真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「セックスファミリー2 花嫁はド淫乱」(2004『淫乱なる一族 第二章 絶倫の果てに』の2007年旧作改題版/制作:セメントマッチ/配給:新東宝映画/監督:池島ゆたか/脚本:五代暁子/企画:福俵満/撮影:清水正二/編集:酒井正次/音楽:大場一魅/助監督:佐藤吏/監督助手:氏家とわ子・茂木孝幸/撮影助手:岡部雄二・前田賢一/スチール:山本千里/ネガ編集:フィルムクラフト/録音:シネキャビン/現像:東映ラボ・テック/出演:山口玲子・秋津薫・矢崎茜・本多菊次朗・牧村耕次・神戸顕一・しのざきさとみ・梅沢身知子・小川隆史・田中サブロー・モテギタカユキ・平川直大)。出演者中、神戸顕一からモテギタカユキまでは本篇クレジットのみ。
 「僕は、結婚したかつた」、一ノ瀬たかし(平川)は四年間付き合つてゐた彼女と別れて半年、結婚に対し明確に飢ゑてゐた。初めて参加した合コンで、たかしはそれぞれタイプは異なる二人の魅力的な女と出会ふ。神戸顕一・梅沢身知子・田中サブロー名義の田中康文らはコンパのその他参加者要員。誇らしげな巨乳で積極的に色気を放散する三好さくら(山口)と、対照的にスマートな社長令嬢・山崎涼子(矢崎)。酔ひ潰れたさくらを手洗ひまで連れて行かうとしたたかしは涼子に引き留められかけつつ、結局さくらの思ふまゝに。座から掃け際の、さくらこと山口玲子が見せる「してやつたり」といふ微笑が絶品。まんまとたかしを連れ出したさくらは、そのまま二人別の店に移ることを持ちかける。要はこれがさくらの、意中の男をゲットする際の常套手段であつた。タイトル・イン明けるや早速頻出のシティ・ホテルにて、さくらがたかしの尺八を吹く。矢継ぎ早にパイズリ、背面座位へと流れるやうに移行。カット変つた半年後には半歩たりとて立ち止まらない勢ひで二人は結婚、抜群の出足には惚れ惚れさせられる。
 結婚後さくらは仕事は辞め、たかしの実家に専業主婦として入る。車椅子に乗つた祖父・留吉(牧村)、妻(しのざきさとみ/遺影としてのみの登場)には先立たれた堅物教師の父・満男(本多)、出戻りで実家に帰つて来た気難しい図書館司書の姉・弥生(秋津)との、五人での生活が始まつた。因みに、弥生は微妙に輪から外れた一家団欒、四人で「この俳優お父様にソックリ~」だとかいひながら見てゐるテレビに映し出されるのは、「ノーパン秘書2 悶絶大股開き」(2003)。体力作りのジョギングに汗を流す本多菊次朗が、公園で居合はせたつーくん(五代暁子の愛息、円くん)を抱き上げるのを、妻役の酒井あずさが微笑ましげに見詰める場面である。
 さくらの妻ぶりに概ね満足のたかしではあつたが、問題は三つあつた。まづは夫婦の寝室をハチャメチャに飾りたてる、出鱈目なセンス。問題其の弐は、留学経験もあるさくらの欧米かぶれの理屈ぽさ。そして最も重大な問題其の参は、さくらのあまりにも大胆で貪欲な性欲であつた。正直食傷気味のたかしは、結婚後三箇月にして早くも不能になつてしまふ。
 といふ訳で、仕事にかこつけてたかしが家を空け気味の隙に、性に関して過剰に開放的なさくらが家人を次々と桃色に攻略する展開が今作のハイライト。華麗に回春する牧村耕次や、ストイックな教育者の顔をかなぐり捨てる本多菊次朗の姿は抱腹絶倒、文句なく面白い。実は結婚を控へた涼子との火遊びも経てたかしがクライマックス漸く家に帰ると、あらうことか、そこでは正しく酒池肉林の4Pが繰り広げられてゐた。目を白黒させるたかしに子作りを期したさくらが無理矢理上から跨ると、満男はそんなさくらの菊門に挿入、更には腹上での心筋梗塞から復帰した留吉は、自らの剛直をさくらの口に捻じ込む。図らずも完成した親子三世代による山口玲子への三穴責めには、遂に成就した巨大ロボットの合体にも比類する怒涛のカタルシスが轟く。既に当惑も通り越し、あの時涼子を選んでおけば良かつたと絶叫するたかしの後悔は主人公ながらにこの際さて措くと、性を大らかに―些か大らか過ぎるが―肯定するメッセージも通底する、正しくピンク映画かくあるべしともいふに値する絶好調の一作である。

 旧題に“第二章”とあるやうに、今作には前作といふ意味合ひではなく、正しく対を成す第一章が存在する。冒頭の合コンからさくらではなく涼子と結婚することになつたたかしが、ベクトルは異なれど矢張り酷い目に遭ふ第一章「痴人たちの戯れ」も、「セックスファミリー いやらしい義母と若妻」と旧作改題されてゐる。実は六月に小倉名画座に来てもゐたのだが、遠征には出てゐない。


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コメント
 
 
 
Unknown (ペリカン便よりアロー便派だぜ鬱メイト)
2009-03-01 14:23:12
ご無沙汰しております。

その、涼子の方を選んだ“第一章”、先日DVDで見たのでありますが、内容はドロップ様の仰った通り、ストレートに平川直大がひどい目に遭うお話ですた。ストレートすぎて、ちょっと救いが無さすぎるお話になってましたが(カレーネタは笑った)、ドロップ様の文章を読んで、なるほど、対を成す一編だったと分かって納得したであります。こちらの山口-牧村-酒井あずさ-華沢レモンの家族ラインは、実にヤバ目な雰囲気のファミリーでありまして、平川大兄ともども、なんとなく「外れクジ」を引いた気分にもなります(面白い外れクジなんだけど)。

ドロップ様の文章を読んで、第二章も見たくなりました。
 
 
 
Re:Unknown (ドロップアウト@管理人)
2009-03-01 16:33:43
 鬱メイト様こんにちは。

 実は第一章の方は旧作改題を拾つてゐないので、正直結構うろ覚えであつたりもします。
 確かストレートにクリミナルなプロットでしたつけ?
 第二章は振り抜かれる桃色の豪腕が圧巻な一作で、お薦めですよ。
 
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