元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

フォルクスワーゲンのup!を試乗した。

2013-01-28 06:46:40 | その他
 コンパクトカーの購入を検討しており、近頃は週末には各ディーラーに足を運んでいるが、今回特別に外車に乗ってみた。フォルクスワーゲンの新作のup!である。

 up!の排気量は1000CC。フォルクスワーゲンのエントリーモデルである。どうして試乗する気になったのかというと、車両価格が低く抑えられているからだ。一番下のモデルは150万円程度。もちろんオプション等を加えれば実売価格は200万円に達するが、同社の製品にしては安価であることには間違いない。

 ただし、それでも国産車に比べれば値が張ることは事実。実際に乗ってみて、もしもその価格差を跳ね返すほどの魅力をこの車に見出せないのならば、早々にディーラーを後にするつもりだった。ところが、up!のドアを開けてエンジンを掛けた瞬間、そんな及び腰の姿勢は吹っ飛んでしまった(試乗したのはラインナップ上位のHigh up!である)。



 これは同排気量のミラージュはもちろん、デミオやフィット等とは別の次元に属する車だ。まずボティの剛性感が強く印象づけられる。ドア周りはもちろん、全体に渡ってガッシリと作られている。筐体が頑丈ならば安定した走りも期待出来るが、事実、走行時には微塵の乱れも見せずにスクエアに路面をキャッチする。特にステアリングの直進走行感の良さには舌を巻いた。

 もっとも、舗装状態の良くない道では弾みが目立つが、これはこのクラスの車で言えばup!に限った話ではない。それどころか、国産コンパクトカーよりも道路からの突き上げは上手く処理されていると思う。

 ハンドリングはスムーズそのもので、最小回転半径もミラージュほどではないにしろ、十分に小回りの利く車である。狭い道での対向車とのすれ違いも怖くない。3気筒エンジンとしてはそれほどチープなサウンドも出さず、ドライブフィールは上質感がある。

 さらに感心したのが内装だ。ダッシュボード周りはプラスティック主体でそんなに金は掛かっていないはずだが、実にセンスが良い。シートのホールド感は上々で、特に座面の全長が大きいのはポイントが高い。これからば長時間のドライブも疲労度が低いだろう。

 内寸はフィット等よりも確実に小さいはずなのに、あまり圧迫感を覚えることはない。大げさに表現すれば、中型セダンに乗っているような感覚さえある(笑)。パッケージングの巧みさは国産コンパクトカーの追随を許さないレベルにあると言えよう。小さい車なので収納は期待出来ないが、それでもトランクのアレンジは気が利いている。



 このようにクォリティの高い車ではあるが、まったく評価しないユーザーも少なからずいることは想像できる。まず、この自動車にはCVTのようなポピュラーなトランスミッションは採用されていない。代わりにASGと呼ばれるセミATが付けられていて、これを扱うにはアクセル操作にコツが要る。しかも、クリープ機能は無い。

 正直、乗る前は私もそのあたりが気になっていて、扱い辛いシステムならば即刻に購入対象候補から外そうかと思っていた。ところが、実際試乗してみるとそれほど気難しいシロモノではない。マニュアルのトランスミッションの応用形だと思えば、それほど違和感は無く走れる。ただし、オートマ限定で免許を取った者にとっては実に使いにくいだろう。

 そして、この車のリアウインドウは開かない。ヒンジ形式で隙間は空けられるが、はめ殺しに近いと言える。運転席から助手席のパワーウインドウは操作できない。スマートキーは設定されておらず、オートエアコンもない。オプションのカーナビはショボく、しかも装着すると空調の吹き出しを妨害する形になる。さらには方向指示器のスイッチの位置が、国産車とは反対の左側にある。

 ガソリンはハイオク限定。後部座席は2人のみで、3人乗せることは考慮されていない。屋根のアンテナは不必要に長く、ショートアンテナは別売りになる。ミラー自動格納機能やオートライトも付いていない。これらの装備が“欠陥”だと感じるドライバーは頭からこの車を否定するだろう。しかし、国産コンパクトカーとは一線を画する堅牢感とフットワークの軽さは、それらの“欠陥”を補って余りある・・・・と思う消費者もいるはずだ。

