弁理士の日々

特許事務所で働く弁理士が、日常を語ります。

平成18年法改正説明会

2006-07-23 00:10:19 | 知的財産権
「平成18年意匠法等の一部を改正する法律」の特許庁説明会が、7月21日に東京でありました。

施行日の予定が知らされました。

平成18年9月1日(予定)
 新規性喪失の例外見直し
 団体商標の主体の見直し

平成19年1月1日(決定)
 実施行為への輸出の追加
 譲渡等を目的とした所持を侵害みなし行為に追加
 刑事罰の強化

平成19年4月1日(予定)
 上記以外の改正事項

一番知りたかったのは、特許法改正ポイントのうちで「シフト補正の禁止」が具体的にはどのように運用されるのか、という点でしたが、配付資料から読み取れる以上のことはまだ決まっていないようでして、わかりませんでした。
知りたいのは以下のような点です。

[特許請求の範囲]
請求項1:発明A

[明細書]
発明A
発明A’(Aを減縮した発明)
発明A+B(構成Aに構成Bを付加した発明)

(知りたい点)
請求項1の発明に新規性なし、との拒絶理由通知を受け、その拒絶理由については承服する場合に、①発明A’に訂正する補正は認められるのか、②発明A+Bに訂正する補正は認められるのか、という点です。

改正特許法17条の2第4項によると、
「補正前に受けた拒絶理由通知において特許をすることができないものか否かについての判断が示された発明と、その補正後の特許請求の範囲に記載される事項により特定される発明とが、第三十七条の発明の単一性の要件を満たす一群の発明に該当するものとなるようにしなければならない。」
とあります。

特許法37条と特施規25条の8によると、
37条の発明の単一性の要件を満たすためには、「二以上の発明が同一の又は対応する特別な技術的特徴を有している」ことが必要であり、「特別な技術的特徴」とは「発明の先行技術に対する貢献を明示する技術的特徴をいう」と規定しています。

上記の例で、発明Aは新規性が否定され、この点について承服しているのですから、発明Aには特別な技術的特徴がないことになります。
そうとすると、厳密に考えると、どんな補正をしても補正前の発明と補正後の発明とが37条の単一性の要件を満たすことはあり得ないではないか、ということになってしまうのです。

上記のような質問をした人がおられまして、それに対する特許庁の回答は、「シフト補正禁止の運用はあまり厳密にしないように」との方向付けもされているので、そのような方向で審査基準を作成していくことになる」というような回答でした。要するに現在のところはまだ何ともいえません。

上記①のような補正は認めるが、②のような補正は認めない、といったような基準になるかもしれないし、当初拒絶理由を受けた発明にさらに付加する発明であれば、②のような補正までは認める、といった基準になるかもしれません。

シフト補正禁止の施行時期は平成19年4月1日予定であり、それ以降の出願に適用されます。それまでに公表されるであろう指針に基づいて、後から補正で追加できなくなる可能性のある発明は、出願当初からクレームアップしておく必要があります。

また、テキストに「類型2」として挙げられている例:
[特許請求の範囲]
請求項1:発明A
請求項2:発明B
拒絶理由通知「単一性要件違反、発明Aに進歩性なし、発明Bは審査していない」
を受けた場合、発明Aを削除して発明Bを残す補正は許されない

への対応を考えなくてはなりません。
「発明AとBのどちらかを選べと言われたら、Bを選ぶ」ということであれば、発明Bを請求項1にクレームアップすることが必要となります。
コメント (2)
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