真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「ざんげ 懺悔M」(製作年不明『懺悔M』の2009年旧作改題版/製作:雄プロダクション/配給:新東宝映画/監督:伊集院剛/撮影:遠藤政史・倉本和人/協力:愉芽企画・JAP工房《SM小道具》/出演:秋川ひろみ・橘美恵子・舞礼奈・志摩紫光)。当時の配給はミリオンフィルム(=ジョイパック、現:ヒューマックス)。
 まづ最初に、作品データに関する外堀を埋めておくと、本篇クレジットに―基本的にポスターにも―載るのは撮影・協力・出演・監督のみで、恐ろしいことに脚本家の名前がない。製作の雄プロダクションは、新版ポスターにさうあるだけで、なほかつ出演者の志摩紫光(=伊集院剛)には、“(調教師)”といふ特記が付く。逆に協力のJAP工房の“(SM小道具)”は、撮影の倉本和人と同様エンド・クレジットのみ。挙句に凄まじいのが、本篇タイトルは旧題の「懺悔M」のままといふ始末。幾ら何でもそこは横着し過ぎだろ、新東宝。
 ビルの一室にて、志摩紫光(本人、以下全員同)が秋川ひろみの立体マン拓を取る。カットが物凄く変り、ロープに吊つた網の中に捕らへた秋川ひろみを山川の急流に曝すなどといふ、最早それを見て愚息が勃つだとか勃たないだとかといふのとは殆ど違ふ、ポルノといふか寧ろスペクタクルに近い別の次元に突入した滅茶苦茶な責めも敢行しつつ、ビリングがトップの筈の秋川ひろみは、それだけでいとも容易く素通りしてしまふ。続いて白昼の街中を、志摩紫光が四年来の愛奴とかいふ舞礼奈(23才)を、絶賛公然猥褻の堂々とした緊縛露出状態で連れ回す。アナーキー過ぎるぜ、東京。以降はそんな―どんなだよ―舞礼奈と、彼氏を伴なひ志摩紫光の事務所を訪ねた橘美恵子(23才)とに対する脈略のない調教が、何処ぞの山ん中で延々延々繰り広げられる。因みにその際には彼氏も一緒に調教されるのだが、可哀相なことに、結構酷い目に遭ふにも関らずカレシ君の名前は出演クレジットの中に欠片もない。
 さあて、何となく事前の予想もついたとはいへ、繰り返したくはなかつた一言を繰り返すぞ、

 何だこりや(´・ω・`)

 簡単にいふと、半分程度も作つてはゐない劇映画をSMビデオで水増しした「縄女」(昭和63/監督:剣持哲也)よりも、単なるAVを短く再編集しただけの「犬小屋の妻 発情しました」(2004/監督:川崎軍二)になほ近い、といふか殆ど全く同一である。新撮されたものなのかありものなのかもこの際どちらでも構はぬ、志摩ビデオを薄汚いキネコにした上で小屋にかけてみました、といふ次第でしかない。責めの最中に何事かゴチャゴチャ話してもゐるやうなものの、脚本に加へ全うな録音も存在しないたmで、清々しく聞き取れない。脚本家が不在なのに、録音技師など居るものかといふ話でしかないのかも知れないが。映画館で上映されてゐれば、PRフィルムであつてもテレビCMであつてさへも映画である、などといふそれはそれとして頑強な形式論に与さないならば、天婦羅うどんがガンダムではないのと同様に、こんなものは映画ではない、百歩譲つたとて劇映画では絶対にない。全方位的に時代を越えられない点に目を瞑れば―どうすれば瞑れるのか、俺は知らないが―それなり以上にハードなプレイが展開されてはゐるやうだが、画面全体を覆はんばかりの勢ひの巨大なボカシがスクリーンを埋め尽くすのを前にしては、興奮するしないの以前に力の抜けた馬鹿馬鹿しさの方が勝りもする。その意味では、「こんなことが昔はあつたんだね」といふ限りの文脈に於いていはゆる“珍作”といふカテゴリーの中に、無理矢理捻じ込んで捻じ込めないこともないやうな気も機嫌と体調とが抜群によければしないでもなからうが、端的には、SMと懐古趣味、この二つが揃へば御飯何杯でもイケる。さういふ筋金入りの御仁以外には、間違つてもお薦め致しかねる代物である。実は大半を占める舞礼奈+橘美恵子with彼氏のパートにあつて、どういふ訳でだか部分的に画質が回復して見える箇所もあるのだが、そこいら辺りの詳細も、とうに別にどうでもいい。

 清々しい唐突感が爆裂するラストは、廃屋の窓から外に向かつてM字開脚に座らされた舞礼奈と橘美恵子が、豪快に放尿し放心状態になる。といふショットで一応は締め括られるとはいへ、正直途方に暮れたいのはこちらの方だ。


コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )


« 熟女温泉女将... さびしい人妻... »
 
コメント
 
コメントはありません。
コメントを投稿する
 
名前
タイトル
URL
コメント
コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。