いーなごや極楽日記

極楽(名古屋市名東区)に住みながら、当分悟りの開けそうにない一家の毎日を綴ります。
専門である病理学の啓蒙活動も。

具体論のない南山小学校説明会

2007年05月14日 | たまには意見表明
 来年から開校予定で、名古屋の保護者に大きな注目を受けている南山大学附属小学校(通称は南山小学校)の説明会に行って来ました。入場者が3,000人を越える大規模な説明会で、これでは具体的な話は出ないだろうなと予期した通り、インターネットのサイトを見ればわかるような理念の説明ばかり。退屈しました。

 名古屋市内に男女共学の私立小学校は今のところありません。だから需要はあるのだと考えることはできるでしょうが、公立の小学校で満足している人が多かったのも事実だと思います。名古屋市は初等教育の拡充に何十年も力を注いできましたから、私が子供の頃のようなマンモス小学校の問題は解消され、分散されたことによりほとんどの地域で歩いて通学できるようになっています。設備も見違えるほど充実し、体育館やプール、特殊教室が整備されています。

 私の小学生時代は1クラス42人から44人という編制が当たり前だったのが、極楽小学校の入学式に出てみれば1クラスがわずかに24人。これなら格段に教師の目が届くようになります。ちなみに南山小学校では1クラス30人を予定しています。

 これだけ手厚くなった公立小学校での教育と比較して、敢えて私立小学校を選ぶ理由があるのか?その問いに答えて欲しかったのですが、具体的にわかったのはキリスト教教育の施行と国語の重点化、1年生から英語があること、制服、制帽、指定の通学かばんと靴が義務付けられていることだけでした。ただ、1年生からの英語は週にわずか2時間ですし、国語も読み書きを奨励するというだけで詳しい説明はなし。授業にはたいして特徴がないなと判断しても仕方がないでしょう。

 すると、「全教員が宗教教育を担当する」と言われたように、宗教的涵養こそが特色ということになります。オーソドックスな感じの制服については、「遊びたい盛りなのに暑くて窮屈そうで気の毒だな」としか感じませんでした。決して製作担当の方を批判するわけではありません。格調を感じさせるデザインで、記念写真を撮るには映える制服でしょう。しかし小学生にとって制服そのものが、毎日必要なものか疑問です。

 繰り返し強調されたのが、キリスト教の精神を教育の根底に据えること、次が小学校から大学あるいは大学院までの南山学園による一貫教育を受けることにより、社会でリーダーシップを発揮することが大きな目標であること、そのため児童ばかりでなく家庭も南山小学校の理念を理解して教育方針に沿って、小学校と共に教育を分担して欲しい、ということです。

 南山小学校では毎日朝、昼、夕に簡単な礼拝があります。また毎週1回、もっと正式な礼拝があり、宗教の時間が持たれます。ロビーや各教室には小学校のシンボルである聖家族像が飾られ、宗教教育の総責任者として南山教会の神父が当たります。つまり、キリスト教精神にどっぷり浸かるわけであり、家庭にも協力が求められるのです。例えば、南山教会推薦の副読本を家庭で読み聞かせるようなことが期待されているのでしょうが、これは自信がありませんね。自分が信じていないキリスト教の価値観を息子に押し付けることはできませんから。

 キリスト教を否定するわけではありませんが、小学生のうちからキリスト教に触れることで他者への思い遣りが生まれる、という短絡的な説明には納得できないのですよ。反証としては、ジョージ・ブッシュがキリスト教徒であることを挙げれば十分でしょう。

 これから長い人生を競争の中で生きていかざるを得ない子供の親として、南山小学校への長い通学時間やナイーブなキリスト教的価値観、公立小学校より多いと予想される行事(多くが宗教関係でしょう)、窮屈な制服などは、未来を自分の力で切り拓くためのむしろ障害になる可能性があるとすら危惧しています。例えば、高学年になって主要科目の勉強量を増やそうとした時に、遅くまで小学校に縛り付けられるよりも、最適な学習塾に通った方が効果的でしょう。

 南山小学校では2時間ほどのアフタースクールが計画されており、この中には有料の補講授業もあって、「学習塾などに通わなくても済むようにする」と説明がありました。この説明自体、学習塾や予備校の存在を見下すような古臭い立場が感じられます。全人教育の場としては学校の存在は揺るがぬものの、個々の教科に対する理解の深さと指導力では、指導の専門家である学習塾や予備校の講師に一日の長があることは経験者なら自明だからです。東海学園の先生ならそんな馬鹿なことは口にしないでしょう。

