真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「三十路同窓会 生々しい不倫妻」(1998『三十路同窓会 ハメ頃の人妻たち』の2007年旧作改題版/製作:フィルム・ハウス/提供:Xces Film/監督:大門通/脚本:有馬仟世/企画:稲山悌二/プロデューサー:伍代俊介/撮影:佐藤文男/照明:藤塚正行/編集:金子尚樹/助監督:加藤義一/製作担当:真弓学/監督助手:小杉匠/撮影助手:佐藤琢也/照明助手:高橋理之/ヘアメイク:小島美樹/出演:園田菜津実・岡田亜沙美・篠原さゆり・杉本まこと・山内健嗣・久須美欽一)。出演者中、山内健嗣がポスターには何故か山内よしのりに、誰なんだよしのり。
 何処ぞの温泉旅館、表に掲げられた、城東大学同窓会の札が仲居の手により外される。宿に残つた有美(園田)と深雪(岡田)が、二人仲良く風呂に浸かる開巻。画面手前の園田菜津実から岡田亜沙美へと、オープニング・クレジットの位置が右から左に親切に移動する、実に判り易く有難い。グラマラスな肢体に容貌も華やかな園田菜津実と、トランジスタ・グラマーの上にチョコンと爬虫類系の清楚な顔立ちを載せた岡田亜沙美、何れ菖蒲か杜若、対照的なツー・トップの磐石ぶりは比類ない。因みに岡田亜沙美のピンク映画前作は、大門通にとつては二作前の「緊縛十字架責め」(1996/主演)。この人が責められるのか、鬼のやうに観たい。後生だから新版公開してお呉れよ、エクセス。
 話を戻して、深雪は二人にとつて大学の共通の憧れの先輩・伸雄(杉本)と結婚し、有美は結婚は早くも二度目ながら、電話越しの気配以外一切登場しない旦那は後一年は単身赴任先から戻つて来ない中、浪人生の義息・賢(山内)と来年大学受験を控へた義娘・聖子(篠原)との関係は色んな意味で良好で、互ひの幸福と、変らぬ美しさとを言祝ぐ。とはいふものの、深雪は重大な問題を抱へてゐた。大学時代、有子と深雪は愛人バンク「夕暮れ族」に登録しアルバイト感覚で遊んでゐた。当時のパパさん・川村(久須美)と御丁寧にも電車の車内で再会した―当然、痴漢電車も一枚噛ませるといふ寸法である―深雪は、以来脅迫による肉体関係のみならず、勤務する証券会社が倒産した川村から、金品も要求されてゐるといふのだ。口髭も豊かに蓄へ壮年の活力と精力に満ち溢れた、久須美欽一のワイルドな悪漢ぶりが堪らない。自由になる金も底を尽きつつあつた深雪は、有子に助けを求める。ここは正直甚だ不自然にも、伸雄の不貞も許容することを条件に、有子は川村の攻略を約束する。
 エクセスのそれなりに看板シリーズ、「三十路同窓会」。他でもない大門通が三作後にも、「三十路同窓会 激しすぎる性欲」(1999/主演:佐藤都・村上ゆう・吉行由実)を撮つてゐたりする。これは純然たる余談ではあるが、寧ろ感想を他には中村和愛の「三十路同窓会 ハメをはずせ!」(2001/主演:逢崎みゆ・星野瑠海・佐々木基子)しか書いてゐないことが、我ながら意外であつたくらゐだ。横道寄りの薄いアウトラインはさて措き、改めて今作の裸映画としての評価は、“ほぼ”だなどといふ限定も不要かと思へるほどに、完璧に鉄板。貫禄をも漂はせる堂々とした肉感性が素晴らしい主演女優と、その他の要素を補つて余りある二番手による、ネーム・バリュー面以外には超絶に強力な二枚看板。更に二人の後ろに、クライマックスまで溜めに溜めて控へるは、役柄にもジャスト・フィットして映える冷たさすら感じさせる硬質の美貌と、独特の突進力を誇る篠原さゆり。平板なビジュアル上の水準も顔ぶれの豊かさとしても、綺麗処三本柱には僅かな隙もなく、サポートする俳優部にも面子は揃つてゐる。一方、裸映画から裸を差し引いた、裸の劇映画としての作劇に関しては。悪辣な川村に一泡吹かされた有子は、いはゆる“川村狩り”を、色仕掛けも込み込みで賢に乞ふ。義母と義息の関係が、以前から継続したものであつたことが明らかになつた際には、直前の賢が有子の入浴を覗き見する件との間に齟齬も覚え些か面喰つたが、よくよく振り返つてみると、実は冒頭の温泉シーンに於いて既に、さりげなく伏線を敷設済みであつたりもするので、ひとまづ通り過ぎる。ともあれ川村撃退に成功した有子が、伸雄に食指を伸ばすことも、深雪はどうしてその底の浅い姦計に気付かないのか、といつた一点にさへ目を瞑れば、至極自然な流れともいへる。良くも悪くも問題は、有子が伸雄としけ込んだ温泉宿に、驚天動地の第三者が現れる、濡れ場から修羅場への一線を跨いだクライマックス。一体大門通は、斯様に壮絶な状況から一体如何に映画を畳むのかと正しく固唾を呑んでゐたところ、当該濡れ場には参加しないヒロインの泣きショットで振り逃げる幕引きには、大いに驚かされた。さういふピンク映画を観た覚えも俄には思ひ出せない見慣れなさに加へ、悲痛なラストと、それまでの基本陽性のトーンとの間に、激しい違和感も覚えたからである。そこで三人が呑気に乱交に励んでしまつては、幾ら娯楽映画とはいへ底も抜けてしまふといふ匙加減ならば酌めぬではないが、正直後味は、決してよくはない一作ではある。オーラス直前に、かつて有子が目撃してゐた、深雪と伸雄の最初の情事を差し挿んだことの意義も解せない。

 その他出演者、有子の要請を受け賢が招聘した、それぞれ鉄パイプと金属バットで武装した二人組の対川村実行部隊は不明。声のひとつもかけずにいきなり背後から川村を襲撃する、ピンク映画にしては珍しくも見える清々しくドライな暴力描写に際しては、かつてはスーツアクターも務めてゐた久須美欽一の達者な受けが、地味に光る。


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