ヌルボ・イルボ    韓国文化の海へ

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韓国で人気の小説 韓国の作品は約2割

2009-10-06 23:42:34 | 韓国の小説・詩・エッセイ
韓国のベストセラー小説分析(1)

      *** 日本は2割、他の外国が4割を占める ***

 教保文庫のサイト内の週刊ベストセラー[小説部門]のリストを参考に、韓国で読まれている小説について分析してみました。

      
 現在、韓国のベストセラー第1・2位には村上春樹「1Q84」の上下巻が並んでいます。
 続いて今年の大ベストセラーとなった申京淑「オンマをお願い」。今も3位を保っているのは驚きです。4位はキム・ピョラの「ミシル」(ドラマ「善徳女王」の主人公)、5位は<新世代作家>キム・ヨンスの「世界の果て 彼女」、6位は「孤将」の金薫の新作「公無渡河」、7位に孔枝泳「るつぼ」、8位は例の「ムクゲノ花ガ咲キマシタ」で知られる金辰明の「千年の禁書」と韓国作家の小説が続きますが、以下は総じて外国の小説が目につきます。

 1~100位までを≪韓国≫≪日本≫≪他の外国≫でわけると、次のような数になりました。
※上下巻(orそれ以上)に分かれている作品の場合は1作品として数えたので、作品の合計数は100にはなりません

≪韓国≫ 作家数=23人  作品数=30
≪日本≫ 作家数=10人  作品数=17
≪他の外国≫ 作家数=22人  作品数=29

 上からおよそ4割・2割・4割という比率になります。

 次にその内訳を見てみましょう。

≪日本≫の作家・作品は以下の通りです。( )内の数字は順位です。複数巻の場合はすべての順位を列記しました。

・村上春樹・・・・「1Q84」(1)(2)、「ノルウェイの森」(18)、「海辺のカフカ」(39)(51)
・東野圭吾・・・・「白夜行」(9)(10)(12)、「容疑者Xの献身」(46)、「幻夜」(93)
・吉本ばなな・・・・「虹」(30)
・奥田英朗・・・・「空中ブランコ」(48)
・荻原浩・・・・「四度目の氷河期」(59)
・江國香織・・・・「左岸」(73)(80)、「冷静と情熱の間<〈ROSSO>」(97)
・鎌池和馬・・・・「とある魔術の禁書目録」(75)
・辻仁成・・・・「右岸」(78)(91)、「冷静と情熱の間<〈BLUE>」(79)
・竹宮ゆゆこ・・・・「Tora×Dora」(84)
・宮部みゆき・・・・「模倣犯」(95)

 どうですか? どんな作家が読まれているか、およそ傾向がつかめるのでは?

 一言で言えば、軽めの小説が多いですね。話題の作家村上春樹も<深い>けど<軽い>ですからね。
 ここらへんの分析は次回に回します。

      *** <ラノベ>は韓国語になっている! ***

 鎌池和馬(かまちかずま)や竹宮ゆゆこの名は、年配の皆さんにはあまり知られていないのでは?
 高校生を中心に人気の<ラノベ>の作家で、電撃文庫を中心に活躍しています。

 <ラノベ>というのはライトノベル>の略語です。で、<ライトノベル>はというと、「表紙や挿絵にアニメ調のイラストを多用している若年層向けの娯楽小説」で、学園モノ・恋愛モノ・異星界ファンタジー等々いろんなジャンルがあります。

 ちょい前にはヤマグチノボル「ゼロの使い魔」もランクインしてましたね。全部電撃文庫。読書慣れしてる人なら1分間に5ページは楽に読めますよ。

 韓国のサイトを見たら、すでに韓国でも<라노베(ラノベ)>はフツーの言葉になってるようでしたね。
 そして「ラノベは文学的価値があるか?」とか日本と同様の問題提起もあったりして・・・。

      *** ヴェルベールやミュッソはなぜ韓国で読まれる? ***

 ≪他の外国≫は、韓国と日本ではかなり違いがあると思います。
 28人中、2作品以上が入っている作家とその作品をあげてみましょう。

・ベルナール・ヴェルベール・・・・「神」(13)(14)(19)(25)(26)(28)(68)、「タナトノート」(54)(60)、「天使たちの帝国」(85)(90)
・パウロ・コエーリョ・・・・「勝者は自分だ」(29)(31)、「錬金術師」(44)、「ベロニカは死ぬことにした」(98)
・アラン・ド・ボトン・・・・「なぜ私はあなたを愛するか」(37)、「われわれは愛なのか」(64)
・ギヨーム・ミュッソ・・・・「助けて」(53)、「あなた、そこにいてください」(66)
・カレード・ホセイニ・・・・「君のためなら千回でも」(67)、「千個のまばゆい太陽」(82)

