元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「教祖誕生」

2007-10-21 21:44:09 | 映画の感想(か行)
 93年作品。ふとしたことからインチキ臭い新興宗教の一員に加わることになった少年(萩原聖人)が、組織内のゴタゴタから教祖が追い出されたのをきっかけに、ある日突然新しい教祖に任命されてしまうという、ブラックな風刺ドラマ。原作はビートたけしで、監督は「その男、凶暴にて」からずっと北野武監督のサポートについていた天間敏広(これがデビュー作)。

 物語は実にわかりやすく進む。教団の実権を握っている男(ビートたけし)は、宗教を金儲けの手段としか見ていない。相棒(岸辺一徳)と二人でサギ同然の布教活動を切り盛りする。教祖は元浮浪者のジイさんだが、“教祖なんて飾り物だよ”と主張してはばからない。ここで作者は新興宗教の、いや、世の中に存在する宗教すべては、ウサン臭さで成り立っている、と皮肉を利かせている。それに対し、信心深い教団のスタッフの一人(玉置浩二)と、教祖に仕立て上げられたことでいきなり“宗教”に目覚めてしまった主人公のマジな言動は、宗教の純粋さを描き出しているのだろう。

 この二つのスタンスは相反するにもかかわらず、作者の中に同居していることは明白で、そのディレンマを何とか説明しようとする姿勢がうかがえる。さらに、映画の最後近くになってくると、悪どい二人は糾弾される。つまりバチが当たるのである。罪を犯すことによって初めて“天罰が下った”と認識する。

 生臭い稼業をやっている(?)作者は神の存在なんて考えたこともないと思っている。宗教なんてゼニ儲けの手段じゃないか、と冷笑的になったりもする。だがしかし、ふとした瞬間に“神”を意識したりもする。ひょっとして宗教には人間の能力の限界を超えるような、すごい力があって、その上に存在する神とは底知れぬものではないか? そういう率直な作者の心情の吐露が見てとれる。非常に明快。誰が観てもわかる映画だ。

 しかし、それが作品の物足りなさにもつながっている。個性豊かなキャストと、ギャグを散りばめたストーリー展開は飽きさせないが、観たあとは印象が薄い。意外性はまったくないといってよい。少しもゾクゾクしないのだ。

 これはやはり北野武自身が監督すべきだった映画だと思う。「ソナチネ」での生死観を超える、人間の“神性”に迫った、スゴイ映画になる・・・・かもしれないが、ひとりよがりの失敗作になる可能性も大きい。それでも観たかった。ラスト、あれだけのトラブルを引き起こしながら、平然とまた新しい教団をデッチ上げるたけしの姿に、“やっぱオレじゃないと注目作は撮れないぜ”というふてぶてしさを感じたのは果たして私だけだろうか。
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