弁理士の日々

特許事務所で働く弁理士が、日常を語ります。

モールス通信

2006-07-25 00:03:58 | 趣味・読書
「このデジタル通信の時代に、モールス符号を使った通信が生き残っているのか?」と疑問に思われるでしょう。
プロの通信の世界のことは知りません。
しかしアマチュア無線では、まだ生きているのです。少なくとも10年前には。

アマチュア無線は、世界中至る所と無線通信を行います。それに用いる通信機器としては、もちろん100ワットクラスの送信機と、幅が3m以上もある3素子の八木アンテナを屋根より高く上げて電波を発射するという、高強度の電波を発射する手法を採りさえすれば、遠くまで強力な電波を届けることができます。
一方、私が採用した方法は、数万円で購入できるハンディートランシーバーのキットで、出力は2ワットです。アンテナも、二階の屋根の軒下を中心として、逆V型に電線を地面まで張ったアンテナ(逆Vアンテナ)を用いました。これでは、発射した電波が相手に届くのも微弱だし、相手からの電波も微弱にしか受信できません。音声だとしたら、雑音の中にわずかに声が聞こえるのみで、聞き取ることが困難です。
ところが、モールス通信であれば、このような微弱環境でも信号を聞き取ることができるのです。

モールス信号による通信能力は、聞き取り能力と打鍵能力とがあります。まずはA~Zのモールス符号を暗記します。
次に、聞き取り能力をつけるため、テープに録音したモールス信号を耳で聞き、読み取って紙に書き取ります。
打鍵能力については、紙に書いたアルファベットを見ながら、その符号をモールス通信用のキー(電鍵といいます)を用いて手でたたきます。
どちらかというと、聞き取り能力の方が進歩が遅いです。当時の3級アマの試験では毎分25文字の聞き取りテストがありましたが、この速度で聞き取りができれば、同じ速度での打鍵は間違いなくできるでしょう。

3級に合格し、無線局開局の手続を行って免許を取得し、上記の2ワットトランシーバー(周波数21MHz)と逆Vアンテナ、電鍵を購入し、準備は完了しました。
そしてトランシーバーから電波を拾ってみると、北海道から発射された電波が強く入電します。

ここで電波の伝搬について説明しましょう。
電波は直進し、一方で地球は丸いですから、遠方の地には電波が届きません。
一方、地球の上空には電離層が存在します。電波は電離層で吸収されたり反射したり透過したりします。低周波の電波は吸収され、高周波の電波は透過し、その中間の周波数の電波が反射します。短波といわれる周波数領域の電波は電離層で反射し、地表でも反射し、これを繰り返して地球の裏側まで電波が届くことがあるのです。
私が採用した周波数21MHzというのが短波で、3級アマに許可されている周波数としては最も遠距離通信に適しています。

電離層というのは、太陽から降り注ぐX線などによって大気が電離してできるので、昼間や夏は強く、夜や冬は弱くなるという変化をします。また、太陽の活動は11年周期で強弱を繰り返し、太陽の活動が強い時期には電離層が強力です。このようなもろもろの要因で電離層状態が変化するので、時期毎、時間毎に、交信できる地域が変動します。
総合的には、夏は電離層が強すぎ、冬は弱すぎ、短波通信には適しません。春秋が遠距離通信の季節であり、かつ11年周期の太陽活動の最盛期が好適です。私がアマチュア無線を開始した時期は、ちょうど太陽活動活発期の秋でした。
(以下次号)
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする