真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「愛人秘書 美尻蜜まみれ」(2002/製作:旦々舎/提供:オーピー映画/監督・脚本:山﨑邦紀/撮影・照明:小山田勝治・長谷川卓也・新家子美穂・大江泰介/編集:㈲フィルム・クラフト/音楽:中空龍/助監督:加藤義一・田中康文/スチール:岡崎一隆/録音:シネキャビン/現像:東映化学/協力:セメントマッチ/出演:岩下由里香・風間今日子・柳東史・平川直大・佐々木基子/Special Thanks:荒木太郎・内藤忠司・松岡誠・伊藤一平)。正確なビリングは、平川直大と佐々木基子の間にカメオ勢を挿む。
 ピー、ピピッピー。アポロ時代のコンピューター作動音を思はせるSEに乗せて、何故だかバレエ・コスチュームの美利(岩下)が、ナベシネマのやうな時化た夜空に交信を試みる。曰く自分は地球といふあまり好まぬ星に不時着した異星人で、故郷への救助を求めてゐるとのこゝろ。いきなり絶好調にもほどがある山﨑邦紀は、流石に今回は羽目を外し過ぎたのか以降同種のシーンが蒸し返されはするものの、視点を違へた補完のシークエンスを撮り落としてゐるゆゑ、美利が本当に異星人なのか、あるいは異星人のつもりの、単なる“自分はほかの奴等とは違ふんだ”ちやんであるのかは不明。
 美利は強権的な会社再建屋の健(柳)と同居する愛人、兼秘書であつた。敵の多い健が謎の女刺客・暁子(佐々木)に狙はれた際には、用心棒として華麗・・・・かもな拳法で暁子を排除する。とかいふ次第で今作は一週間余先んじて封切られた、加藤義一のデビュー作で岩下由里香と佐々木基子に生じた遺恨の決着篇である、などといふのは純然たる全くの与太   >なら吹くな
 二人と同居する健の弟・徹(平川)は、健とはまるで正反対の弱々しい社会不適応者で、恋人・真純(風間)の丸々と豊かな尻に、何時も何時も泣きつくばかりであつた。一方健はといふと、弦を生やした固茹で卵を自らの肛門に埋め、ピンと張つた弦を美利に奏でて貰ひ発生した振動に喜悦する、アナル・バイオリンに打ち震へる。ある日拙いバレエの練習に励む美利の姿を前にした徹は、何がどうしたのか藪からに、美利の肛門から産まれ直す、アナル・バースを夢想するやうになる。
 異星から来た主人公に、繰り返される苛烈なキャット・ファイト(笑)。繰り出される数々の奇想、アナル・バイオリンに挙句はアナル・バースと来たもんだ。流石に趣味性を過積載したのか、一本の商業映画として物語が霧散してしまはぬやう踏み止まるのに精一杯で、山﨑邦紀の陰ながらも本来の主力兵器、冷徹なまでの論理性は些か機能不全。代つて火を噴くのは数秒あれば映画を決定し得、ワン・ショットで映画的エモーションを観客の心に叩き込む、当サイトが山﨑ダイナミックとも名づける大いなる力技。美利からのアナル・バース幻想を、徹は恍惚と真純に語る。カットの変り際に、遂に再起の端緒を掴んだ不甲斐ない恋人に注がれる真純の眼差し。慈愛と大いなる期待とを感じさせる風間今日子の深い表情は、一瞬を永遠に刻む。
 アナル・バースだアナル・バイオリンだと、一体何たる奇想かと頭も抱へかけたところ、これがどうやら世の中といふ奴は案外に広いもので、笑ふ勿れ山﨑邦紀のオリジナルではないらしい。アナル・バースは門外漢につき何処まで間に受けてよいのやら甚だ怪しいが、実際にそのまゝの意味合ひでフロイトが提出した用語で、アナル・バイオリンはといふと、これまた実証性の方はどうにも疑はしいが、オスマン・トルコ時代に生まれた自慰装置だといふのである。アナル・バースに関して検索してみると、一番上に出て来た山﨑邦紀御自身のブログに色々と書いてあつた。
 とはいへ幼児がいはゆる肛門期に示す特徴によつてその後のパーソナリティーが決定づけられる、①排便を我慢することに快感を覚える@健→頑固・真面目・几帳面。②我慢せずに排便することに快感を覚える@徹→寛大・自負心・功名心。だとかとの“肛門三兆項”といふのはオリジナルか。大体似たやうな方便を、垂れてゐるといへば垂れてゐたりもするのだが。
 ドラマを撮るよりも、殆どオブジェとしての肉体を映し出すのに軸足を移した山﨑邦紀の要請に応へたのか、濡れ場に突入するや照明を強く当て生身の肉体と、血の通はないメカニズムの集合体との境界をギリッギリ彷徨ふ撮影は出色。偶然に過ぎないのであらうが、プロジェク太上映でも驚くくらゐ美しく発色してゐた。

 supecial thanksの四人は、健にハッパをかけられる会社役員の皆さん。伊藤一平を、特定出来た気がする。座り順はクレジットと同じく、手前から荒木太郎、内藤忠司、松岡誠、伊藤一平か。


コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )


« ゼロ・ウーマ... 絶倫義父 初... »
 
コメント
 
コメントはありません。
コメントを投稿する
 
名前
タイトル
URL
コメント
コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。