Meister von Grünfelder

日々の出来事を綴ります。たまにまともなことも書くかも知れません。

尊厳死とか

2005-04-01 09:43:34 | Gesellschaft
 テレサ・シャイボさんが、亡くなったそう。

 7年前から、尊厳死として栄養チューブを取り外すかどうか、外せという夫側と付けておけという両親側とで対立していた。
 裁判を繰り返し、今年になって夫側の主張が裁判で通ってチューブが外された。
 と思ったら、州で特別法案が出来たり、それが通らなかったので緊急でブッシュ大統領が動いて特別法案を作成して裁判をやり直させたり…と慌ただしかったが、結局司法の判断は変わらず、チューブが再び付けられることはなかった。

 個人的には、今回の結果は正しいものだったと思う。
 夫の主張は充分理解できるものだ。一時、夫は妻を早く死亡させて保険金を云々、という噂が流れたようだが、そんなことを言っていても仕方ない。
 今回の問題点は、急に植物状態になったために本人の意思確認が無かったこと、また家族間でのコミュニケーションが取れなかったことだろう。夫と両親の関係はかなり悪かったようで、最期に立ち会いたいという両親の意向は、夫に拒絶されてしまったようだ。

 こういう問題、特に本人の意思が確認できない場合は、判断が非常に難しい。
 夫の主張は正しいと思うが、では両親の主張はといえば、それもまた正しいと思う。可能な限り生きていて欲しい、という親の気持ちは当然理解できるものだ。

 日本でも、尊厳死を主張することは可能である。
 現在の日本での問題点は第1に、尊厳死について法的整備が為されていないことだ。
 尊厳死を主張するためには、本人の意思が明確に確認できる必要が当然ある。その為の書面を日本尊厳死協会が用意しているが、法的拘束力はないため、医師がそれを拒絶すれば医療行為を止めることはできない。勿論、近年はインフォームドコンセントや患者の自己決定権の観点から、患者側の意思を拒絶する医師は少なくなっているが、命を(間接的にデあれ)絶つことに関わる問題となると必ずしも全て通るわけではない。
 また別の問題として、一度栄養チューブや人工呼吸器などを装着した場合、「取り外す」という形で尊厳死とすることは日本では社会的に同意が得られていない。今回のテレサさんのような場合、日本ではチューブを外すことはできない。可能なのだが、それに関して医療訴訟が起こった場合、恐らく医師は負けるだろう。そうでなくても、法的に逮捕される可能性が高い。
 つい先日も、広島県の病院で人工呼吸器の取り外しによる患者の死亡があった。その事件では医師会の定める指針に従っていなかったことも問題になった。しかし、そうでなくても尊厳死は法的には自然死や病死ではなく、異状死になってしまうので、警察による取り調べは入ることも多いだろう。

 医師であれ患者の家族であれ、患者が元気に長生きすることを願わない者はない。ただ、どんな状態でも長生きだけすれば良い、という訳でもないのだと思う。そういうときの1つの手段として、尊厳死を選択することは、現在までの流れからしても、矢張り患者の権利なのだろう。

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