 だいたい、2時間のアフタースクール枠内で、部活動や宗教行事とも時間を取り合い、長期休暇中は開講しないなんて、勉強を舐めているとしか言えません。南山小学校の関係者各位にはぜひ再考をお願いしたいです。

 南山小学校入試対応クラスなどを準備した学習塾などの消息筋によれば、南山学園は小学校を開校することで南山大学への進学者を安定して確保したい希望があるようです。これは頷ける話で、南山中学および高校を出た生徒が、学園の希望するほどは南山大学を志望しない傾向は昔から指摘されています。

 中部地区の私立大学勢力図はかなり書き換えられつつあり、例えば敢えて都心に回帰してビジネスの即戦力を養成する立場を打ち出した名古屋商科大学とか、積極的な投資と名古屋大学の協力により大規模な研究施設を整備した中部大学(中部工業大学から改称)など、「動かない者は負ける」という厳しい競争の時代に入っています。このような状況で、良家の子女だけを相手にしていたような伝統の南山大学も、変わらなければ埋没してしまうという危機感を抱くに至ったと思われます。

 私立学校を新設(戦前にも南山小学校があったので、正確には再設です)するとして、最も特色を出しやすいのは進学実績です。つまり進学校にしてしまうことです。しかし南山学園の各校のうち、最も高い進学実績を持つのは南山中学および高校の女子部です。もちろん南山小学校は私立小学校として学力の充実を図るとは説明されていますが、南山中学と高校の男子部が必ずしも進学校としての実績を示していないことを考えれば、小学校で頑張ったところで、これには受け皿がないと言うべきです。

 進学校として特色を出せないのなら、キリスト教教育を充実させようという手段は、南山学園としては至極当然の結論でしょう。小学生のうちに十分にキリスト教に馴染んでくれれば、南山学園への忠誠度も高くなり、学園が望む大学までのエスカレーター進学を志望する生徒を安定して確保できるでしょう。もし、この学習塾の読みが当たっているとしたら、学力の充実という方針は話半分で聞いておくしかありません。南山高校で外部の大学を志望する生徒が増えるのは、南山大学の安定した学生確保とは相反するからです。

 南山学園とは反対のモデルが東海学園です。男子生徒限定ですが、東海中学、高校の進学校としての評価は高く、それが仇となって同学園の悲願であった大学開設の計画が頓挫したという話を聞いています。内部進学者を確保できないような大学なんか作っても意味がない、という関係者やOBからの批判が強かったそうです。

 次の説明会は7月に予定されています。どうか今度はもう少し具体的な話が欲しいものですね。
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7 コメント

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Unknown (Unknown)
2007-06-23 16:43:49
はじめまして。paulと申します。
私は中・高・大学と南山に通いました。

>例えば、南山教会推薦の副読本を家庭で読み聞かせるようなことが期待されているのでしょうが

親としてこのような事をする必要は全くありませんので、ご安心下さい。(例えとして仰っているので見当はずれなコメントかもしれませんが・・)

個人的には毎日の祈りの時間、季節ごとのミサ、宗教教育の時間等があったものの
「どっぷりキリスト教の教えに浸かる」
という雰囲気は全くありませんでした。

7月の説明会に期待ですね。

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はじめまして (TIS)
2008-10-24 14:35:10
おもしろそうなブログだったので これからも 楽しみに しています。
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不快です (koko19)
2011-03-24 18:27:38
南山小学校についてのコメント、
あまりにも事実と異なり不快です。
実際は、英語は毎日ありますし、宗教の家庭内での義務はございません。
お寺のお子さんも通ってらっしゃるのに
よく知らずに知ったような内容にビックリ!もう一度とことんがモットーであるなら
お調べ下さいね!無論、実際入学させた親にしか事実は分かりませんが。
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Unknown (enagoya)
2011-03-25 09:15:10
koko19さんコメントありがとうございます。私は説明会で聞いたことから判断して当該記事を書いていますので、現状が違うと言われるなら説明会できちんと情報を提供しなかったためか、あるいはこの4年の間に教育方針が変わったのかであって、いずれにしても学園の責任だと思いますが。

小学校設立で最初の募集、最初の説明会なのですから、一般の父兄には他に情報源がないのです。その時点で説明会の内容から判断するしかないじゃありませんか。「実際入学させた親にしか事実は分からない」点があるのは仕方ないですが、基本的な教育方針まで入学させないとわからないのでは困ります。従って「具体論のない南山小学校説明会」なる主旨は賛同頂けるのではないでしょうか。