 この中で日本の文学ファンに名前がよく知られているのはコエーリョくらいのものではないでしょうか? 「錬金術師」をはじめけっこう読まれているようですが、韓国ではそれ以上でしょう。

 フランスの作家ベルナール・ヴェルベールは、韓国では突出して売れている作家ですね。「蟻」以来出す本すべてがヒットしています。「蟻」は韓仏合作映画の話はその後どうなっているのかな?
 「蟻」は日本でも文庫本になったりもしてましたが、とくに話題にならないまま消えてしまいました。私ヌルボは最初少し読んだだけでツンドクになってます。

  アラン・ド・ボトンは、さるサイトでは<モンテーニュ風の哲学エッセイ>とありました。日本でもそれなりに訳されてはいるようですね。認知度はどんなもんでしょうね。

 ギヨーム・ミュッソが読まれるのも韓国なればこそ。次々に訳され、愛読されているようです。映画にしても、韓国の人たちは日本よりはるかにフランス好きですね。(日本人のフランス離れが進んだ、と言えるかも・・・。) ミュッソは1974年生まれの作家で、2004年「エ アプレ…」(日本未訳)が大ベストセラーになり、各国語に訳されましたが、日本では「時空を超えて」(小学館文庫)の一作だけ。この違いはなんでしょうか?

 カレード・ホセイニはアフガニスタンからアメリカに亡命した外交官の息子。1970年代のアフガニスタンを子供を中心に描いた「君のためなら千回でも」は映画化され、昨年日本でも公開されました。

      *** 新しいタイプの韓国作家も登場してきた ***

 韓国人作家で複数の作品が100位以内に入っている作家は5人です。

・金衍洙(キム・ヨンス)・・・・「世界の果て 彼女」(5)、「散歩するものたちの5つの楽しみ」(90)
・金薫(キム・フン)・・・・「公無渡河」(6)、「南漢山城」(36)、「刀の歌」(邦題は「孤将」)(40)
・朴玟奎(パク・ミンギュ)・・・・「死せる王女のためのパヴァーヌ」(20)、「黄順元文学賞受賞作品集」(50)、「カステラ」(65)
・孔枝泳・・・・「るつぼ」(7)、「楽しいわが家」(72)
・チョン・ウングォル・・・・「成均館儒生たちの日々」(16)(17)、「奎章閣閣臣たちの日々」(22)(24)

 金薫が李舜臣を描いた小説「刀の歌」(邦題は「孤将」)は先に紹介しました。
 孔枝泳は386世代を代表する人気作家です。「るつぼ」も紹介しました。

 韓国最高の文学賞は李箱(イ・サン)文学賞。今年の受賞作がキム・ヨンスの「散歩する者たちの5つの楽しみ」でした。
 パク・ミンギュも2007年李孝石文学賞を受賞した、若い世代に人気の作家です。
 チョン・ウングォルの「成均館儒生たちの日々」は男装女性の愛を描いたロマンス小説。ドラマ化したんですか?

 全体として見ると、韓国の文芸評論家等が韓国作品の少なさを嘆く気持ちもわかります。今回は約4割でしたが、3割程度の時もあります。

 次回は、なぜ韓国の小説があまり読まれないか、その背景について考えてみます。

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2 コメント

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Unknown (あまぐり)
2009-10-07 20:16:36
ギョーム ミョッソの文庫が小学館から11月に出るようです。
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Re:ギヨーム・ミュッソ (ヌルボ)
2009-10-09 01:46:36
「時空を超えて」が好評だったのでしょうか? ヌルボは未読ですが、アマゾンを見ると、「スゴイのひと言!」に続けて「愛と友情のスゴイお話しで、読みながら終わらないでほしいとずっと思っていた。終わりでは、のどがこわばってしまい、涙が滝のように流れるし、自分でもほんとに心配になった」という大感動レビューがありましたが・・・。
 小学館文庫は宣伝がヘタなんですかねー? あまりこれといった印象がないんですが・・・。(○○がウリとか・・・)
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