ヌルボ・イルボ    韓国文化の海へ

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[韓国語] 「この映画、シンパ的だな」とはどんな意味?

2015-07-14 22:51:14 | 韓国語あれこれ
 10日に観た韓国映画「傷だらけのふたり」は思っていた以上に良かったです。主人公の借金取り立て屋テイル(ファン・ジョンミン)は病院にまで行って昏睡状態の債務者から借金を取り立てようとしますが、そこで看病する債務者の娘ホジョン(ハン・ヘジン)に出会って一目惚れして・・・という純愛物なんですが、ラストの方なんかもう涙でぐしゃぐしゃ・になっちゃいました、・・・ということはないんですけど、女性観客が100人いたら20人くらいはそんな状態になるかも。(ヌルボが行った映画館の観客は10人弱だったし、反応は確認できませんでした。)
 <映画生活>の評点やレビューはいかにと→コチラを見てみると、採点者数3人レビュー者数1人で少なすぎ! これも<もっと大勢の人に観てほしい韓国映画リスト>に登載です。
 で、本家韓国のファンの感想はどうだったんだろう?と<DAUM映画>で見てみました。(→コチラ。)
 するとやっぱりネチズン979人の評点平均は8.0の高ポイントで、8.0~10.0の評点がズラッと並んでいます。しかしその中にも5.0以下の低い点もチラホラ。
 そんな低い点のついたレビューを見ていくと、いくつものレビューで共通して使われている言葉があることに気づきます。
  ・典型的な신파、それでも生きている俳優たちの演技(6.0)
  ・あまりに신파的で後半の評点はよくないかもね。(3.0)
  ・いつもこんなヤクザロマンスの最後は신파だよね!(4.0)

 そして辛口映画評論家パク・ピョンシク(박평식)氏も原題「男が愛する時」をもじって
  신파が過ぎる時
と書いてます。
 中には高い点をつけている人のレビューにも・・・。
  ・ファン・ジョンミン氏はやっぱりステキな俳優だわ~ たしかに신파だけど熱演のおかげで楽しめた~(9.0)
  ・正攻法で表現した신파メロ。(8.0)

 ・・・と、まあこんな感じ。
 この신파(シンパ)という言葉、お気づきの方も多いと思いますが、元はといえば「新派」なんですね。あの芝居の・・・。
 で、とりあえずこの신파の意味はというと「お涙頂戴の通俗的なメロドラマといった感じです。
 Google翻訳で신파と入力して変換すると、まず「メロドラマ」という言葉が出てきます。
 しかし、メロドラマという言葉自体には否定的なニュアンスはあまりないと思いますが、上掲のような使用例を見ると「신파ムという言葉が映画の感想・評価について用いられる時はほとんど否定的な意味が込められています。
 したがって、「良い映画」についてこの言葉を使用する時にはたとえば次のようにします。
[국제시장] 리뷰: 부모 세대와 함께 볼수 있는 '좋은 신파' 영화
([国際市場】レビュー:親の世代と一緒に見られる「良い新派」映画]
 <MovieRising>というサイトにあった記事(→コチラ)です。

 しかし、このように元はまごうかたなき日本語なのに、「たくあん」「弁当」等々数多くの韓国社会に定着していた日本語由来の言葉のように固有語への言い換え対象になっていないのはなぜなのでしょうね?
 国立国語院の「標準国語大辞典」で「신파」を引いても日本のことは何も書かれてなく、「신파극」(新派劇)はと見てみると「1910年代から1940年代までわが国で流行した演劇形態。わが国の情緒に合っていない日本の新派劇を模倣したりもしたが、漸次固有の大衆的情緒を主とするようになった。」とあります。「日本から流入した」と表現せず、韓国の独自性を強調しているようで、そこらあたりが言い換え語の対象にならない理由になっているようですね。いや、もしかしたらこの便利な言葉を言い換えの対象にしないための方便かな?
 
 ところで、日本国内での新派の演目の映画化作品を思い起こしてみると・・・、溝口健二監督「滝の白糸」(1933)なんてよかったなー。あ、それから何といっても成瀬巳喜男監督「鶴八鶴次郎」(1938)! 21歳(?)とは思えない山田五十鈴が魅力的だし、物語も泣かせるし・・・。・・・とみてみると、私ヌルボ、<新派>とはけっこう相性がいいのかもしれません。

 以下、韓国の1910年代から現代に至る新派劇と新派映画の歴史についても書き始めたのですが、長くなりすぎるのでとりあえずここでひとくぎり。

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