ヌルボ・イルボ    韓国文化の海へ

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韓国内の映画 NAVER映画とシネ21の人気順位 と 週末の興行成績 [5月20日(金)~5月22日(日)]

2016-05-24 20:10:14 | 韓国内の映画の人気ランク&興行成績
 直前の2つの記事→コチラコチラも韓国映画関連の記事で、<多角的に見る韓国映画「暗殺」と題したシリーズの1&2回目です。「暗殺」に直接関係ないことをいろいろ書いています。目を通していただければ幸いです。

 第69回カンヌ国際映画祭は22日(現地時間)にコンペティション部門授賞式が開かれました。受賞結果一覧は→コチラで見られます。パルム・ドールはケン・ローチ監督「I, DANIEL BLAKE」が受賞しましたが、全体的に記者・評論家たちの評価・予想と相反する結果になったということが話題になっているようです。
 なお、1つ前の記事でも少しふれたように、注目の韓国映画パク・チャヌク監督「アガシ(お嬢さん)」は受賞できませんでした。

 先週18日にシネマヴェーラ渋谷と実に久しぶりの早稲田松竹をハシゴして「風の中の子供」(1937)と、「ひつじ村の兄弟」&「独裁者と小さな孫」の2本立ての計3本を鑑賞。で、一番共感を覚えたのが「風の中の子供」。外から近所の子供が「○○ちゃん、遊ぼ~」と呼ぶと家の中から「あ~と~で~」と答える、そんな光景は私ヌルボの小学生時代(1950年代頃)にもまだ見られました。今の子供たちが観たらどんな感想を持つのでしょうね? 今は映画館に行かなくても、またDVDを借りたりしなくても、戦前の名作映画はほとんど( ?)YouTubeで観られるようになっているのですね。この作品も動画検索すればすぐヒットします。

 「朝鮮日報」の「封切映画 ぴったり10字評」は先週掲載されませんでした。

           ★★★ NAVERの人気順位(5月24日現在上映中映画) ★★★

①(2) 東柱[ドンジュ](韓国)  9.40
②(1) ズートピア  9.39
③(-) ショーシャンクの空に  9.39
④(4) ライフ・イズ・ビューティフル  9.37
⑤(5) 鬼郷(韓国)  9.19
⑥(-) シング・ストリート 未来へのうた  9.16
⑦(-)シーモアさんと、大人のための人生入門  9.15
⑧(3) 私の少女時代 Our Times  9.13
⑨(6) ムーラン・ルージュ  9.12
⑩(7) 太陽の下  9.05

 ③と⑥の2作品が新登場です。
 ③「ショーシャンクの空に」はもちろん1994年公開の名作の再上映。いい映画でしたねー。今その「トリビア21選」という記事(→コチラ)を見たらひとつも知らなかった(笑)。韓国題は「쇼생크 탈출(ショーシャンク脱出)」。←ネタバレ的タイトルでいいのかっ!
 ⑥「シング・ストリート 未来へのうた」については後述します。

           ★★★ シネ21 専門家の平均得点順位 ★★★

①(1) キャロル  9.00
②(3) ライフ・イズ・ビューティフル  8.40
③(2) 哭声(韓国)  8.31
④(4) スポットライト 世紀のスクープ  8.00
④(4) ブルックリン  8.00
⑥(7) ビートルズがやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ!  7.60
⑦(8) さざなみ  7.50
⑦(8) クラン  7.50
⑨(-) シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ  7.45
⑩(-) 東柱[ドンジュ](韓国)  7.33
⑩(-) シーモアさんと、大人のための人生入門  7.33

