弁理士の日々

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2006年に福島大津波が予測されていた?

2012-05-15 22:31:45 | サイエンス・パソコン
福島第一の電源喪失リスク、東電に06年指摘
読売新聞 5月15日(火)13時47分配信
『枝野経済産業相は15日、閣議後の記者会見で、経産省原子力安全・保安院が2006年に、福島第一原子力発電所が津波によって全電源喪失に陥るリスクがあることを東京電力と共有していたことを明らかにした。
14日の国会の原発事故調査委員会で、参考人として招致された勝俣恒久会長はこの事実について、「知らない」と回答。枝野経産相は「共有されなければ、意味がない」として、会議内容の公開も検討するとした。
枝野経産相などによると、04年のインド洋大津波で、インドの原発に被害が発生したことを受け、保安院が、独立行政法人「原子力安全基盤機構(JNES)」、東電などとの合同会議を開催。福島第一原発に高さ14メートルの津波が襲来すると、タービン建屋が浸水し、全電源喪失に陥る可能性が指摘されたという。東電は08年にも国の見解に基づき、15・7メートルの高さの津波を試算していたが、対策には生かさなかった。』

国会の原発事故調査委員会(以下「国会事故調」)で、委員から勝股会長に対してこの質問が出たようです。

原発事故調査委員会として、上記「国会事故調」のほかに、政府の事故調査・検証委員会(「政府事故調」)、福島原発事故独立検証委員会(「民間事故調」)が並列して走っています。
政府事故調は昨年12月に中間報告を発表、民間事故調は今年3月に報告書を発表しました。

今回、国会事故調関連で明らかになった上記事象については、政府事故調でも当然に把握しているべき事象です。そこで、政府事故調中間報告を再度さらってみましたが、該当する記述を見つけることができませんでした。

政府事故調中間報告では、事故発生までの福島第一原発に関する津波対策に付いて、以下のように記述しています。(このブログでは下記2記事)
原発事故政府事故調中間報告~津波予防対策
原発事故政府事故調中間報告~津波対策と原子力安全保安院

---政府事故調中間報告抜粋---
平成14 年7 月
推本(総理府に設置された地震調査研究推進本部)が「三陸沖から房総沖にかけての地震活動の長期評価について」で「1896 年の明治三陸地震と同様の地震は、三陸沖北部から房総沖の海溝寄りの領域内のどこでも発生する可能性がある。」と公表。
平成20 年
東京電力は、推本の長期評価に基づき試算した結果、福島第一原発2 号機付近でO.P.+9.3m、5 号機付近でO.P.+10.2m、敷地南部でO.P.+15.7m といった想定波高の数値を得た。

平成21 年6 月及び7 月
「総合資源エネルギー調査会原子力安全・保安部会 耐震・構造設計小委員会地震・津波、地震・地盤合同ワーキンググループ」において、委員から、貞観三陸沖地震・津波を考慮すべき旨の意見が出された。
平成21年8 月上旬頃
保安院の審査官が東京電力に対し、貞観津波等を踏まえた福島第一原発及び福島第二原発における津波評価、対策の現況について説明を要請した。
平成21 年9 月7 日頃
保安院において東電が保安院の室長らに対し、貞観津波に関する佐竹論文に基づいて試算した波高の数値が、福島第一原発で約8.6m から約8.9m までであったことを説明した。

平成23 年3 月7 日
保安院において東京電力に対するヒアリングが行われた。
(ケース1)明治三陸沖地震(1896 年)のモデルを用いた場合には、福島第一原発で8.4m から15.7m まで、(ケース2)房総沖地震(1677 年)のモデルを用いた場合には、福島第一原発で6.8m から13.6m までとなる。
---抜粋終わり---

やはり政府事故調中間報告には、2006年の保安院・原子力安全基盤機構(JNES)・東電の合同会議については記述されていないようです。

ということは、保安院は、昨年12月までの段階ではこの合同会議について完全に失念していたということでしょう。まさか覚えていたのに政府事故調に隠していたということはないでしょう。
最近になって保安院が思い出し、国会事故調に報告したのでしょうか。

2006年の合同会議の話が本当だとしたら、その知見を生かして津波対策が構築されていなかったことの責任は、第一に原子力安全保安院にあると思われます。保安院は、東電に対して、対策を講じるよう指示または命令を発出すべきでした。

今回の国会事故調てのやりとりからすると、たまたま東電の勝股会長が呼ばれたときに「合同会議について知っているか」と問うたようです。国会事故調は、東電会長に質問する前に、まず保安院に対して質問すべきです。「なぜ東電に津波対策を命令しなかったのか?」
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