ヮヮヮ ・・・・・
チャポ
ピ ピ ピ ♪ ピ チュン ♪
小鳥が歌ってる・・・
6羽に増えてる。
ザッ
ォォォォ ―――
もう風の向きが変わって、滝からの水しぶきがこちら側に飛んでる。
ト
川の方に行く。
黒猫達がいる。
だいぶ太陽は傾いていて、崖の上から戻って来たマッチョさんたちもシャワーを浴びてバーベキューの準備をしてる。
ウィィィ ン
マルチコプターが飛んでる。
目的はなく、カールさんが操縦の練習をしている様。
ポチャ チャ
「クゥ」
チワワがいた。
「・・・」
黒猫とリスもいる。
川をみてる。
水面には森。
ト
「・・・」
私が近づくと、黒猫が見上げた。
カタ
持ってきたイスを置いて座る。
黒猫がみていた方を見ると、魚。
泳いでる。
チャプ ――
急に速度が上がって、消えた。
「・・・・」
いた。
「・・・」
チワワも川をみているけど、落ちないか心配。
しばらく一緒にみていよう。
チャプ チャプ
ザヮヮヮヮヮ ・・・・・・・
120年前、アンリ・ベクレルはウランから放出される小さな何かを発見した。
非常に高速だという事は分かっていたけど、それが何なのかはわからなかった――光速近くになるものもある。
目で見ることはできないけど、物質を通り抜けて写真乾板を感光させた。
これは「光線」と呼ばれるようになる――ほぼ直線に飛ぶからだろうと思われる。
この1年前、ヴィルヘルム・コンラート・レントゲンがX線を発見していて、その性質に似ていた。
「光線」にも種類があることが分かり、ウランなどから出てくる紙1枚で遮蔽できるものをアルファ…α線、貫通力のあるものをベータ…β線、さらに貫通力のあるものをガンマ…γ線と呼ぶようになる――厚さ1cmの金属板を貫通するものを、γ線と呼んだ。
デルタ…δ線と呼ばれるものもあったけど、これはエネルギーの低いβ線と同じものであるとわかり、現在では使われることはほとんどない。
その後「光線」は「放射線」と呼ばれるようになり、今では使われなくなった。
α線はヘリウムの原子核、β線は電子か陽電子が高速で飛ぶ粒子線で、停止するまでに多くの分子にあたってバラバラにする――α線は紙1枚でとまるけど、β線は厚さ1mmの金属でとめることができる。
この粒子線が通過すると、線上に分子を損傷させる。
損傷はわずかなもので人にあたっても気付かないけど、膨大な数の粒子がぶつかってくると病気になったり死に至ることもある。
α線は陽子と中性子が2つずつの粒子で、α粒子とも呼ばれる。
重くて電荷が強いので、物質と強く相互作用して減速しやすい――長い距離は進めない。
減速すれば、周囲の原子から結合力の弱い電子を2つ引き付けてヘリウム原子になる。
皮膚にあたっても、死んだ細胞である表層でとまるので、ほぼ害はない――体内で放射された場合は、影響が大きい。
β線は電子なので軽いけど、非常に高速なので低エネルギーのα線と同じくらいのエネルギーを持っており、無数の衝突を繰り返して遅くなると、原子と結合する。
皮膚にあたれば、組織内を1cmは進む。
γ線は波長の非常に短い電磁波で貫通力が高く、1つの原子に吸収される性質がある――鉛や鉄板でその強さを弱めることができる。
多くの場合で原子核を壊し2次放射線が放出され、生体ではこれが大きなダメージになる。
γ線は光なので光速で動くけど、持っているエネルギーは私たちが見ることのできる可視光よりもずっと大きい――100万倍以上はある。
X線もγ線と同じ電磁波だけど、持っているエネルギーは通常1~2桁小さい。
生体を構成する炭素などはよく透過するけど、カルシウムで遮蔽される――原子番号の大きな元素には遮蔽される。
体に当てれば、骨を構成するカルシウムに遮蔽されるのでその影を撮影することができる――なので虫歯や骨折の診察に使われる。
鉛でX線を遮蔽できるので、X線写真を撮るときは鉛の板を体にかけて散乱したX線から臓器を守る。
