弁理士の日々

特許事務所で働く弁理士が、日常を語ります。

平成22年新司法試験合格発表

2010-09-11 10:39:13 | 弁理士
法務省が公表した新司法試験合格者の大学別統計(pdf)を、例によって(昨年一昨年3年前)エクセルファイルに組み替えてみました。以下に4年分を示します。
2010年エクセルファイル
2009年エクセルファイル
2008年エクセルファイル
2007年エクセルファイル

このうち、2010年エクセルファイルは、5シートで構成されています。
第1~第3シートは、本年の結果について、法務省のpdfファイルから取り込み、合格者数の多い学校順に並べ替えたものです。
次の第4、第5シートは、複数年次の対比を行ったものです。
第4シート(4年間の比較)を見てください。
総合の合格率は、
平成19年 40.2%
平成20年 33.0%、
平成21年 27.6%
平成22年 25.4%
と一直線に下がり続けています。

次に第5シート(卒業年別・4年間の比較)に移りましょう。このデータのみイメージで下に示します。

法務省発表データには、法科大学院の卒業年次別のデータが入っています。このデータについて、平成18~22年の対比しました。タイトル行に「1年前」「2年前」等々の文字が入っています。これは、今年(平成22年試験)であれば、平成21年度(平成22年3月卒業)を1年前、平成20年度卒業を2年前と表示したものです。

「受験者数割合 %」に表示されている数値は、各年別に、合計受験者数に占める該当年次の受験者数の比率です。
「合格率 %」に表示されている数値は、各年別に、該当年次の人のみで算出した合格率です。

平成21(去年)と平成22(今年)の比較をしてみましょう。
「1年前」の「合計」では平成21も平成22も同じ35.0%で差がありません。「2年間」「3年前」では、むしろ平成22の方が平成21よりも高い合格率です。それにもかかわらず、「計」では平成21の27.6%に対して平成22が25.4%と合格率が下がっているのは、要するに合格率の低い「4年前」「5年前」の受験者数割合が増大し、逆に合格率の高い「1年前」の受験者数割合が減っているからです。

次に、「既修」「未修」を対比すると、「1年前」~「3年前」のいずれも、未修の合格率が既修に比較して著しく悪いことが明らかです。

毎年の新司法試験合格者数は、だいたい2000人強で落ち着いてきましたね。司法制度改革での目標3000人には遠く及びません。
新司法試験受験者の合格率はどの程度になるのでしょうか。実は毎年の法科大学院修了人数がわからないので、合格率計算の上での分母が不明です。一つだけ文科省のサイトで資料(pdf)を見つけました。古い資料ですが、19ページによると、修了者の数が平成18年度4415名、19年度4910名となっています。一声、法科大学院修了者数を「4500人/年」とし、司法試験合格者数を「2000人/年」とすると、合格率は約45%となります。

同じ資料4ページによると、法科大学院入学者数は平成20年度で5397名となっていました。また資料1ページには法科大学院の志願倍率が年度順に記載されています。H16:13.0倍, H17:7.2倍, H18:6.9倍, H19:7.8倍, H20:6.8倍ということで、平成16年度入学者の志願倍率が際だって高いです。この人たちの司法試験受験は、平成18既修(1年前)、平成19未修(1年前)、既修(2年前)となり、データを観るとこの人たちの司法試験合格率は他の年次と比較してたしかに高いです。

新司法試験合格者人数は、今後目標の3000人に向かって上昇するのでしょうか。上昇する機運は全くありません。
第1に、現在の合格者2000人レベルでも、もう就職先が不足しています。去年までは何とか弁護士事務所が新人を受け入れていたようですが、とうとう満杯になり、今年1月に司法修習を終えた人たちから就職戦線は特に厳しくなっているようです。
第2に、司法修習の修了試験不合格者が多発しています。毎日新聞 2010年8月24日によると、「今回が2、3度目の受験となる修習生は75人で、うち16人がまた不合格となった」ということです。3回受けて不合格だったらアウトです。
第3に、私が法科大学院の今後で書いたように、昨年9月21日朝日記事には「実際、関東地方の大学院で教える弁護士は『法律知識以前に、日本語の読み書きに問題がある学生が相当数いる。絶対に受からないと思いながら教え、進級させている。どんなに改革を進めても合格者は2千人程度が上限ではないか。』と明かす。」との記載があります。
このような状況下で、法務省が新司法試験のボーダーを下げて合格者数を増大させるとはとても思えません。

大学卒業後に大変な思いをして法科大学院に入学し卒業しても、最高3回まで受けられる新司法試験で最終的に合格するのはそのうちの45%程度であり、新司法試験に合格しても司法修習の卒業試験をクリアできない可能性があります。法科大学院が2~3年、司法試験受験が1~3年、その時点でそれまでの努力が水泡に帰すわけですから、当人たちにとっては本当につらい人生です。
コメント (1)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 明日は郵便不正事件判決 | トップ | 郵便不正事件~地裁判決を受けて »
最新の画像もっと見る

1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
法科専門大学院 (赤裸々な発言)
2010-09-22 22:59:43
夏に予備校主宰の法科大学院の説明会に参加しました
どんな学生が新司法試験を目指しているのか

※賢い顔が少ない印象(笑)
まあ日本語が怪しいはわかりませんけどね
返信する

コメントを投稿

弁理士」カテゴリの最新記事