 順位の変動や入れ替わりはありましたが、新登場の作品はありません。

         ★★★ 韓国内の映画 週末の興行成績5月20日(金)~5月22日(日)] ★★★

         「哭声」が早くも400万人を超える
【全体】
順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・・・・週末観客動員数・・・累計観客動員数・・・累積収入・・・上映館数
1(1)・・哭声(韓国)・・・・・・・・・・・・・・・5/12・・・・・・・・・・1,333,848・・・・・・・・・4,540,619 ・・・・・・・・37,182 ・・・・・・1,391
2(21)・・アングリーバード・・・・・・・・5/19 ・・・・・・・・・・・248,153・・・・・・・・・・・259,860 ・・・・・・・・・2,005・・・・・・・・658
3(2)・・シビル・ウォー ・・・・・・・・・・・4/27・・・・・・・・・・・・182,666・・・・・・・・・8,553,372 ・・・・・・・・71,703・・・・・・・・517
        /キャプテン・アメリカ
4(99)・・ケチュンばあさん(韓国)・・5/19 ・・・・・・・・・・・168,774・・・・・・・・・・212,616 ・・・・・・・・・1,666 ・・・・・・・・525
5(62)・・シング・ストリート 未来へのうた・・5/19 ・・・・136,694・・・・・・・・・・171,427 ・・・・・・・・・1,438 ・・・・・・・・492
6(3)・・探偵洪吉童:消えた村(韓国)・・5/04・・・・・・・・・82,963・・・・・・・・・1,381,061・・・・・・・・・11,145・・・・・・・・374
7(7)・・私の少女時代 Our Times・・・5/12 ・・・・・・・・・・82,686・・・・・・・・・・・181,145 ・・・・・・・・・1,512 ・・・・・・・・201
8(新)・・ハードコア・ヘンリー・・・・・・5/19・・・・・・・・・・・・22,871・・・・・・・・・・・・37,771・・・・・・・・・・・331 ・・・・・・・・234
9(5)・・劇場版 アンニョン、チャドゥ(韓国)・・5/04・・・・・・9,551・・・・・・・・・・・275,396 ・・・・・・・・・2,102 ・・・・・・・・110
10(新)・・特別捜査:死刑囚の手紙(韓国)・・6/16・・・・・8,174・・・・・・・・・・・・12,164 ・・・・・・・・・・・・98・・・・・・・・・・25
     ※KOFIC(韓国映画振興委員会)による。順位の( )は前週の順位。累積収入の単位は100万ウォン。

 「哭声(コクソン)」が早くも400万人を突破。今年に入ってのトップはこれまでは「検事外伝」の969万人がダントツでしたが、はたしてそれに届くかあるいは追い越すか、今後に注目。
 新登場は2・4・5・8・10位の5作品です。
 2位「アングリーバード」は、仏・米合作の3Dアニメ。世界で人気もモバイルゲームのキャラクター、というのは知っていても、ゲーム自体はヌルボは知りません。主人公で怒りんぼうのレッドたちがいじわるなピッグたちに盗まれた大切な“たまご“を取り返すために大冒険を繰り広げるお話のようです。韓国題は「앵그리버드 더 무비」。日本公開は10月1日、ってなんでそんなに遅いの !?
 4位「ケチュンばあさん」は、原題は「계춘할망(ケチュン・ハルマン)」。「할망(ハルマン)」というのは標準語「ハルモニ」(おばあさん)の済州島の方言。済州島といえば「あまちゃん」や無形文化遺産関連でニュースでも報じられたりした韓国の海女(ヘニョ)の本拠地。ケチュンばあさんもその1人なんですが、演じる女優が大ベテランのユン・ヨジョン「先生」。物語はというと、6歳の時ソウルでいなくなってしまった孫娘ヘジ(キム・ゴウン)がなんと12年ぶりに戻ってきたのですが、そのようすが何かヘンというか、秘密を抱えているようで・・・。それは一体、・・・と観客の関心を引くのですが、決してミステリーとかではなく、なんか涙腺を緩みっぱなしにさせる感動作のようですよ。
 5位「シング・ストリート 未来へのうた」は、アイルランド・アメリカ・イギリス合作のドラマ&ロマンス。「はじまりのうた」等のジョン・カーニー監督自身の半自伝的ドラマ。14歳の少年コナーを中心に1980年代のダブリンでバンド活動に熱中する少年たち描く・・・ということで、デュラン・デュランやザ・クラッシュ等々当時のヒット曲が満載のようです。原題は「싱 스트리트」。日本公開は7月9日です。
 8位「ハードコア・ヘンリー」は、アメリカ・ロシア合作のSFアクション。アクションといっても、「全編一人称視点アクション」という点が画期的なんだそうです。→コチラでその一部を動画で見ることができますが、要するに「まるでFPSゲームやアクションスターになったかのような臨場感が楽しめる」とのことです。パッと画面が真っ暗になったとおもったら閻魔大王が表われたりして・・・ってことはないか。(笑) 物語は、死からよみがえった主人公のヘンリーが、サイボーグみたいになってさらわれた妻を救い出すべく敵と戦う、ということのようです。韓国題は「하드코어 헨리」。日本公開は未定、かな?
 10位「特別捜査:死刑囚の手紙」は、韓国の犯罪ドラマ。ピルジェ(キム・ミョンミン)は元は模範的警察、今ではよく売れるブローカー(弁護士事務長?)になっていて、切れることのない事件の依頼に「神が下したブローカー」との異名もあります。その彼に ある日、監獄の死刑囚から疑問の手紙が1通届きます。手紙の主は、世間を震撼させた仁川の財閥・大海製鉄夫人殺人事件の犯人スンテ(キム・サンホ)。スンテは、無実の自分の無念を訴えます。ピルジェが探れば探るほど現われてきたのは巨大背後勢力の実体。彼はますます大きくなる事件の背後にあるものを直感します・・・。原題は「특별수사: 사형수의 편지」。