中性子線は陽子とともに原子核を構成する中性子の粒子線で、電荷を持たないので透過力がとても高い――鉛や鉄板でも容易に透過しうるけど、コンクリートや水で止めることができる。
生体にあたれば多くの原子核を乱し、2次放射線でダメージを与える。
中性子線は電荷を持たないので、他の原子核に直接あたらないとエネルギーを失わない。
このため透過力が高く、大きな原子核にあたっても跳ね返ってあまりエネルギーを奪われない。
水素はほぼ同じ質量の陽子が原子核なので、これにあたると陽子を飛ばすけど自身のエネルギーも大きく失う。
なので水素を多く含む水で効率よく速度を落とせる。
速度の遅くなった中性子が他の原子核に捕まると、γ線を出す――捕獲した原子核がそれで不安定になり、放射性をもつ場合もある。
自由に飛んだままだと、15分くらいでβ線を出して陽子になる。
宇宙線は、宇宙から飛んでくる放射線の総称で、陽子や電子や電磁波やミューオンなど――ミューオンは透過力がとても高いので、X線写真と同じ様にして火山やピラミッドの内部構造を探るのに使われることもある――ミュオグラフィという。
ニュートリノは「小さな中性の物体」という意味で、素粒子のひとつ。
原子核からβ線が出るときに同時に放出される。
非常に軽い粒子なので、大きなエネルギーを持っていなくても光速に近い速度で動く。
粒子自体が電荷をもたないので、どんな距離でも電磁気力を感じることはない。
このため、ニュートリノからみればスカスカの私たちや地球などは極めて高い確率で通り抜ける。
太陽から膨大なニュートリノが届いているけど、地球も通り抜けるので、昼夜関係なく、1秒間に数兆個のニュートリノが私たちの体を通過している。
生体にあたっても危険の最も少ない放射線である。
―――150年前、ヨーロッパ中部の王国に5人兄弟の末っ子としてマリア・サロメー・スクウォドフスカは生まれた。
彼女の祖国は東の帝国の支配下にあり、多くの自由を抑圧されていた。
科学者の父は職を失い、貧しい家庭で育った。
幼い時に母と姉を亡くす。
マリアは幼いころから聡明だったようで、18歳の時に姉のブローニャと約束をする。
ブローニャが西ヨーロッパの共和国で医学を学ぶ間、マリアは働いて姉を助ける――ブローニャはセーヌ川の両岸に発達した大都市で学んだ。
そして、ブローニャがその後でマリアを助ける。
マリアは移動大学で学んだ――帝国の官憲に摘発されるのを避けるため、毎週違う場所で学ぶ。
帝国の弾圧に対して、彼女の祖国の人はこうした教育で抵抗していた。
約束通り家庭教師をして姉を助け、失恋に苦しみながら、祖国に溢れていた学問の情熱の中で勉強を続けた。
ブローニャは医学部を卒業し、同級生と結婚する。
そして24歳のとき、姉を追って共和国の首都に女学生として到着した。
マリアは共和国風にマリーと名前を変える。
2年後に物理学の修士号を、その1年後には数学の修士号を得た。
もう少し広い実験スペースを探していたマリーは、ピエール・キュリーを紹介される。
ピエールは知性に恵まれた内気な男性で、2人はすぐに恋に落ちた。
祖国に戻ったマリーに、ピエールは手紙を送り続ける。
そしてマリーが28歳のとき、2人は結婚した――ハネムーンは、自転車で共和国を旅行したらしい。
新たにマリー・キュリーという名前になり、彼女は博士号の取得を目指した――女性は現在以上に様々な機会から差別されていて、女性が博士を目指すのは困難な時代だった。
キュリー夫妻は、アンリ・ベクレルと親友になる。
このころ、ベクレルは硫酸ウランの結晶が写真乾板に像を焼き付けることを発見したばかりだった――ベクレルは科学者の父から、蛍光を発する鉱物のコレクションを受け継いでいた。
最初は、日光に由来する蛍光だろうと考えていた。
その時は2月で、冬の雲が空を覆っていたので実験には適していなかった。
