8月24日の日経新聞のコラム、風見鶏に面白い記事がありました。リンクは冒頭部分しか読めないので、全文を掲載すると…
風見鶏(特別編集委員伊奈久喜)→リンク
「過去に目を閉ざす者は結局のところ現在にも盲目となります」(永井清彦訳、以下同じ)
1985年5月8日、ドイツの敗戦40周年にあたり、ワイツゼッカー西独大統領(当時)が連邦議会で演説した。そのなかの有名な一節である。
安倍晋三首相は、来年8月15日に戦後70年にちなむ談話を発表する。首相周辺は「未来志向の内容にしたい」と語る。全体の内容にもよるが、未来に目を向ければ、ワイツゼッカー演説を引用して「過去に目を閉ざすな」とする批判が予想される。
ワイツゼッカー演説とは何だったのか。日経テレコンで検索すると、朝日と日経で85年5月9日付にボン発の記事があった。演説の引用部分を紹介する。
「大統領は『われわれすべてが過去を受け入れなければならない』として、ナチスに対するドイツ人の責任を説いた」(朝日)
「『五月八日は人々をナチスの暴虐から解放した日だ』と述べるとともに、ドイツの若い世代に『他の民族を憎んだり敵視したりせず、仲よく共存していくことを学んでほしい』と呼びかけた」(日経)
あの一節はない。
「過去に目を閉ざす者は現在に盲目となる」を日本のメディアで最初に見出しにしたのは、調べた限りでは、演説全文を掲載した岩波書店の雑誌「世界」85年11月号である。同年11月3日付朝日新聞のコラムもそれに触れている。
岩波書店は、86年2月には演説全文を掲載したブックレットを出版した。新旧版を合わせ、これまでに21万部売れている。91年には訳者の永井氏による単行本「ヴァイツゼッカー演説の精神」も出版され、冒頭の文章にあの一節がある。
あの一節が有名になるのはこのあたりからだろう。それは韓国の記者が歴史認識をめぐって日本を批判する際にも使われてきた。例えば朝鮮日報の金昌坤記者は、これを引用して「大統領の言葉は、初めから日本社会に空虚なこだまとして響いたのかもしれません」(96年8月23日付南日本新聞)と書いた。
当時のボン特派員たちはなぜ書かなかったのか。
旧版岩波ブックレットの表紙をめくった所にヒントがあった。コール西独首相がレーガン米大統領らとともに、ビットブルク墓地を訪れた写真である。
ナチス親衛隊(SS)の戦死者も埋葬されているために当時、世界中から非難された墓参だが、ワイツゼッカーはレーガンに謝意を述べた。演説は墓参の3日後だ。それを知る特派員があの一節を引用しなかったのは不思議ではない。
当時の状況は忘れられ、あの一節は残った。演説は過去への謝罪を説いた、と歴史に刻まれた。
しかし思想史研究者でもある有馬龍夫元ドイツ大使は自らのオーラルヒストリーで「演説に謝罪あるいはそれに類する表現は見当たりません」と述べる。有馬氏は演説中の次の2点に注目する。
「民族全体に罪がある、もしくは無罪である、というようなことはありません。罪といい無罪といい、集団的ではなく個人的なものであります」
「今日の人口の大部分はあの当時子供だったか、まだ生まれてもいませんでした。この人たちは自分が手をくだしてはいない行為に対して自らの罪を告白することはできません」
日本の政治家が語ったら「妄言」と批判されるかもしれぬ内容である。
ワイツゼッカー演説は半ば「神話」になった。神話は史実とは違う。
記事にあるように、ワイツゼッカー演説は韓国政府や韓国のマスコミのお気に入りで、引用されるのは常に「過去に目を閉ざす者は現在に盲目となる」の部分です。
この部分が最初は注目されておらず、岩波のブックレットと朝日の報道がきっかけで有名になったということを初めて知りました。
ワイツゼッカー演説の欺瞞性については、右派論客の西尾幹二氏が、『異なる悲劇-日本とドイツ』(文藝春秋、1994)の中で夙に指摘していました。
西尾氏はこの中で
「日本の朝鮮半島に対する賠償が不十分であるのを論ずる際に、ドイツ人のユダヤ人に対する賠償額を引き合いに出す不見識はさらに論外である。朝鮮半島の植民地化は1910年、第一次世界大戦前に始まった。比較するならイギリスのインド支配、フランスのインドシナ支配、オランダのインドネシア支配と比較すべきである。」
と指摘しています。この点、私も同感です。
なお、西尾氏は敵が多いので、この本も刊行時、論争の対象となりました。ネットには、こんな反論がありました(→リンク)。
私は西尾氏の著書のほうに分が有ると思いますが、感じ方は人それぞれでしょう。
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実は、天皇を盾に保身を図るエスタブリッシュメントが透けて見えそうだねえ。
http://www.nids.go.jp/publication/senshi/pdf/200303/10.pdf
ロナルド・レーガン「たとえこれら若者がドイツの制服を着ていたとしても、徴兵により従軍させられ、ナチスの憎むべき願望のために戦っていたに過ぎない、ナチズムの犠牲者であり、彼らの墓地を訪問することは何ら間違っていない。彼らは、まさに強制収容所の犠牲者と同様に、ナチズムの犠牲者である。」
一日も早く、かの「神社」に巣食う一部の悪魔を放逐し、世界中の人が静かに祈る場に戻れると良いですね。