 国産コンパクトカーや、売値が200万円にも届くような軽自動車の上級機種の購入を検討していて、なおかつ今まであまり輸入車に接したことの無いユーザーには、是非とも試乗してみることを強くお奨めしたい。たとえ乗ってみた結果が“ダメだった”ということになっても、国産車とは異なるコンセプトの商品を知ることは、決して無駄な経験にはならないはずだ。

 かく言う私も、現時点ではこの車の導入を決定したわけではない。今後財布の中身と相談しつつ、買うのを断念することもあり得る。しかしハッキリと言えることは、今まで車の運転にあまり楽しさを感じたことがない私がもしもup!を入手できれば、生活のパターンがほんの少し変わるかもしれないということだ。“必要なとき以外は車に乗らない”というスタンスが改まり、楽しみのために車を転がすことが多くなるだろう。週末の過ごし方も、映画館に足を運ぶよりもドライブに繰り出すことが増えるのかもしれない(笑)。

コメント (2)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 国産のコンパクトカーを試乗... | トップ | 「東京家族」 »
最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
UP!について (ししまる)
2013-01-28 17:59:19
大変詳しい試乗記をありがとうございました。UP!は特にASGが気になっていたので、どんなものか参考になりました。後席の窓が開かないとか、ウィンカーとか、使い勝手がいまいちということですね。日本人はデザインや乗り味よりも、生活の具として、使い勝手を優先しがちですので、装備や使い勝手を取るか、車自体の魅力を取るかみたいですね。なかなか帯に短したすきに長しですね。

私が他に気になっているのは、フィアットのパンダと、シトロエンのC3です。シトロエンは別に興味は無かったのですが、この前スーパーの駐車場にすばらしく艶っぽい丸みを持ったお尻の外車を見ました。しばらく周りをぐるぐる回って、飽きずに見てしまいました。なんとも色気のあるかわいいデザインでした。帰ってから記憶を頼りにネットで調べると、シトロエンC3の旧型であることを知りました。それでさっそく現在のシトロエンのラインナップを調べると、今のC3も結構いけてました。それで今はひそかにシトロエンもいいなぁ・・と思っているしだいです。

とにかく、外車(ヨーロッパ車)は、なんとも言えない色気があるので好きです。でも、同じぐらいの重さの日本車に比べてあまりにも高いので、手が出ません。若いころは、プジョー205GTIがあこがれでした。あの赤い内装もしゃれてて好きでした。もっと、外車も安くなって、手に入れやすくなり、もう少し日本でのシェアが上がれば、危機感を感じた日本の車もデザインが良くなるのではないかと思います。
返信する
またまたコメントありがとうございます。 (元・副会長)
2013-01-29 07:00:21
欧州車は高いですね。up!の試乗の後、嫁御は買う気満々になっていましたが(笑)、何日か経って予算のことに考えが及んだのか、今は冷静(?)になっています。

しかし、つくづく思うのは、どうして日本車にこのモデルのようなコンセプトの製品が無いのだろうかということです。up!にはシティ・エマージェンシーブレーキと呼ばれる低速域での追突軽減ブレーキが全車に標準装備されています。さらに横滑り防止装置も全車に標準で付いています。ミラージュや日産のノートが規制前の間隙を突くように未搭載で発売されたのに比べると、このメーカーの安全に対する見識が窺えます。

フィアットのコンパクトカーは、取引先の女社長が買い物用に使っていますが、曰く「外観と内装のキュートさは、多少の使い勝手の悪さも許してしまえる」とのことで、お気に入りのようです。

以前パリに行った時、乗ったタクシーがシトロエン製でした。業務用モデルながら内装はセンスが良かったですね。

ともあれ、前までは「日本にはいくつも自動車のメーカーがあるのに、どうしてあえて外車に乗る者がいるのだろうか」などとアホなことを無意識的に考えてきたフシがありましたが(爆)、今回のup!の試乗でその理由が少し分かったことだけでも収穫でした。

それでは、今後ともどうかよろしくお願いします。
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

その他」カテゴリの最新記事