真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
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福岡市在住のピンクス。ピンクスとは、ピンク映画愛好の士、を意味する造語である。
仮名遣ひは正仮名を使用。
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巨乳だらけ 渚の乳喧嘩
加藤義一
/
2017年07月05日
「
巨乳だらけ 渚の乳喧嘩
」(2016/制作:加藤映像工房/提供:オーピー映画/監督:加藤義一/脚本:後藤大輔/撮影監督:創優和/録音:小林徹哉/編集:有馬潜/音楽:與語一平/助監督:小関裕次郎/監督助手:菊嶌稔章/撮影助手:佐藤文男・酒村多緒/照明助手:広瀬寛巳/スチール:本田あきら/録音所:シネキャビン/仕上げ:東映ラボ・テック/出演:めぐり・福咲れん・あやなれい・小滝正大・可児正光・なかみつせいじ)。
早坂陽(めぐり)が全裸エプロンですき焼きの支度をしてゐると、漁師の夫・耕平(可児)が大漁を誇り帰宅。豪勢な夕食に今日は何の記念日だかんだと、まるで意味のない遣り取りを交しつつそのまゝ台所で突入する夫婦生活は、寝坊した陽の真鮮やかな夢オチ。食パンこそ咥へない程度に大慌てた陽が、玄関の鍵もかけずにチャリンコで出撃してタイトル・イン。ところでさりげなく左隅にKATO FILMSのロゴもカッコよく控へる、筆致が爆裂する大書タイトルの主は不明。
漁師要員のひろぽんやきくりんと挨拶を交した陽は、勤務先であるみやぎ漁業協同組合事務所に到着。ここで
背景に完全に同化する超絶の内トラぶり
を人知れず撃ち抜いた新田栄が加はれば、何かが完成してゐたのにと、訳の判らない感慨に駆られる。話を戻して、劇中“五年前”としか語られない大災に海上で見舞はれた耕平と死別―但し遺体は未発見―した陽の同僚は、事務所と同じ建物に寝起きする、この人も妹を喪つた石母田景樹(小滝)。パンティを見せるヒッチで石母田の法人車を拾つた福咲れん(ex.
大塚れん
)は、お礼と称して気軽に体を開く。ところでこの件、事後オシッコに車を離れた福咲れんは、見つけた蟹を石母田に渡すとルナと名乗りその場でサクッと一旦別れてゐるゆゑ、となると実は全然か少なくとも殆ど移動してゐない気がする。五年前と同じく、たまたま体育の日と被つた十月十日が、耕平の命日。この点は、2011年と―2016年にも―合致する。すき焼きを用意した供養に石母田を招いた目下一人暮らしの陽と、石母田が結ばれかけてゐると、高校時代、怪我でレスリングのインターハイを挫折した十年前に家出したきりの、ルナこと陽の妹・月子(福咲)が不意極まりなく帰宅する。
配役残り、清水大敬監督20周年記念作品「
巨乳水着未亡人 悩殺熟女の秘密の痴態
」(2016/主演:一条綺美香)以前の、友松直之2014年第二作「
緊縛絵師の甘美なる宴
」(脚本:百地優子/主演:小司あん)三番手を完全に忘れてゐたあやなれいは、ルナ―がリングネーム―の地下プロレス好敵手・セリーヌ改めコスモス。セリーヌの結構苛烈なラッシュを受け止めるフィジカルを地味に発揮するなかみつせいじは、コスモスと行動をともにする情夫・博巳、蝶ネクタイの扮装からするとリングアナか。
主演女優・脚本家とも四作ぶりの再会を果たした、加藤義一2016年第四作。暗黒の
若御大
時代を経て漏れなく
配偶者もついて来る空疎
に辿り着いた漂泊し倒す加藤義一が、久し振りに満足な脚本を得てマトモに戦へるのかと、思ひきや。そもそもめぐりと福咲れんを相手にいはゆる姉妹丼を達成する三角関係の要が、ウェットな中年チョンガーにしか見えない小滝正大といふのが画期的にか絶望的に感情移入なり呑み込み難い。端的にもう少し魅力的な男優部をつれて来て貰はぬでは、物語が画(ゑ)から成立してをらず、挽回する演出部の援護も特に見当たらない。ここは、戦線復帰第二戦となる小滝正大のナベシネマ2016年第二作「
めぐる快感 あの日の私とエッチして
」(脚本:山崎浩治/主演:星美りか)の前が、「
熟妻と愛人 絶妙すけべ舌
」(2012/監督・脚本:後藤大輔/主演:春日野結衣)につき、もしかすると後藤大輔の肝煎りなのかも。重ねて、小松公典によるデビュー十周年記念作「
どスケベ検査 ナース爆乳責め
」(2012/主演:あずみ恋・Hitomi)の如く、徹頭徹尾邪気がなく俗つぽいならばまだしも、如何にも後藤大輔風のペダンティックな薀蓄も、所詮加藤義一の柄ではない。前だ後ろだと他愛も性懲りもない一山幾らの人情ドラマを捏ね繰り回し、その癖途中までは―フィルム時代からすると―十分延びた尺を随分と持て余した割に、唐突さが爆裂するラストには唖然とするのも通り越して意表を突かれた。加藤義一を覆ふ重たい雲が、依然晴れない。確かに“巨乳だらけ”ではあるオッパイ祭り以外に唯一琴線に触れたのは、陽と石母田のとりあへずな締めの濡れ場と並走する、グダグダとトリプル・ノック・ダウンに至る“渚の乳喧嘩”の、寧ろさう思へばな古の巌流島感。無論、宮本武蔵と佐々木小次郎が対決した方ではない。
ひとつ理解出来ないのが、陽と耕平は兎も角、何で月子の姓も早坂なのかといふ件。どうせ両親もゐないから、陽が入る時に月子も早坂に入れて貰つたのか?耕平が入婿にしては、今は北海道に移つた義理の両親から、陽が籍を抜くよう促されたといふエピソードと齟齬する。
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