真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「エロマダム 襦袢と喪服」(2000『襦袢未亡人 白い蜜肌』の2008年旧作改題版/製作:シネマアーク/提供:Xces Film/監督:下元哲/脚本:岡野有紀-小猿兄弟舎-/企画:稲山悌二・奥田幸一/撮影:下元哲/照明:代田橋男/編集:酒井正次/助監督:高田宝重/監督助手:永井卓爾/撮影助手:中泉三十郎・清水康宏/メイク:小川幸美/出演:桜沢菜々子・佐倉萌・やまきよ・杉本まこと・久須美欽一)。
 大東亜戦争敗戦間際、代々武人の家系の九條隆介(やまきよ)はいよいよ出征を控へてゐた。隆介は妻・菊江(桜沢)に自分が戦死した場合、九條家を捨て別の男と幸せになることを望むが、菊江は拒む。忘れ形見をと促され、隆介は菊江を抱く。一人九條家を守る菊江は、屋敷に忍び込み、囲炉裏に吊るした鍋の雑炊を盗み喰つてゐた双葉ゆり(佐倉)と出くはす。何処かから逃げて来たのか、弁明する間もなく気を失つてしまつたゆりを菊江は看病し、そのまま家に置くことにする。女二人の生活が続いたある日、隆介が戦死したと遺骨が届く。どうしたら出撃した特攻隊員の遺骨が遺族の手元に届くのか?といふ疑問は強く残る。ショックのあまり体調を崩した菊江の為にゆりが食べ物と薬とを買ひに家を空けた隙に、隆介の海軍学校での同窓生・四谷文三(杉本)が九條家を訪れる。妻は空襲で喪つたと証する四谷は、自分にもしものことがあつた場合に菊江を頼むと、隆介から託されたとのこと。出征する夫に持たせた自らの写真も見せられ、半信半疑のまま菊江が四谷に今将に抱かれんとしてゐたところに、ゆりが飛び込んで来る。ゆりは四谷に陵辱され、身上(しんしやう)も奪はれた挙句に女郎屋に売られたといふのだ。ゆりの登場に冷酷残忍なサディストの本性を現した四谷は、二人を監禁陵辱し、九條家の一切を手にするべく魔王然と振舞ふ。
 深町章の向かうでも張つたか、下元哲が挑んだ大東亜戦中猟奇―気味―譚は、一箇所オッチョコチョイが佐倉萌の体に影を落としてしまふ以外には、大袈裟な不手際を曝すことはないものの、特にこれといつた見所がある訳でもない。四谷の支配下に置かれた後(のち)、菊江はゆりには逃げることを勧める。一緒に逃げようといふゆりを遮り、菊江は四谷とこのまま暮らすことを選ぶ。隆介の忘れ形見、即ち子を宿してゐた菊江は、どういふ形であれ矢張り父親は必要だといふのだ。さういふ塩梅で、逞しく生を欲求する女と、徒に死に急ぐ男といふ対照は何度か匂はされかかるのだが、結局深く消化されることもなければ、高く昇華されることもない。全方位的に、身の丈に合はぬ横好きと難じざるを得まい。それはそれとして、一方実は、といふか案の定<死んではゐなかつた隆介が四谷は刺殺した>後の締めの濡れ場。隆介が菊江の菊門に挿入するといふ大オチは、もう少し顕示的にクローズ・アップしても良かつたのではなからうか。

 久須美欽一は九條家近所の農夫、菊江が小出しにする反物等と引き換へに、九條家に作物や酒を届ける。徹頭徹尾それだけの役なので、それならば高田宝重でもいつそ構はないやうな気もする。


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