【多様性映画】
順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・・・・・・週末観客動員数・・・・累計観客動員数・・・・累積収入・・・上映館数
1(27)・・シング・ストリート 未来へのうた・・5/19・・・・・・・・・・・・・136,694・・・・・・・・・・・171,427 ・・・・・・・・・・・1,438 ・・・・・・・・492
2(1)・・私の少女時代・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5/12・・・・・・・・・・・・・・82,686・・・・・・・・・・・181,145 ・・・・・・・・・・・1,512 ・・・・・・・・201
3(新)・・繕い裁つ人(日本) ・・・・・・・・・・・・・・5/19・・・・・・・・・・・・・・・1,806・・・・・・・・・・・・・2,677 ・・・・・・・・・・・・・・20 ・・・・・・・・・31
4(4)・・さざなみ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5/05・・・・・・・・・・・・・・・1,383・・・・・・・・・・・・20,451 ・・・・・・・・・・・・・160 ・・・・・・・・・22
5(3)・・ダイノX探検隊(韓国)・・・・・・・・・・・・・5/04・・・・・・・・・・・・・・・1,080・・・・・・・・・・・・82,740 ・・・・・・・・・・・・・638・・・・・・・・・・12

 1・3位の2作品が新登場です。
 1位の「シング・ストリート 未来へのうた」については上述しました。
 3位の「繕い裁つ人」は、私ヌルボ、どうしようかなと思いつつ未見のまま。6月末に目黒シネマで上映か、うーむ・・・。韓国題は「미나미 양장점의 비밀(南洋装店の秘密)」です。

多角的に見る韓国映画「暗殺」(ネタバレほとんどナシ) ②昨年来日本統治期を背景とした作品が増えている

2016-05-24 09:11:54 | 韓国映画(&その他の映画)
 → ①<進歩系>映画と<保守系>映画

 昨年(2015年)から日本の統治期を背景にした韓国映画が目立っています。韓国メディアでも、昨年5月に「中央日報(日本語版)」(→コチラ)、7月に「ハンギョレ(日本語版)」(→コチラ)がそのことを記事で取り上げました。
 具体的には、次のような作品です。※[ ]は韓国での公開月

[6月]
「京城学校:消えた少女たち」(イ・ヘヨン監督)・・・・1938年京城近郊の寄宿女学校。生徒が一人二人と異常な症状を見せ、そして痕跡もなく消え始める、というミステリー&ホラー。
[7月]
「暗殺」(チェ・ドンフン監督)・・・・独立運動組織メンバーによる「親日派」暗殺計画。
[12月]
「大虎」(パク・フンジョン監督)・・・・1920年代、日本軍高官(大杉漣)の意を受けた最後の朝鮮虎狩猟作戦と往年の名猟師の物話。

 上記の新聞記事は、「日帝強制占領期を背景にした映画は失敗する」という忠武路(映画街)の昔からの俗説をこれらの作品は打破できるか、という点に注目していました。結果はというと、「京城学校:消えた少女たち」の観客動員数は35万人と惨敗。「大虎」は158万人でしたが、チェ・ミンシクを主演に据え、純制作費140億ウォンを投じたことを考えれば期待を大きく裏切る結果となりました。その点「暗殺」は韓国映画歴代5位(→コチラ参照)の180億ウォンという巨額純制作費をかけましたが、損益分岐点の600万人を大きく上回る1270万人動員という大ヒットを達成しました。

