元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「マンチェスター・バイ・ザ・シー」

2017-05-29 06:25:00 | 映画の感想(ま行)

 (原題:MANCHESTER BY THE SEA )全然面白くない。何より、感情移入出来るキャラクターが皆無であるのが痛い。加えて、ストーリーも演出も実に低レベル。映画自体がさっぱり盛り上がらず、観ている間は眠気との戦いに終始した。第89回アカデミー賞では2冠に輝いているが、ハッキリ言ってノミネートすら疑問に思える出来だ。

 ボストン郊外でアパートの便利屋として働くリー・チャンドラーは、仕事は的確にこなすが無愛想で誰とも打ち解けない。半分地下室のような部屋で一人暮らしだ。ある日、故郷のマンチェスター州マンチェスター・バイ・ザ・シーに住む兄のジョーが心筋梗塞で倒れたことを電話で知る。リーは車を飛ばして病院に到着するが、すでにジョーは息を引き取っていた。

 医師や友人のジョージと共に今後の身の振り方を考えるリーだが、一番の問題はジョーの16歳の息子パトリックの処遇である。リーは弁護士から、兄の遺言書にパトリックの後見人として指名されていたことを聞かされて驚く。弁護士はリーにこの町に移り住んでほしいと告げるが、彼には故郷を捨てなければならなかった辛い過去があったのだ。

 自らの過失で悲劇を呼び込み、ヨソの街に逃げて捨て鉢な生活を送っているリーにはまったく同情できない。最初から最後まで、ずっとダメ人間のままだ。もちろん“ダメな奴を描いてはイケナイ”という決まりは無く、そこに映画的な興趣が盛り込まれていれば文句は出ないのだが、本作の主人公はただ“漫然と”ダメであり、その有り様をこれまた“漫然と”追っているに過ぎないのだ。

 パトリックも“ダメなティーンエイジャー”でしかなく、父親が死んだのに友人と遊び呆けているという理解不能の行動を取った挙げ句に、リーとの関係もナアナアで終わらせてしまう。生前のジョーや、リーの元妻、及び他の連中の扱いもいい加減で、一体何を考えているのか分からない。

 この愉快ならざる状態を昂進させるのが、過去の出来事を遠慮会釈無く挿入してくる演出法だ。唐突な時制の変化は場合によっては効果的であることは承知しているが、本作においてはタイミングが掴めておらず、観ていて鬱陶しいだけである。この監督(ケネス・ロナーガン)の腕は三流だ。

 本作でオスカーを獲得したケイシー・アフレックのパフォーマンスは大して良いとは思わない。まあ“普通の演技”だろう。ミシェル・ウィリアムズやカイル・チャンドラー、ルーカス・ヘッジズ、C・J・ウィルソンら他のキャストも精彩を欠く。良かったのはジョディ・リー・ライプスのカメラによる清涼な映像と、クラシックを多用した音楽だけであった。

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