真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「美人OLの性欲処理 痴女三昧」(2000『ハイヒールの女 赤い欲情』の2011年旧作改題版/製作:フィルムハウス/提供:Xces Film/監督:工藤雅典/脚本:橘満八・工藤雅典/企画:稲山悌二/プロデューサー:伍代俊介/撮影:井上明夫/照明:奥村誠/音楽:たつのすけ/助監督:竹洞哲也/監督助手:城定秀夫/撮影助手:森英男/照明助手:河野賢/メイク:パルティール/出演:五十嵐ゆうか・小川真実・里見瑶子・なかみつせいじ・森士林・野上正義)。一々律儀に釣られてみせるやうだが、まあ雰囲気も何もあつたものではない新題である。幾ら買ひ取りとはいへ、工藤雅典が聞いたら怒るぞ。
 パパさんの援助もあつてか、若いOLの一人住まひにしては妙に広い一室。部屋の住人の洋子(五十嵐)と、二年前に死去した亡父の友人でもある不倫相手・大森(野上)との逢瀬。事後、大森にはあたふたと家に帰られ寂寞を隠しきれない洋子が、二件目に入つてゐた母親(電話越しの声の主は不明)からの留守番電話にぼんやりと耳を傾けたタイミングでタイトル・イン。日を改め、懲りずに母親がセッティングした縁談に出向いた洋子は、開巻で大森から贈られたばかりの、黒いハイヒールの踵を折つてしまふ。洋子はオーダーメイド靴を扱ふ「靴のマナセ」に入り、店主の真瀬(なかみつ)に修理して貰ふ。靴屋としての腕は確かな真瀬は、秘かに美しい洋子の足に尋常ならざる熱情を注ぐ。ex.根本義久の森士林は、そんな次第で今回の見合ひ相手・五十嵐、脱サラしてレストランを開くことを夢見るほどのメキシコ狂。五十嵐と連れ立つて歩く洋子を、三本の綿菓子を手にした大森が目撃する。後日、泥酔した状態で洋子の部屋に現れた大森は、半ば暴力的に洋子を抱く。五十嵐への分別を忘れた横恋慕の末に家族も捨てたのか、出し抜けに部屋に転がり込んでの新生活を切り出す大森に、疲れを覚えた洋子は別れを告げる。大森的には、勝手にかけた梯子を外された格好にもならうところだが。話を戻して、今度は洋子が千鳥足で、閉店間際の「靴のマナセ」を訪れる、ここでの遣り取りが明白にちぐはぐ。マティーニを五、六杯飲んだといふ洋子に対し、真瀬はそんな強い酒ばかり飲ませる男とは別れた方がいいと諭す。あれれ?洋子と大森とは、既に洋子の部屋で終つてゐた筈だ。兎も角、赤いハイヒールを注文がてら、洋子は真瀬と徐々に距離を近づける、のも内角を際どく抉り、次第に爛れた肉体関係に溺れて行く。
 無自覚にか意図的にか、靴をフィッティングする際いはゆるパンチラをチラリズムどころではなく披露する里見瑶子は、靴にだか真瀬にだか興味津々の娘・友美。一面に靴を拡げた部屋で真瀬を待つ小川真実は、上得意と称してホスト感覚で靴屋との情事に耽る有閑マダム・瑞江。何のことはない、友美は瑞江の娘であつた。
 主演女優の五十嵐ゆうか、ヒールを履くとなかみつせいじを見下ろす形になるスラリとしたプロポーションは、超絶にして完璧。公式プロフィールなのか、ウィキペディアによれば身長163cmとあるが、どう見てもそれより高いのではないか。他方で、逆にそこがツボだといふ琴線の張り具合もあるやうな気がしないではないが、首から上は、表情以前に造作としても明白に心許ない。その上での工藤雅典第三作は、さういふ五十嵐ゆうかの素材に、全般的な印象が良くも悪くも直結したかの如き、主には消極的な意味での女優映画。兎にも角にも、洋子が一体何がしたいのか、あるいは観客のエモーションを何処に持つて行きたいのだかが皆目判らない。序盤で大森は捨てた洋子は、中盤以降真瀬の司る愛欲に平穏な日常をも崩壊させかけつつ、危ふく踏み止まり五十嵐との順当な交際に落ち着くのかと思はせて、結局さんざ留守電も無視した真瀬の呼び出しに応じ、淫窟としての「靴のマナセ」に再度足を踏み入れた、かと思ひきや、最終的にはそこでの友美も交へた3Pに嫌気が差し逃げ出す。全身を抜くロングで捉へられる、洋子が真瀬の手による赤いヒールを投げ捨てるラスト・ショットは、画的な完成度は高いものの物語は満足に着地しないどころか、そもそも道筋から覚束ない。あまり多くを望まずに、ひとまづ硬質な画面に頗る映える五十嵐ゆうかの美身を黙つておとなしく楽しむ分には、とりあへずの元は取れよう一作である。


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