真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「主婦売春 若妻性欲処理」(1995/製作:関根プロダクション/配給:大蔵映画/監督:川井健二/脚本:如月吹雪/撮影:伊東英男/照明:秋山和夫/録音:ニューメグロスタジオ/効果:協立音響/編集:フィルム・クラフト/助監督:一ノ瀬教一/撮影助手:倉田昇/照明助手:鹿児島明/監督助手:小谷内郁代/スチール:津田一郎/現像:東映化学《株》/タイトル:ハセガワ・プロ/出演:林由美香・青木こずえ・吉行由実・今泉浩一・真央元・杉本まこと)。
 高校教師の松原浩介(杉本)と、元教へ子で卒業後直ぐに結婚した綾(林)の夫婦生活で一見順当に開巻。こつちはまだ濡れてゐないといふのに、挿れてる内に濡れて来るといふ浩介が勝手に果てるや、綾曰く「何よ、濡れてる暇もないぢやない」。潤ひを欠いた朝の風景挿んで綾は机上のスナップ写真から高校時代の求婚と受諾を想起、チャイムが鳴つたところで遅れ馳せ気味のタイトル・イン。来訪者は、同級生で目下イケイケな女子大生の藤島か藤嶋夏樹(青木こずえ/a.k.a.村上ゆう)。「先生と上手く行つてる?」等々と挑戦的にカマをかける夏樹は固辞する綾に男遊びを強引に指南、五時にピンクの傘を持つて紀伊国屋前に立つアポを無理強ひする。出向いた綾も綾なのだが、初対面の待ち合はせにタンクトップで現れた山木か山城アキラ(真央)は、会ふだけといふ綾と夏樹との口約束を木端微塵に粉砕、ホテルに直行三万円で事に及ぶ。JD仲間を集めた売春クラブの元締めだなどといふ、出し抜けに凶悪な造形の夏樹に綾は騙されたことを抗弁するが、夏樹にいはせれば先にハメたのは綾。実は元々、夏樹が先に松原先生に想ひを寄せてゐたのだ。浩介に知られたくなくばと半ばどころか純然たる脅迫で、連絡用にポケベルを持たされた綾は以後主婦売春を重ねさせられる。因みに重ねさせられる描写に際しては、内トラを動員することはなくカメラ・ワークに腐心する真央元の孤軍奮闘で乗り切る。
 今泉浩一は、夏樹懇意の客・博之。事後戯れ気味に撮られた写真をダシに、綾を篭絡し浩介と別れさせる、どう考へても結構困難なミッションを夏樹から安請け合ひする。この時期はランダムに由美との間を往き来するのが要注意な吉行由実は、博之の見るからにオッカナイ細君・ケイコ。
 jmdbによると1993年から1995年にかけてピンク映画全二十作+薔薇族一本を撮つた川井健二とは、同じくjmdbによると1990年から1995年まで監督作のない、関根和美の別名義である。今作は1995年ラストの第六作、即ち、同時に関根和美が名義を戻す以前の川井健二期最終作といふ格好となる。再々度jmdbによれば製作は関根プロダクションとあるが、本篇クレジット上には見当たらなかつた。映画の中身に話を戻すと、綾が絡め取られる件を筆頭に、博之なり浩介も含め夏樹の攻撃性が牙を剥く段では一足飛びに展開がサクサクする割には、遊びのない布陣にも足を引かれ、全般的にはモターッとした印象が強い。本格的に映画が躓き始めるのは中盤、夏樹に差し向けられた逆ハニー・トラップの博之が起動する辺りから。呼び出した綾に金を前払ひしておいて手をつけようともせず、自分が仕事仕事に追はれてゐる内に女房が寝取られてしまつた云々と泣き言を繰り始め同情から気を引かうといふのだが、何処から見てもグジャグジャ惰弱な今泉浩一が百歩譲つたとて鬱陶しくしか見えず、端的には男の目からも十二分にキモい。ここはせめて次善策としては、真央元と役が逆ではなかつたか。綾からコンタクトを取り三度目の逢瀬にして初めて致してゐる隙を突き、夏樹は先に帰宅した浩介を急襲。ここからが白眉の反対側なので、黒眉とでもいふべきか、自堕落が頂点に達する、それは底だ。何故だかここに来て松原夫妻が正体不明の絆の強さを発揮、何だかんだでもとい何が何だかな流れで夏樹を排除し思ひきりシッポリ結ばれるに至つて完全にチェック・メイト。挙句に、何時まで経つても始まらない故よもやと不安にさせられた吉行由実の絡みを、この期に松原夫妻以上に―以下だ―粗雑な導入で放り込む始末。締まらないので締めの名には値しないが、順序的には最後の濡れ場が三番手のものである構成のへべれけ具合によくいへば判り易く止めを刺される、薄らぼんやりとした一作。テレクラとポケベル、御丁寧にもお互ひ様な二段構への思はせぶりなバッド・エンドに、素直に神経を逆撫でされる。


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