池上永一さんの小説「テンペスト」の見どころの一つは、孫寧温が真鶴に変身することですが、表の世界と御内原をつなぐ隠された通路「暗シン御門」は実在しており、黄金御殿の1階部分として、黄金御殿の復元過程で復元される可能性があります。また、変身のための着替えをした部屋「げらゑの間」が実在したのか、そして復元されるのか、ファンとしては興味深いところです。
首里城は、遺構や古図・写真などを元に復元されているようですが、ネットで探してみると、沖縄県埋蔵文化財センターの研究者の方が、古図の中でも測量技術が駆使され最も正確だとされる横内図(明治時代の内務官僚の横内扶氏が保存していたもので現在は那覇市博物館に収蔵)をトレースした図面がありました。(原図はこちら)
その地図をお借りして、暗シン御門やげらゑの間を着色したのが、上の図です。
では、NHKのBS時代劇「テンペスト」では、これらの施設がどのように表現されていたのか、第9話のTVの画面から考察してみます。
げらゑの間で着替えた真鶴が御内原へ出てくるところ。ドアを閉めるような仕草をしていることから、暗シン御門からではなく、げらゑの間から直接外に出たところ。
左手にある朱色の建物は石段もあることから、これは首里城正殿の南端部分と思われます。
真鶴がこの小さな広場を進むと、真美那が駆け寄ってくる。左手は世添殿で図面に記されている。正面の建物は図面にはないが女官たちの仕える部屋であろう。右手には寄満の一部が見えている。
上記のことから、「げらゑの間」は、首里城正殿の南側に隣接する黄金御殿の1階部分にあって、北側(首里城側)の扉を開くと、世添殿や関連施設へ続く小広場に面している。上の図を参照。
次は、「暗シン御門」。
げらゑの間で着替えた孫寧温が暗い通路を右折して進み、その後を真美那が追いかけるシーンがある。
この通路が、黄金御殿の1階部分にあった暗シン御門。
よく見ると、この通路は真美奈の正面方向にも続いていることがわかる。すなわち、画面では右に折れるクランクになっている。照明はなく、足元の明り取りだけである。
こちらは、別の場面で、孫寧温が南之廊下(朱色が見えます)から暗シン御門に入ってきたところ。
上記のことから、「暗シン御門」は黄金御殿の1階部分にあって、首里城正殿の南之廊下から入ることができる。途中右に折れ曲がっており、左にはげらゑの間があり、右に進むと二階御殿の前に出る。上の図を参照。
国王は、普段は正殿や黄金御殿の二階部分を移動するだけで、1階部分を使用することはないため、このような通路が成立したのでしょう。この通路から国王のいる建物二階へは進めないように、セキュリティを確保するため、閉ざされた”暗い”連絡通路としての機能が許されたのでしょう。
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