 上記のような日本統治期関係の作品公開の背景としては、2015年が1945年の「光復」から70年目の節目に当たるということもあったでしょう。
 しかし、今年(2016年)に入っても、次のような1920~40年代を背景にした作品が相次いで公開されています。

[2月]
「東柱」(イ・ジュンイク監督)・・・・ 28歳で短い生涯を終えた詩人尹東柱(ユン・ドンジュ)の人生をほぼ事実に沿って描く。(一部「誇張」や「独自解釈」もありますが・・・。観客動員数は現在115万人で、興行的にも成功。(私ヌルボも観ましたが、良い作品だと思います。)
「鬼郷」・・・・1943年14歳の時「連行」されていった少女たち。「実話」を基に作られたという話題の「慰安婦」映画。観客動員数300万人をを超えるヒット(現在352万人)となったことはニュースとして報じられました。

[4月]
「解語花(ヘオファ)」(パク・フンシク監督)・・・・タイトルは「言葉がわかる花」の意味で、つまりは妓生のこと。1940年代の妓生養成所の券番で一緒に成長した2人の妓生の歌にかける人生と愛。ハン・ヒョジュチョン・ウヒの共演という点は個人的には惹かれますが、観客動員数45万人で興行的には失敗作。

[6月]
「アガシ」(パク・チャヌク監督)・・・・サラ・ウォーターズの歴史ミステリー「荊の城」の翻案。幼い頃父母を亡くした貴族(日本人)のアガシ(お嬢様)と朝鮮人の下女の話。先日終わったカンヌ国際映画祭のコンペティション部門で上映され、関係の情報がいろいろ流されていました。その中で、監督が「日本に魅せられた人たちの心理を描いた」と語ったとのこと。(→コチラ参照。) 「反日じゃないですよ」と言いたいのか?とか日本におべっかを使っている?とか勘ぐらず、そのまま受けとめてよさそうです。
 ※この作品の原作(創元推理文庫)はホントにおもしろいです! 未読の方ぜひ読んでみて下さい。(前作の「半身」も。)

[公開日未定]
「密偵」(キム・ジウン監督)・・・・抗日武装団体(「テロ」組織)義烈団が素材。おっ、ソン・ガンホが主演か。
「徳恵翁主」(ホ・ジノ監督)・・・・コチラはソン・イェジンパク・ヘイルが主演。高宗の王女で、旧対馬藩主・宗家の当主宗武志伯爵の夫人となった徳恵翁主(トクヘオンジュ)の悲運の人生を描く。
「鳳梧洞(ポンオドン)戦闘」(キム・ハンミン監督)・・・・鳳梧洞は中国吉林省の地名。1920年の洪範図(ホン・ボムド)将軍が率いる独立軍が日本軍を打ち破った戦闘を描く。
「ハルビン」(ヤン・ユノ監督)・・・・ 伊藤博文を狙撃した安重根の人生を描く。

 ・・・うーむ、こうして見ると、やっぱりほとんどが「悪辣な日帝」と関係ありといってよさそう。大虎が主役(?)の「大虎」も、「京城学校:消えた少女たち」も、日本統治の横暴なこととか「闇の部分」とかが描かれていたりとか? そうじゃなさそうなのは「解語花」くらいかな? 「アガシ」もまあそれほど関係なさそう?(しかし・・・)

 さて、上記のように日本の統治期という時代設定の韓国映画がなぜこのところ目立って増えているのか?ということなのですが、実はここまでの記事はその「本論」の前書きのつもりで書き始めたものなのです。しかしすでに長くなりすぎたのでここでひと区切りつけて、その「本論」は続きで、ということにします。

 → ③韓国では、日本統治期の見方が変わりつつある(?)
 → ④判別がむずかしい<史実>と<虚構>の間
 → ⑤韓国でようやく知られ始めた金元鳳(キム・ウォンボン)と義烈団
 → ⑥「日本軍により3469人が殺された事件」というのは何だ?