真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「変態オヤジ 四十路熟女の色下着」(2005/製作:サカエ企画/提供:Xces Film/監督:新田栄/脚本:岡輝男/企画:稲山悌二/撮影:千葉幸男/照明:小川満/編集:酒井正次/助監督:城定秀夫/音楽:レインボーサウンド/監督助手:北村隆/撮影助手:田無弘之/選曲効果:梅沢身知子/製作進行:阿佐ヶ谷兄弟舎/出演:酒井あずさ・林由美香・野上正義・岡田智宏・丘尚輝)。
 福岡オークラの、中程度以上に大きく、ちやんとフィルムで上映されてゐるスクリーン―それが本来なのだが―で観ることの出来るピンクも残り十五本かと思ふと、新田栄の何てこともないルーチンワークさへ、キラキラと心なしか輝いて見える。要らねえよ、そんな屈折した感傷。
 朝の伊東家、夫・一郎(丘)を送り出すと、待子(酒井)はいそいそとお気に入りの勝負下着に着替へる。目下夢中の、化粧品の訪問セールスマン・西島正太(岡田)が家を訪れる日なのだ。クリームを腕に塗つて貰つたりしながら、昼下がりの熱い一発をキメる。一方町内には、不審者の出没が相次いでゐた。待子と仲良しの若妻・渡辺美紀(林)は、露出狂に遭遇する。安い覆面レスラーのやうなマスクにコート姿、判り易過ぎる変質者ルックの男が前をはだけると、下には女性用の下着を身に着けたのみ。そのまま腰を振り、最後は局部を露出して追ひ駆けて来るのである、それは確かに怖からう。待子は待子で、下着や、出したゴミの泥棒に頭を悩ませてゐた。
 お気に入りの勝負下着を盗まれ一念発起した待子は、自らの手で取り戻すべく張り込みを開始する。ゴミ泥棒を捕まへてみたところ、近所の裕福な独居老人・滑川由彦(野上)であつた。
 酒井あずさが四十路を本当に越えてゐるのかゐないのかは微妙なところとして、何はともあれいい女だなあ。堪らん(>バカ)、芝居も自在。女優は他に林由美香一人のみのツートップ体制。林由美香は一幕限りの濡れ場とそれ以外の出番も殆どないのだが、岡田智宏もまあ兎も角、酒井あずさと名優野上正義の二人きりだけで、それ自体はどうといふこともない物語を飽きもさせずにしつかりと観させる。脚本も演出もやつゝけ仕事以上の何物でもありはしないのに、役者が映画をそれよりは明らかに一段上に押し上げてゐる。時にさういふこともある。
 滑川を捕らへた待子であつたが、逆にゴミから西島との浮気を嗅ぎ付けられ手が出せない。それから紙のゴミはシュレッダーにかけるやうになつた待子が、うつかり処分してしまつた一郎の重要書類を一緒に修復して貰つたことから、待子はもう勃たなくなつてしまつた滑川に身を任せる羽目になる。その時一度の約束であつたが、滑川のねちつこい愛撫が忘れられなくなつた待子は、間違へて捨ててしまつたお気に入りの下着を返して貰ふ条件にといふ形にして、再び滑川に抱かれる。もうこの辺りから展開としては完全にハチャメチャなのだが、まあ細かいことは気にするな。酒井あずさと野上正義との芳醇な遣り取りを楽しんでさへゐればそれでいい、としようではないか。滑川は、息子夫婦に引き取られることになる。待子と交す最後の情事。滑川は何の装飾もない、男物のブリーフに毛の生えたやうな無粋なパンティーを待子が着用することを希望する。何でこんなパンティーを、と待子が訝しむと、マジックを取り出した滑川、真つ白なパンティーの上から女陰をマジックでなぞると、いはゆるマン拓をパンティーに遺さうといふのである。岡輝男、ひよつとすると天才かも?   >絶対違へよ
 さうかうしてゐる内に奇跡の復活を遂げた滑川を、待子は受け入れる。

 オチは、露出狂は実は一郎でした、といふもの。どうでもいいが、新日本映像(=エクセス公式)の作品リストでも、それをトレースしただけなのかPG誌の新作ピンク映画紹介でも、滑川は団地住まひといふことになつてゐる。あれ、一軒家ぢやなかつたか?

 以下は再見時の付記< エンド・クレジットに跨る待子と一郎の濡れ場は、宜しくないことにキネコである。とはいへこの期に病もいよいよ膏肓に達したのか、最早エクセスキネコの画質すらもが、何やらそれはそれとしての味はひあるものにすら見えて来た。それは流石に、我ながら豪快に間違つてゐる。


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