きまぐれナンシー

趣味のハナシや日々のことなど、きまぐれ更新中です。

突然、ブログ小説。

2007-08-23 23:58:14 | 乙女。
空気を吐き出すような、少し間の抜けたような音を立てながら、扉が閉まってゆく。

これで終わりにしたくなかったから、最終バスを乗り過ごした。
貴方はそんな私を見て慌てながら
「バカ、何しよっとやって!乗れって帰れんやろ!!」
そんなに怒らなくたって。帰りたくないからこんな事してるに決まってるじゃない。
貴方を少しでも困らせたい。


バスが発った後には二人だけ、気まずい空気が流れた。
「大丈夫、今日はばあちゃん家だからちょっと近いの」
ああ。
こんな事しといて、何言い訳がましいフォローしてるんだろう。ていうか乗り過ごした理由にもなってない。
馬鹿だ私。

貴方が大きく溜息をついた。
「…チャリ持ってくるから、後ろ乗れ」


夜の真っ黒いエーテルの中に、時々差し込む自動車の光が眩しい。
久しぶりに、貴方の自転車の後ろで風を切ってる。
両手を置いてる貴方の肩は、少し骨張っていて、相変わらず温かい。
「…バカっ!」貴方が自転車を漕ぎながら、少し怒って吐き捨てる。
「すいません…」とかまたしても殊勝な事を言いながら、
おでこを背中にぶつけてみた。あったかい。
体温は変わらないのに、どうしてこの人の中身だけこんなに違ってしまったんだろう。

俯いたまま、涙が出そうになった。


途中コンビニで、送ってもらったお礼のジュース(確か炭酸だった)を買って、あっという間に目的地の近くに着いた。
「…少し話す?」
何処まで優しいんだろう、この人は。
また、傷口からなにかが溢れ出す。

今から一ヶ月と4日前、付き合い初めてからは一ヶ月とちょうど二週間のあの日、
何の前触れもなく貴方から別れを告げられた。
足元に突然穴が開いて落っこちるってこの事か、と思う出来事。

同時に私の四肢はすっぱり切り落とされて、その傷口からは、注ぐ対象がいなくなった思いが溢れ出した。
どの小説にも書いてなかったし、誰にも聞いた事がなかった出来事。
都市伝説に登場する「達磨」みたいなからだになった私は今も、真っ暗い谷底で涙と溢れて止まらない何かに塗れながら、必死にもがいてる。
もしかしてこの谷底から貴方が救ってくれるんじゃないかなんて、在りもしない願いを掛けながら。

在りもしない事だって、判っているのに、それでもその言葉に縋る惨めな自分。
結局、近くの路地裏で何の生産性もない話をした。何を話したかはよく覚えていない。
只、いつも通り右側に座っていた貴方の膝をずっと握ってた事は覚えてる。
泣かないようにしていたけど、結局堪えきれずに顔を伏せて少しだけ泣いたかも知れない。
その時に、一度だけ名前を呼んでくれた気がした。

別れ際に、まだ好きな頬に軽く
ぺちん、
とてのひらを当てた。
あ。先月より頬がこけてる。大学大変なのかな。思わずそのまま撫でてしまいそうになる。
「…優し過ぎでしょ?後悔するよ」
ああ。
どうしてこの人は、こんなに柔らかい目を向けてくれるのに、私の事を好きではないと云うんだろう。
優しいのはあんたじゃん。後悔するって何の事なのかしら。
一瞬そう思ったけど、お言葉に甘えてもう一発お見舞いした。
ばちん。
躊躇っていたのか、当たり処が良くなかった。
「ごめん大丈夫?痛かったでしょ?!」
思わず口をついて出る。
こうなったら、徹底的に貴方に優しくしてあげる。怒ってなんかあげない。
派手なビンタがなくて、後悔するのは貴方なんでしょ。

軽く私の伸ばす手を制して、貴方は右手を差し出した。

「握手」

友人に聞いた事がある。男が女に別れを切り出して、「円満に解決する」為に差し出す手段だって。
貴方の髪を撫でて指を絡ませていた手を、政治家のように形式的に友好的に差し出して握手する。

「ありがとう。元気でね。」
物分かりの良いフリ。これくらいしか言えない。醜い何かは曝せない。
そのまま踵を返して、わざとヒールを大きく鳴らしながら走って帰った。
この音を耳に焼き付けて、少しでもあたしを憶えてて。
あたし以上に貴方を好きになる子なんていないんだから、後悔するといい。
あたしだってもう、貴方以上に好きになる人はきっと現れない。

よくあるお話、失恋の風景。

私はあれから恋をした記憶がない。




…宗ちゃすへ。
例の件こんな感じー(笑)以上、羞恥プレイ上等でした。

恋語り。

2006-12-14 00:45:25 | 乙女。
昔話を。

この指輪、大学生時代に付き合っていた人との思い出の指輪です。

別に買ってもらったとかそういうものじゃなくて、
初めて二人で遊びに行った時私が自分で買ったもの。

デザインが普通に気に入ってるのもあって、
まだ捨て切れないんですよね。
あの時はまだ付き合ってなかったなとか
でも付き合うきっかけになったのもこの指輪だったなとか、
見る度に何となく思い出します。

確か税込1365か1575位の、高くもないけど
貧乏学生には思い切った買い物でした。
前々からアクセ屋さんでデザイン可愛くて目を付けてたもので。

見せたら「…お姫様になりたいの?」とか笑いながら言われた事、
でも付けた私に似合うと褒めてくれた事。

実習帰りにどうしても会いたくなって呼び出して、
「今日に限って実習で指輪してないんだよね…いつもは毎日してるんだけど」
とか、確信犯的にアピールして告白させるに至った事。

なまじ自分で買ってるが為に、左手薬指には結局付けなかった事。

お揃いではないけれど、これとよく似合うネックレスを買ってくれた事。

ポケットに入れてそのままにしてたら、形が崩れて泣きそうになる位焦った事。

安物だからすぐにメッキがはげてしまって、それを二人で眺めた事。

その時は、確かもう別れた後でした。

今でもまだ何となく思い出すんですよね。


元気にしてるかな。