それから、「宗教の家庭内での義務」と私がどこに書いたのかご指摘願えませんか?歳のせいか忘れっぽくなっているのは確かですが、「家庭にも協力が求められる」と「家庭内での義務」ぐらいは区別して書いているつもりです。
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私立はだめです (k)
2012-09-05 21:21:01
私立の小学校なんて、やめておいたほうがいいと思います。以前名古屋市内の某私立小学校に勤務しておりました。公立にくらべ実は経費が少なく(国の補助がすくないため)学校の備品はみな古いものばかりでした。玄関など保護者の目に着くところはすごく綺麗でしたが・・・皆過保護の親バカばかりがきますので、子供のことで苦情が毎日ありあんな環境で先生が出来る人は教師ではありません。ベビーシッターのようなものですよ。結局南山も同じです。苦情などの業務内容が多く、研修のひとつもしませんでした。指導法などなにも学ばずどうやっていい指導者になれるのでしょうか???公立にいかれることをおすすめします。ただの成金が見栄のため行かせたいだけの学校にしか思えません。
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Unknown (enagoya)
2012-09-06 11:04:09
kさんありがとうございます。近年は公立の保護者も難しい人が増えているので、先生は授業以外の業務で忙殺されているようですね。私立も事情は変わりませんか。

本文にも書きましたが、学校があれもこれも、と業務を拡張するのには賛成できません。特に進学校でもない限り、早く児童を解放して、塾に通いたい子は通わせるのが正しい姿だと思います。業務を分担して、その目的と責任を明確にすることが効果を上げると考えます。

あと、塾なら厳しい競争があって、効果の上がらない塾はいつでも辞められますからね。先生同士の競争も学校の比ではないでしょう。競争があってこそ実践的な知識や技術の蓄積が起こりますので。

学校は公立であれ私立であれ、余程の体制が組めない限りは基本的な学習と生活面、支障がない程度のクラブ活動に専念して、それ以上を求める児童には自由に塾などを活用させるべきです。
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有難うございます。 (JO MOM)
2012-10-10 10:52:37
34期卒業生です。実は貴殿のブログで34期生の同窓会が催されたのを知りました。参加できませんでしたが、懐かしく、温かい気持ちになりました。 先生方のお写真UP有難うございました。 多くの方がご健在・ご健勝で何よりです。 渡米・移住30年の上、同級生とも連絡とらず不義理の為、おそらく私の氏名は名簿に連絡先不明者でリストされている思われ、同窓会の通知が頂けていない真にお恥ずかしい次第ですが、5年後、参加できれば本当に嬉しいです。 情報を公開して頂いて、本当に有難うございます。   さて、南山の説明会についてのご意見、ごもっともな事と存じます。私も自分が小中高と名古屋の恵まれた公立学校で教育を受けてきて、問題意識を持ったこともありませんでしたが、現在小6の子供に3歳から私学のいわゆる英才教育+キリスト教の少人数クラスの一貫教育を受けさせています。 極楽小学校は20人ほどのクラス編成という事で、それは1つの大きなメリットだと思います。 但し米国の公立校も各24人ほどのクラスで担任2人+5年生からは教科担任になるのが多いので、(米においては)私学のメリットは、同じ理念・或いは信仰のもと、つまり、価値観・道徳意識・常識が似通う生徒・教師・家族が一丸で子供の教育をACHIEVEさせる事で、強い仲間意識や絆をつくり、その培った精神を将来、社会でも役立てる事。。多民族国家と単一民族国家日本では全く常識や価値観の範囲が違いますし、学校の掲げる理念など抽象的な具体性に乏しいもののように思えるかもしれませんが、私が少なからず子供のころから持っていたある種の”自由な故の不安”が(日米共)私立学校の子供の社会では少ないと感じますし、生活指導の要綱などは例えば苛めに対する対策や教師の指導は公立と比べ物にならないほど徹底しています。(米では) 温室で安心で、価値観が同じなのは、甘えたいつまらない子に育つという考えももちろんあると思います。 厳しい規則や制服など、子供には窮屈だというのもわかります。 ただ、どのような校風・環境が合うのか、個々のお子さんにあった学校を選んであげるのも大切だと思います。
南山に2度目の説明会で質問をされては如何でしょうか。 あと、他にも、守山区志段見にインターナショナルスクール(共学私立)があったと記憶していますが。。  まあ、私学には通うと分かる良さがあるのも本当です。嬉しさと安心に満ちた子供の道徳教育は家族でもできますが、家庭内だけでは十分でない部分を安心して補ってくれる小学校の環境は教師の質で決まってきます。。公立では教師の指導を学校が徹底できているでしょうか。(私立は一応やっているはずです。)余談が長くなりすみませんでした。 悪い癖です。  また、ブログを拝見させていただきたいと思います。 有難うございました。  
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