犬鍋のヨロマル漫談

ヨロマルとは韓国語で諸言語の意。日本語、韓国語、英語、ロシア語などの言葉と酒・食・歴史にまつわるエッセー。

李朝衰退の理由

2009-07-01 23:50:41 | 近現代史
 李朝はなぜ滅んだのか。
 これまで模範解答とされていたのは,韓永愚(ハン・ヨンウ)教授の「善良な主人」論だ。李朝の文化とモラルは美しい宝石にも似たものであり,李朝の文民政治はすでに西欧の近代民主主義とかわらない水準に達していた。このような「善良な主人」の国に,ある日「凶暴な盗賊」が乱入してきた。日本である。盗賊に対して戦うのは,武を重視する野蛮人たちがやることである。
 李朝はあまりに善良だったため,凶暴な外敵を防ぐことができなかった。

(李栄薫著『大韓民国の物語』より)

 李栄薫氏によれば,李朝滅亡の理由は多岐にわたるが,重要なものは次のとおり。

 まず環境破壊

 人口増加とともに,開墾とオンドル需要のために木を伐採したため山林が荒廃し,19世紀末には大部分の山野がはげ山になっていた。そのため少しの雨で洪水が発生し,土砂が田畑を埋め,農業生産が減少する。18世紀中葉に比べ,19世紀末は土地の生産性がほぼ3分の1になっていた。
 ところが税金は下がらなかったため,各地で一揆が発生した。李朝にはそれを抑えるだけの政治力がなかった。

 もう一つは,近代思想を受け入れ,自国の変化につなげる柔軟性に欠けていたこと。李朝が依拠していた「性理学」と「華夷秩序」では,強大な近代思想の衝撃に対抗できなかった。

 20世紀の韓国は,中華文明圏から西欧文明圏へ,儒教文明圏からキリスト教文明圏へ,大陸農耕文明から海上通商文明圏へという世界史の一大転換期にあった。ところが韓国は,いたずらに旧来の国家観,国家秩序に固執するのみで,旧思想を解体するような知性の創造的変化に失敗した。

 一方,日本はそれに成功し,その転換を韓国に強要してきた。もともと同じ文明圏に属していたはずの日本,島国の夷狄と軽んじていた日本によって西欧思想が押しつけられたため,韓国のプライドはおおいに傷ついた。

 李栄薫教授は「善良な主人」論の文化的な民族主義とは,このような心の傷を癒そうとする自慰行為にすぎない,と断じる。

 私が読んだ韓国の教科書には,韓国にはげ山が多いのは日本が乱伐したせいであり,それが解放後の植林政策により,回復しつつあると書いてありました。でも,日本は一方で森林を伐採しつつ,一方では積極的に植林したんですね。切ったのと植えたので,どちらが多いかはよくわかりませんが。

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2 コメント

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アカシア (Cru)
2009-07-05 00:37:33
ニセアカシア(ハリセンジュ)だったかな?
統治時代(強占期?)に日本が植林した樹種。
成長が速いので土壌保全と保水力の回復に即効性があるので植林したとか。
で、それが換金性が乏しい樹種だったのでニッテイの陰謀であると言われているがそれは間違いであると主張している韓国のサイトを見た事があります。
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ニセアカシア (犬鍋)
2009-07-08 01:23:49
ウィキってみたところ,
①痩せた土地でもよく育ち,生育が早い。
②加工しにくい。
③薪炭材に使える。
という特徴があるようです。
①は,はげ山緑化,治山目的にはよさそう。②は,韓国の家は基本的に石造りで建材として使えなくてもよいので致命的ではない。③オンドル用に適している。

ただ,
「高木化するため薄い土壌の斜面に植樹すると、極めて倒れやすい」
という特徴もあるようで,これは朝鮮半島に不利な気がします。
朝鮮半島は全体的に表土が薄い(岩盤が露出している)。それがスギを植林できなかった理由(スギは根が真下に長く伸びるので,朝鮮半島では育たない)でもあったのですが,ニセアカシアも風でよく倒れたのかもしれません。
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