弁理士の日々

特許事務所で働く弁理士が、日常を語ります。

モールスで世界と交信

2006-07-26 00:10:31 | 趣味・読書
私が使った21MHzの短波が電離層で反射するといっても、電離層に入射する角度が大きすぎると電離層を透過してしまい、反射しません。ほとんど入射角ゼロ近くの場合にやっと反射する程度です。
私がいた中国地方と例えば関東との間で通信しようとすると、電離層入射角がやや大きすぎ、反射してくれません。一方、相手が北海道であると、入射角が小さくなるので、電波が反射し、地表に戻ってきます。
そのため、私のトランシーバーに入ってくる電波は、大部分が北海道からのものだったのです。

しかし聞こえてくるモールス通信は、私が送受信可能な速度(1分間に25文字)よりは当然速く、読取り不可能です。これではせっかく開局したものの仲間に入れません。
仕方がないので、読取り速度を向上するための訓練です。パソコンのフリーソフトで、自分の与えたアルファベット文字列を指定した速度でモールス符号としてスピーカーから音を出すソフトがありました。それを用いて1分間40文字を超える聞き取り能力に達しました。
アマチュア無線でモールス通信をする場合、こちらの技能の方が低ければ、相手はこちらが打つスピードに合わせて打ってくれます。ですから、こちらが、自分が聞き取れる速度で送信すれば、それに合わせて打ってくれた相手の通信を自分も聞き取れるというわけです。
ということで無事にモールス通信にデビューを果たし、主に北海道の相手と交信しました。

ある日、こちらがコールサインを打ってだれかの応答を待っていると、かすかに「・・--・・」という応答が聞こえます。「?」という意味です。
もう一度打ちます。また「?」。3回目でやっと相手は私の通信を了解したらしく、相手のコールサインが返ってきました。それが何とオーストラリアからだったのです。
こうして、2ワットのトランシーバと逆Vアンテナという貧弱な設備で、遠い別の大陸と交信することができました。

こうなると欲が出てきます。「すべての大陸の相手と交信したい!」
ちょうど11年周期の太陽活動が最も活発な時期に入っており、全世界と交信するには絶好のシーズンです。

しかし2ワット+逆Vではこれ以上遠くの相手とは無理です。私は3アマ(3級アマチュア)ですから出力25ワットまでOKです。そこで、トランシーバの2ワットを25ワットに増幅する増幅アンプを自作することにしました。雑誌に自作記事が載っていたので、それを参考に秋葉原で部品を揃え、何とか完成しました。電源と出力測定器は完成品を購入せざるを得ません。出力を25ワットに調整し、免許も更新しました。出力を上げるとご近所のテレビや電話に障害が入るおそれがあるので、ご近所にご挨拶しました。

まずはモーリシャス(アフリカ)と交信でき、次いでフィンランド(ヨーロッパ)、アルゼンチン(南米)とも交信が完了しました。北米となかなか繋がらず、電離層の様子を見ながら早朝にトライしたりしてやっと交信に成功しました。
こうして6大陸と交信を完了し、世界アマチュア無線連盟からWAC(Worked All Continents)という賞状を獲得しました。1992年のことです。
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