仕事終わりにスターバックスに寄って、さて帰ろうかと。
正面入り口の椅子に座っている人が目に入った。
以前、重傷で緊急の麻酔を掛けた人だった。そのときは酷く重篤な状態であったが、今は点滴1つぶら下げていない。
お元気そうですね。
そう、思わず声を掛けた。
麻酔科医の顔なんて覚えていないだろう。怪訝な顔をしたその人に、少しそのときの話をしたら漸く、ああ、と合点がいったようだった。
今 . . . 本文を読む
月の綺麗な夜に、車に乗って出掛けた。
家族総出。
ちょっと離れた都市に行って、僕は国家資格の試験を受けることになっていた。
この試験に受かるかどうか。それは僕にとっては些細な問題だったが、しかし、この不況で父の仕事も減ってきているので、家は苦しかった。家計にとっては重要な問題だった訳だ。
僕の応援ということでもないのだろうけれど、だから両親と兄、僕の4人が揃って向かうことになった。
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翌朝は、こちらから誘おうとドアをノックしてもフィンはいなかった。
さすがに試験開始当日は、緊張する人が多い。彼女もきっとそうなのだろう。
そう思い、一人で朝食を摂った。
試験会場は、普通のホテルのホールくらいの場所だ。そこに長机と椅子が並び、受験者が部屋を埋め尽くす。
自分では早く来たつもりだったけれど、どうやら僕は遅い方だったようだ。席に着き、時間を待った。周りを見ると、落ち着かずそ . . . 本文を読む
試験期間も半ばとなると、会場には空席が目立つようになった。
見込みがないと判断したら、受験者は途中で試験をやめて帰るのが通例だ。途中でダメなものを最後まで受けたとしても、挽回できるような試験じゃない。
僕たちのフロアは、1割ほどが空席になっていた。暇な時間に、フィンが数えたらしい。
あのことがあってから、フィンと僕の関係は急速に近くなった。
彼女は4日目の夜から、僕の部屋で眠るようにな . . . 本文を読む
喉の渇きを覚えて起きると、朝だった。
フィンは未だ寝ていた。何だかんだ言っても、疲れたのだろう。
寝かせたままそっとしておいて、1週間振りに下に降りた。
エレベータを下りると、掲示板が出ていた。
発表の朝だというのに、辺りには誰もいない。少し早過ぎただろうか。
掲示板の名前を確認した。合格者はそんなに多くなかったので、僕の名前はすぐに見つかった。すぐ上に、フィンの名前もあった。
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海辺のコテージに遊びに行った。
その夜は風が強い割にはジメジメしていて蒸し暑く、嫌な空模様だった。緑がかった色の空気は、吸い込むのも辟易した。
海岸には昼間に着いた。
砂浜沿いに建てられたコテージは、まるでここは地中海だ、と言わんばかりに白塗りで、窓は円かった。
海は少し荒れていた。僕は隣にいた娘とコテージの一室に入り、乱暴なセックスをして夜まで眠った。
僕はガールフレンドの浮 . . . 本文を読む