犬鍋のヨロマル漫談

ヨロマルとは韓国語で諸言語の意。日本語、韓国語、英語、ロシア語などの言葉と酒・食・歴史にまつわるエッセー。

犬鍋を囲む会~千里香

2007-12-10 00:02:49 | 日々の暮らし(帰任以後、~2015.4)
 夏に帰任してから何かと忙しくて,昔の友達に会いそびれていました。

 年末も近づいたことだし,忘年会をやろう,ということになり,私の後輩が「犬鍋を囲む会」を企画してくれました。

 最初は,いつもの飲み仲間3~4人でということだったのですが,いろいろ連絡をとるうちに,前の会社に同僚たちに次々と連絡がつき,結局8人集まることになりました。
 場所は私に一任されたので,迷わず新大久保の延辺(ヨンビョン)料理,「チョンニヒャン(千里香)」に決定。

 7時に予約をして,早めに着いたのでセットされた席で待っていると,見知らぬ団体さんが私の席に通される。

(なんだなんだ?)

 店の人に聞くと,

「えっ? 犬鍋さんの予約は5時でしょう?」

「そんな。7時ですよ」

(そういえば,携帯に5時10分に着信があった…)

 結局,手違いで予約がとれていないことが判明。押し問答の末,地下の席に通された。しかも,8人なのに6人席。

 しかたなくそこで待っていると,階段を降りてくる人がいる。

 まず下半身が現れ,顔の下半分が見えたとき,

「よっ! 久しぶり」

「おお。…」

 しかしそのあとの言葉が続きませんでした。顔の上半分(というか頭部)が劇的な変貌を遂げていたからです。

「そ,そんなになっちゃったんだ…」

「えっ? あ,これね」

 A氏はきまり悪そうに頭をなでる。

「もう無駄な抵抗はしないことにしたんだ。なりゆきまかせで」

(たしかに潔い…)

 次々になつかしい顔が表れます。
 仕事で遅れると言っていた同じ会社のT氏もやってきた。

 7人中3人は前の会社を辞めたあとも定期的に飲んでいましたが,それでも最後の飲み会のは4年ぐらい前。中には,私が前の会社を辞めて以来,実に17年ぶりに見る顔もあります。

 まずM氏
 テニスの達人なのですが,ある日足の指先に変調をおぼえ,検査の結果腫瘍であることが判明。指を切断しましたが,幸い良性だった。それを機会に,医療関係の会社に転身。
 彼は,私の滞韓中,遊びに来てくれた唯一の友達です。

 そして前述のA氏
 会社の業績にかげりが出るや,教職を目指すなどといっていち早く退社し,その実,完全な競合他社に転職した。頭部の惨状は,その報いかもしれません。
 高校大学時代は卓球少年で,子どもの名前にも「卓」の字を入れたのに,子どもは意に反して野球少年になり,今は地域の少年野球チームの監督を引き受けているお人好しでもあります。

 その次に辞めたのが私でした。
 その数カ月後,私の口利きで,関連会社に転職してきた一年後輩のT氏。彼の場合,量は十分なのですが,白くなるのが早かった。もし染めていなければ真っ白だということです。

 会社がはっきりと傾いてきたとき,スポーツ新聞社に転職したT氏(その2)。彼もずいぶん薄くなったなあ。

 S氏は,5年ぐらい前でしょうか,突然韓国に電話をくれた。「退職して職探しをしているんだけれども,どこかあてはないか」と。残念ながら役に立てませんでしたが,今は,老舗出版社に勤務しているとのことです。

 そして,T氏(その3)は二年後輩。
 17年ぶりに会うのに,ほとんど変わっていません。もと高校球児で会社のソフトボールチームの主力選手。今は独立して,奥さんといっしょにフリーランサーです。

 一時間ほど遅れて,最後にやって来たのがZ氏
 社長のコネで入社した手前,会社に見切りをつけることができず,統廃合を繰り返す中我慢して働き続けている,義理堅いやつです。

 この年代の男たちが久しぶりに再会すると,話はどうしても髪の毛のことになります。

「最近,量だけじゃなく太さも細くなってきたんだよなあ」

「あ,おれもそれを感じる」

 話はほかの毛にも及びます。

「この前,鼻毛に白髪を見つけてショック受けたよ」

「おれは耳毛が生えてきた」

 いやはや,中年男性の会話です。

 会わない間に,タバコをやめたなんていう裏切り者が出ていなかったのも嬉しい。

 さて,メニューはやはり羊の串焼延辺風が中心。
 豆腐(を細く切って干したもの)のサラダに,空心菜のニンニク炒め,そしてカムジャタン(豚の背骨とジャガイモの煮込み)。これはケンニプ(エゴマの葉)のかわりに春菊が入っているのがやや不満でしたが…。

 満州に住む朝鮮族の料理だけあって,韓国料理と中国料理のチャンポンです。さりげなく香皮串も人数分頼む。

「なんだこりゃ? やけに脂っこいな」

 全員が食べたのを見計らって種明かしをします。

「それ,犬の皮だよ」

「ゲッ」

 今日は「犬鍋を囲む会」ですから,補身湯(犬鍋)を頼まないわけにはいかない。満州風のあっさりした味です。
 これも最初は何の鍋かを伏せて,全員に食べさせました。

 酒はもちろんチャミスル。輸出用でやや味が違うのと,高い(1200円!)のは我慢しなければなりますまい。

 前の会社の人々の話,いまの仕事のこと,子どものこと…。

 話は尽きないのですが,料理と酒が尽きたところで,われわれは立ち上がりました。

「さて,イチャロ カジャ(二次会に行こう)。今日はとことん飲むぞ!!」

(つづく)

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