだろう。

以上は、マスメディアが政権中枢の発言を軌道修正への“準備発言”と受け取っていることを示している。しかし、以下に示される消費増税以外の本質的な影響について、政権として気が付いてきた可能性も示している。

それは既に記事で指摘した上記の実質GDP成長率の低下は、新興国のグルーバル化による日本の経済的基礎体力への影響を含んでいることだ。
 『アベノミクス、インフレ・円安政策の破綻140807』

8月末、ようやく「個人消費指標の軒並み大幅減」、「消費増税の反動減ではない」とのマスメディアの見方が出された。以下は報道のまとめ。
 個人消費減速が加速…背景:賃上げを打ち消す実質賃金の低下
 ・要因…消費増税、物価上昇、非正規社員増加
 電機工業会:白物家電の国内出荷額(7月):前年同月比15.9%減
 (3カ月連続減、15%超は約3年ぶり)
 チェーンストア協会:全国スーパー売上高(7月):前年同月比2.1%減
 (4カ月連続減)
 百貨店協会:全国百貨店売上高(7月):前年同月比2.5%減
 (4カ月連続減)

この落ち込みを消費増税の駆込み需要に対する単なる反動として捉える本質を見誤る可能性がある。過去2回の消費税の増税では、今回ほどの反動減は見られなかった。今回は消費者の不安心理が増大した可能性がある。

安倍政権は企業に対して賃上げを求め、大企業を中心に一部の企業はこれに応じた。しかし、物価の影響を考慮した実質賃金は下がる一方である。これは正社員が減少、非正規社員が増加、との構造的要因も大きく影響している。

企業の賃金原資は限られているので、正社員の既得権益を守ろうとすれば、非正規社員を増やす以外に方法はない。非正規社員の給与は正社員より著しく低いので、この動きが続く限り、全体の賃金は増加しない。

マスメディアが上記の認識に到達したのは一歩前進!しかし、消費増税前後の景気指標の市場予想と実績とを比べると、80%の指標は予想を下回った。これは予測した機関の実体経済の把握が甘かったことを示すのだ。銀行、金融機関だろうが、政府筋からのデータ等をもとに作成したはずだ。従って、自ずと彼らの権益に縛られた認識の限界の示すことになる。