真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「小川みゆき おしやぶり上手」(2002/制作:セメントマッチ/提供:オーピー映画/監督:森山茂雄/脚本:佐野和宏/プロデューサー:池島ゆたか/撮影:飯岡聖英/編集:酒井正次/音楽:大場一魅/助監督:城定秀夫/録音:シネキャビン/スチール:佐藤初太郎/監督助手:中沢匡樹/撮影助手:田宮健彦・赤池登志貴/協力:高円寺 RISUKY BAR・長谷川九二広・アルゴプロジェクト・吉行由美・森山タカ/出演:小川みゆき・風間今日子・佐野和宏・本多菊次朗/特別出演:沢田夏子・神戸顕一・北千住ひろし)。正確なビリングは、佐野和宏と本多菊次朗の間に特別出演。特別出演中沢田夏子と北千住ひろしは、本篇クレジットのみ。
 山田節男(本多)は冴えない独身ダメリーマン、要領悪く残業中のオフィスにて、同僚・菅野宏海(風間)とのオフィス情事がオッ始まつたかと思へば、一足早く帰り際にPCモニターに映り込んだ宏海の姿に惹起された、他愛もないイマジンであつたりする。開巻いきなりの濡れ場を堂々と妄想ネタで片づけてみせる、凡そデビュー第二作とは思へない不用意に手慣れた手法に関しては、風間今日子の爆乳に敬意を表しここは一旦通り過ぎる。
 山田は同居、してゐた家族も亡くした一軒家の実家に今も独り住み、休日唯一の楽しみといへば、愛車を駆る海岸へのドライブであつた。その時だけは、何もかにもを忘れた開放感を味はへた。海辺の空気を大きく吸ひ込んだ山田の目前で、如何にも訳アリ風情の女が、着衣のまゝフラフラと波も荒い海に入る。女の姿が波間に消えたところで、女が入水自殺しようとしてゐることを漸く悟つた山田も慌てて海に飛び込む。助け出した女・神村杏子(小川)を、山田はひとまづ自宅に連れて帰る。どうして病院、乃至は警察に行かないのか、といふツッコミはとかくこの手の物語に際しては厳禁である。
 山田宅に辿り着くや否や、杏子は眠りこける。杏子の衣服からは睡眠薬の小瓶と、左手首にはリストカットの跡が残つてゐた。翌朝出社しなくてはならない山田は、交通費にと一万円と、自宅に帰るやう勧める置手紙とを眠る杏子に残し家を出る。山田がくたびれて帰宅すると、未だ家にゐた杏子は家の中は片付け、豪華な夕食を作つて山田を出迎へた。その夜、こんな形でしかお礼は出来ないと、杏子は山田の床の中に潜り込んで来る。とかいふ次第での山田と杏子の、いはゆる“奇妙な同居生活”モノである。
 穏やかではありつつも退屈な山田と杏子の擬似夫婦描写を経て、中盤に登場しては一人劇中世界を支配する佐野和宏は、杏子の過去を知る男・竹地鉄治。竹地の性奴隷であつた杏子は自殺未遂騒ぎを起こし、入院してゐた病院から逃げ出したものだつた。情婦(沢田)から杏子の目撃情報を耳にした竹地は、山田家に杏子を急襲、山田には杏子の叔父と偽る。酔ひ潰した山田の目前で、杏子を犯す。
 別れ話すら自分では切り出せずに女の手を借りるダメ男と、粘着質のメンヘル女との危なつかしい新婚ゲーム。宏海から山田との別れを促された杏子が、恐々帰宅した山田を台所のテーブルの下に隠れ待つ場面には、ホラー映画かと見紛ふ恐怖を覚えた。詰まるところ自己中心的な杏子の弱さに、さうと理解するでなく不用意に理解のつもりの誤解を注ぐ山田と、徹底的に突き放し、一瞥だに呉れず杏子の女体を蹂躙するのみの竹地。脚本の佐野和宏の視点は、自ら演じた竹地の姿により強く表れてゐるやうにしか見えないが、一方森山茂雄の軸足は、対して杏子に寄せられてゐるのか、そもそもどちらにあるのか不鮮明な辺りが兎にも角にも痛い。所々に、情感豊かな場面も散発的には見られなくもないのだが、最終的には、映画全体としての求心力は失してしまつてゐると難じざるを得ない。首の何時までも据わらぬ物語は、他の着地点を森山茂雄が摸索することは望むべくもなかつたのか、どうしやうもない暗黒の結末を迎へ、最早どうしたらいいのか判らない居心地の悪さばかりが残される。放置されたかのやうな国沢実の陰々滅々路線といひ、三社の中で最もノンポリのやうな顔をして、時に最も危険な球を放つて来るのが大蔵(現:オーピー)映画の、隠された真の姿といへるのかも知れない。

 配役残り神戸顕一は山田の上司、北千住ひろしは同じく同僚。それにつけても、恐ろしく久し振りに見た沢田夏子は、残念ながら佐野相手に別に脱ぎはしない。


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