真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「親友の恥母 白い下着の染み」(2006/製作:フィルム・ハウス/提供:Xces Film/原題:『親友の母』/監督:神野太/脚本:これやす弥生/企画:稲山悌二/プロデューサー:伍代俊介/撮影監督:創優和/撮影助手:柴田潤/照明助手:小林麻美/助監督:竹洞哲也/監督助手:小山悟/スチール:阿部真也/ヘアメイク:徳丸瑞穂/編集:フィルムクラフト/制作協力:フィルムハウス/出演:松本亜璃沙・華沢レモン・矢藤あき・柳之内たくま・小林三四郎・真田幹也)。
 エクセス映画のタイトルには、“恥母”なる何をいつてゐるのだか伝はるやうでよく判らない珍淫単語がしばしば頻出するが、“親友の恥母”と冠された映画は2004年の、“エクセスの黒い彗星”松岡邦彦の正に解き放たれんばかりに一撃必殺な破壊力が縦横無尽に迸る、「親友の恥母 -さかり下半身-」(恥母:平田洸帆)以来二作目となる。色情狂の母親が息子の親友を出鱈目も斜め上に通り越して誘惑する「さかり下半身」に対し、坂を越えロング・ショットで歩いて来る女に、「僕には、ずつと憧れてゐた年上の女性が居た。それは親友のお母さんだつた・・・」といふ若い男の独白が被さるオープニングで幕を開ける今作は、恥母ものといふよりは親友の義母に若い男が恋慕を寄せる、極めて順当な非純愛映画となつてゐる。
 登場人物の家族構成は、父・収一(小林)、十年前に再婚した義母・響子(松本)、予備校生の長男・賢二(真田)に高校生の長女・由美(華沢)といふ奥澤家。響子に秘かにでもなく熱烈な恋情を抱くのが、賢二の親友で一流大学に通ふ等々力裕哉(柳之内)である。
 まづ主演の松本亜璃沙に触れておくと、ロング・ショット、タイトル・インに続いての小林三四郎との濡れ場。・・・・あれ?ポスターの写真よりずつと可愛いぞ。逆からいふと、それだけポスターの写真が例によつて酷い、といふことでもあるのだが。まあ、それがエクセス・クオリティともいへる。公式スペックによると三十四歳、アイドル風の容姿は意外と若く、同時に絶妙に年もとつてをり、メロンを二つに切つてボガンボガンとくつゝけたやうなオッパイといひ、全く眼福である。他方、お芝居の方はぼちぼち。尤も、それはそれでも全然構はない。さういふいふ上での戦略、といふ訳でもなからうが、今作は裕哉が響子に恋慕を寄せるメイン・プロットに、年増女に夢中でちつとも自分の方を向いて呉れない、実は裕哉に想ひを寄せる由美のジェラシーがサブ・プロットとして絡めてある。このことが詰まるところは『BOYS BE…』に毛を生やしたやうな何てこともない物語に、グッと厚みを増す。といふか中盤は華沢レモンと松本亜璃沙の地力の差もあつてか、殆ど映画は裕哉にヤキモキする由美の物語にすらなつてしまつてゐる。即ちこの期に改めて認識させられたのは、華沢レモンの進境も通り越した充実ぶり。ひとつひとつのカットの小さいながらも豊かな演技に、そこかしこで注目させられる。安心して観てゐられる、の明らかに次の次元に到達しつつある。どんな作品のどんな端役ですら、映画を自分のものにしてしまへる決定力を有しつつある。よつて今作最大にして唯一と思はれるミスは、誕生日会にプレゼントを持つて来なかつた裕哉を、由美が家にまで押し掛けて急襲する件。自ら衣服を脱いでの「先生を、下さい・・・」の台詞は、部屋全体を捉へた回し放しのカメラの、由美が背中を向けたアングルではなくして、是非ともカットを変へて正面からアップで押さへるべきではなかつたらうか。完全に映画の軸足がブレてしまつたとしても、今作に於けるエモーションの極大はここにこそあつたものではないか、と感じたところである。
 矢藤あきは、賢二の彼女のアーパー女子大生・沼部理恵。絡みと、由美誕生日会の場面にのみ登場。元々特に芝居が達者な訳でもなければ、エモーションを手中にした女優さんでもないので、ある意味最も適材を適所に配した使ひ方ともいへるのか。理恵が賢二に「アーン♪」とケーキをフォークで口に運ぶアツアツの様子にアテられ、由美も裕哉に「アーン♪」。ところが、響子に夢中な裕哉は気もそぞろで一切取り合はない、由美は膨れる。このシーンの何処にポイントがあるのかといふと、華沢レモンの膨れ面、の前に、その呼び水としての矢藤あきの置き方。濡れ場要員とて決して疎かにはしない、神野太のベテランならではの貪欲な手堅さが現れてゐる。
 由美と裕哉の濡れ場に続いて、響子と裕哉の濡れ場で映画は幕を閉ぢる。後者の入り方は些か強引でもあるが、結ばれるべき二人が結ばれないことには、ハッピーなエンドとして娯楽映画が着地しない。加へて、“白い下着の染み”をきちんとショットとして押さへておく律儀さも光る。決して我武者羅に前に出て来る訳でもないのだが、観てゐて実に暖かい気持ちになれる一作。積み重ねられたものが、しつかりと結実してゐよう。

 とかいふ次第で、昨今のエクセスの堅調を改めて実感させられたものである。そこでフと思ひついたのが、“親友の恥母”で各監督が連作してみるのも一興ではなからうか。まづは新田栄の、「痴漢と覗き 親友の恥母」から。そして一通りを経て棹尾を飾るのは、あの男の必殺の本篇復帰作、「味見したい親友の恥母たち」!・・・・駄目かいな?


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