真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
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福岡市在住のピンクス。ピンクスとは、ピンク映画愛好の士、を意味する造語である。
仮名遣ひは正仮名を使用。
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ザ・ペッティング/DMM戦
新田栄
/
2016年07月28日
「
ザ・ペッティング
」(昭和61/製作:日本シネマ?/配給:新東宝映画/監督:新田栄/脚本:北里近一/製作:伊能竜/撮影:国立二郎/照明:鈴木伸夫/編集:酒井正次/助監督:半沢高弘/音楽:レイボーサウンド/効果:中村企画/録音:銀座サウンド/現像:ハイラボセンター)。
レイボーサウンド
の衝撃以前に、驚く勿れ、今作には出演者クレジットが存在しない。
新東宝ビデオ株式会社開巻、諸々のペッティング映像に速攻タイトル・イン。以降全員本篇字幕ママで杉田風(女子高生)登場、全篇を通して、声は聞かせど姿は絶対に見切れすらさせない新田栄が「可愛いね」と渾身の世辞をいふものの、正直一欠片たりとて可愛くはない。人の話を満足に聞いてゐるのかゐないのか、甚だ微妙な杉田風相手に他愛ないインタビューで結構尺を喰つた末に、漸く助監督の大坪君(ヒムセルフ?)投入。新田栄があれやこれや指示を飛ばす一戦に、ザクザク突入する。首から上は不細工な杉田風も、脱がせてみるとラック感のあるいいオッパイ。仁丹クンニの荒業と指とで、終に本番には至らぬまゝ杉田風が果ててフェード。
続いては上下併記で風見怜香(女優)と小野寺由美(女子大生)、まづは志村けんとジュリーを足して二で割つたやうな面相の小野寺由美にインタビュー。「ところでレズやつたことある?」とところでぶりが凄まじいザックリした切り口で、女優の風見怜香さん参戦。ここでは助監督の松尾君(ヒムセルフ??)に小野寺由美にバイブを挿入させてみたりしながら、パートを通り越し一作全体のハイライトが、風見怜香と小野寺由美によるオッパイの大きな女同士ド迫力の貝合はせ。
三番手にして、最強の美人が鈴木美子(O.L)。Officeだけでなく当然Ladyも略してゐるにも関らず、わざわざOにつけたピリオドがLにはつかないのがそこはかとなくも確実に居心地が悪い。鈴木美子は森の中に連れ出して、オナニーから大坪君に移行する青姦といふ寸法。一点さりげなく興味深いのが、彼氏と一度だけポルノ映画を観に行つた鈴木美子がその夜は激しかつたといふ逸話を引き出した新田栄いはく、「それがきつかけでこの映画に出る気になつたのかな?」。映画であることは、あくまで当然の前提として認めてゐる様子。
四番手五人目が今作どころか裸映画史に残る大ミステリー、小林ひとみ(SMクラブ勤務)。は?小林ひとみ!?といふか現れた女は目と目の間が広いプロポーションも別に十人並の女で、よもやまさか万が一、整形前といふ可能性も脳裏を過りつつ、そもそも声も違ふ。挙句に背には一面の立派な和彫り、
一体この小林ひとみは誰なんだ
。とまれ、趣向は大坪君と松尾君を二人とも差し向けての巴戦。
新田栄昭和61年第十二作は十作後、翌昭和62年第二作の「
ザ・ペッティング2 秘戯
」・第十二作「ザ・ペッティング3 ハードテクニック」・
最終第二十二作
「ザ・ペッティング4 舌戯」と全四作連なる、「ザ・ペッティング」シリーズ“ファースト・ワン”こと第一作。第十二作の十作後が翌年第二作といふことは、新田栄は昭和61年も全今となつては驚異の二十作を発表してゐた格好となり、量産型娯楽映画が本当にどうかした勢ひで量産されてゐた時代の眩さに、とりあへずクラクラ来る。シリーズの沿革に話を戻すと少なくとも2の「秘戯」にも出演者クレジットはなく、jmdbを参考に、鈴木美子は栄えある皆勤賞を果たしてゐる。「ハードテクニック」と「舌戯」も叶ふならば全然観るなり見たいけれど、この期に今からどうにかなるもんなんかいな。
「ザ・ペッティング」なる、それは一通り絡む中でペッティングは確かにあらうにせよ、ペッティングにヒューチャーして何がどうなるのかはサッパリ判らない掴み処に欠けるタイトルはこの際さて措き、全体的な体裁としては各々職業の異なる女々に新田栄が適当にインタビューした上で、一濡れ場こなしてハイ次の女。らしからうとらしからぬと物語が全く存在しない構成のみの一篇は、手を抜くにも度が過ぎたのか、グルッと一周して逆に斬新なのかは―もしも仮に存在するとして―議論の分かれようところとはいへ、謎の小林ひとみといふ飛び道具込みで、五人中オッパイの大きな女を四人揃へた厚みのある強みと、寄つたり引いたり狙つてみたり、それなり以上に意欲的に動くカメラにも支へられ、案外退屈な時間に苦痛を覚えるでもなく普通に見てゐられる。とりわけ、ビニールシートを敷きオナニーする鈴木美子を、少し離れて捉へる覗き風の視点が、グルーッと大きく回り込む画はオープンの特性を活かしたダイナミックな名カット。一方、あるいは反面、殊に杉田風相手の心許ないことこの上ない遣り取りを聞くにつけ、物語のみならず一体脚本は何処まで存在してゐるのかといふ疑問は、最終的に残らぬでもない。
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