弁理士の日々

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新司法試験合格発表

2007-09-22 12:45:23 | 弁理士
平成19(2007)年9月13日、本年度の新司法試験の合格発表がありました。新司法試験としては昨年度に続いて第2回です。
      合計  既修  未修
受験者数 4607  2642  1965
合格者数 1851  1216  635
合格率% 40.2  46.0  32.3

ここで既修とは、大学院2年コースで、主に法学部卒業者が進学します。未修とは、大学院3年コースで、非法学部(と法学部)卒業者が進学します。しかし今年の受験生で見ると、未修コースに占める法学部卒業者の割合は半分以上を占めています。

第2回となる今年は、既修コースについては去年に続いて2回目、未修コースについては1回目の試験になります。

新司法試験受験資格は、法科大学院の卒業生であって、3回まで受験できます。

ですから今年の試験については、既修コースは去年の卒業生(で去年合格しなかった人)と今年の卒業生、未修コースについては今年の卒業生のみ、と原則なっているはずです。

合格発表の後の話題としては、
(1) 合格率が去年(48%)より落ちた
(2) やはり未修コース合格率(32.3%)は既修合格率(46.0%)より低い
(3) このままいくと、最終的に合格率はどんなレベルに落ち着くのだろうか
といったところでしょうか。

法務省のホームページに、法科大学院別合格者数(pdf)が挙がっています。これに合格率を加え、さらに合格者の多い順に並べ替えたエクセルファイルを作りました。こちら(エクセル)です。

また、出願状況がこちら(pdf)です。この資料は、おそらく今年3月のロースクール修了前に出されたもので、「修了者 1076人」が去年終了した既修コース、「修了見込み者 4325人」が今年修了した人(未修と既修の合計)でしょう。受験回数別の志願者数も載っています。

一方、文部科学省が出している法科大学院に関する情報によると、「平成18年度現在、全国で74校(国立23校、公立2校、私立49校、総定員5,825人)が開校しています」とあります。

総定員5,825人に対し、今年修了して今年出願した人の人数が4325人というのはずいぶん少ないです。


さて、今年の合格状況を示す数字から、何が読み取れるでしょうか。

(1) 合格率(40.2%)が去年(48%)より落ちた。
合格者数はおそらく法務省がコントロールしていると思います。一方受験者数は、今年ロースクールを修了した人に加え、去年ロースクールを修了して2回目(及び1回目)受験の人が加わるわけですから、合格者数が増えない限り、合格率は落ちることとなります。
下の(2) の影響も加わるでしょう。
去年の受験生が特に有利だった(自分たち以外の先輩が受験していない)ということはあり得ます。

(2) やはり未修コース合格率(32.3%)は既修合格率(46.0%)より低い。
いくつもの要因が考えられます。
ロースクルーの実態を聞いてみると、既修の人が学部(法学部)で2~3年かけて学んだ法律知識を、未修の人はロースクールの最初の1年で追いつかなければなりません。そして未修の2年生が既修の新規入学者と一緒に勉強し、残りの2年を経て修了します。
ロースクール修了者の半数以上が不合格となるような厳しい試験を課され、それも既修と未修が同じ土俵で戦うとしたら、未修が不利であることは避けがたいと思われます。
これで、「未修者は合格率30%前後」が定着してしまうとしたら、「法学部出身者以外の多彩な人材を法曹に迎え入れる」という趣旨は大きく後退すると思います。
今年の受験生には、ロースクール修了後1年経過した人が既修に含まれます。この人たちの成績が既修の合格率にどのように影響したからわかりません。既修の合格率を押し上げたか押し下げたか。
また、「未修コースといえども法学部出身者が半数以上を占めるのだから、もっと合格率が高くても良いのではないか」とも思われますが、よくわかりません。

(3) 最終的に新司法試験の合格率はどうなるのか
マスコミでは、「当初計画では7割合格だったのに、実態は3割合格」と喧伝しています。
しかし、毎年の司法試験合格率を、最終的な合格率と混同してはいけません。毎年の合格率は「合格者数/受験者数」ですが、ロースクール修了者は3回まで司法試験を受験できるので、その年の受験者数はその年の修了者数より多くなり、その年の合格率は低い値となります。上記「実態は3割合格」はこの合格率を示します。

実態合格率を算出するためには、「平均的な1年合格者数/平均的な1年修了者(のうち受験した)数」で見る必要があります。

最終的には、1年間の合格者数が3000人になるということで、一方ロースクールの総定員が5800人ということは、5800人が全員司法試験受験生になるとして、最終的合格率は
52%(=3000/5800×100)
と見るべきでしょう。ですから、「当初計画では7割合格だったのに、実態は5割合格」というべきです。
7割が5割まで落ちたのは、ロースクールの総定員数が当初計画より増えたためです。


私は、ロースクール制度を採用した以上、「ロースクールを卒業できたら、原則司法試験に受かるようにすべきである。医師国家試験と同じようにすべきだ。」と考えています。日本のロースクルーのお手本となったアメリカのロースクールがそうです。こちらを参照してください。

それが、「制度的に5割が不合格になることが運命づけられている」現在の制度はおかしすぎます。法務省と文部科学省の連繋が悪すぎるとしか言いようがありません。

それと、法学部出身者以外の多彩な人材を法曹として登用したいのであれば、未修コースの司法試験受験生に何らかの手だてをすべきでしょう。今のままでは、工学部出身でロースクールを目指す人は減少し、未修コースは単なる隠れ既修コースに成り下がってしまう可能性があります。

ps 2008/9/12 2008年の新司法試験合格状況については、こちらに掲載しました。
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2 コメント

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未修コース (はは)
2007-09-24 14:51:52
法科大学院の理念のひとつは多様な人材を法曹にすることにあったと思いますが、現実的には未修者コースの多くが法学部卒だそうです。

法務省の発表でも未修者の合格者数は

未修者法学部卒  343人
未修者非法学部卒 292人

で、最初から多彩な人材の登用は形骸化しているように感じます。

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未修コース (ボンゴレ)
2007-09-24 18:30:34
ははさん、コメントありがとうございます。

非法学部出身で、法曹として迎え入れるのに魅力的な経歴を有している受験生には、何らかの有利ポイントを与えてあげるべきと思います。今の司法試験制度では、非法学部出身者は不利がつきまとい、目指す人を十分に確保することは困難でしょう。

ところで、既修・未修、法学部・非法学部のそれぞれで合格率を計算してみたら、以下のようになりました。ただし、分母は受験者数ではなく出願者数です。
合計出願者数5401人、受験者数4607人と開きがあるので、分母を受験者数とした場合はずいぶん傾向が変わるかも知れませんが。

既修・法学部  43%
既修・非法学部 38%

未修・法学部  25%
未修・非法学部 25%

学部が法学部か非法学部かより、既修か未修かの差の方が大きいのですね。
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