ベクレルは実験装置を引き出しに入れて、天気の回復を待った。
数日晴れることはなく、とりあえず現像してみた。
薄っすらとした像しか出ないと思っていたら、はっきりとした像が出た。
ベクレルは、日光の様な外部のエネルギー源が無くても結晶が光線を出すのだと悟る。
すぐにウランが発生源で、そのためウランを含む物質はすべて類似の光線を発すると気づく。
そしてウランの周囲の大気が伝導性を帯びることも発見し、マリーはこの現象を博士号取得の研究にすることに決めた――のちに、マリーによって放射線と名付けられる。
マリーは、瀝青ウラン鉱…ピッチブレンドを使って研究を始める。
キュリー夫妻は、放射能を測定するのに周囲に形成される電場強度を測ればいいことを理解していた――放射線によって物質が電離するので。
瀝青ウラン鉱は、ウランよりも3倍放射能が高かった。
このため、この鉱石にはウランよりも放射能の高い未知の物質があるはずだと結論した。
その後、その元素の単離に成功する。
ウランの400倍の放射能を持つ新元素に、夫妻はマリーの祖国にちなんでポロニウムと名前を与えた。
マリーはさらに新しい元素を発見し、ラジウムと名付ける――ウランの100万倍の放射能を持っていた。
ピエールはラジウムの破片を皮膚の上に置き、火傷を負う。
夫妻は、この元素が抗がん剤として使えると気づいた――現在でもラジウム針は、がん治療のために腫瘍内部に挿入される。
夫妻は人道的な理由から、ラジウムに関する特許は申請しなかった。
金銭的な苦労もしながら、劣悪な実験環境で仕事を続けた――数mgのラジウムを得るために数トンの瀝青ウラン鉱が必要で、現在でもその生産量は少ない。
今から114年前、キュリー夫妻とベクレルはこれらの功績に対してノーベル物理学賞を受賞する。
マリーは女性で初めての受賞で、その賞金は貧しかった家族を救った――科学で博士号を取得した、ヨーロッパ初の女性にもなった。
その3年後、放射能で弱っていたピエールは荷馬車の車輪に轢かれて亡くなる――マリーは精神不安定に陥り、ピエールへ日記を書き始める。
2年後、失意の中ピエールの研究を続けることを決める――そして650年の歴史を持つ大学で、初の女性教授に任ぜられる。
それから3年後、ラジウムの単離に対して2度目のノーベル賞を受賞する。
さらに3年後、人類を苦痛から解放するという人道目標を掲げてラジウム研究所が設立される――現在はキュリー研究所と改名されている。
第一次大戦中、マリーはX線装置を利用して弾やその破片を見つける方法を看護婦たちに伝授し続けた。
戦後は最初の娘イレーヌと共に、ラジウムのがん治療法を開発する。
イレーヌも夫フレデリック・ジョリオと共にノーベル賞を受賞することになるけど、その前年、マリーは白血病で亡くなる――67歳だった。
彼女は死の前、白内障でほとんど視力を失っていた――その指にはラジウムのための火傷で、赤い斑点が焼き付いていた。
マリーが無くなる前にも、ラジウム研究所の研究者が数人亡くなっていた。
医者たちは放射能が原因だと考えたけど、マリーはそれを認めなかった――その後、イレーヌも白血病で亡くなる。
高線量の放射線はがん細胞を殺すけど、正常な細胞も死ぬ。
X線を扱う研究者の多くが髪を失い、ひどい火傷を負うこともあった。
初期の放射線研究者の4割ががんで死んでいて、その頃にはがんの危険が増加することが分かっていた――ウラン鉱山で働く鉱夫の半数が肺がんになっていた。
第一次大戦中、塹壕内で戦う兵士のためにラジウムを塗った時計が考案された――暗闇でも光る。
戦後、それが流行った。
時計にラジウムを塗る女性従業員は、筆の先をとがらせるために口で湿らせるように教えられていた――ラジウムは万能薬とされ、様々な詐欺商法に利用された。
女性従業員はラジウムをほほに塗ったり、爪や唇、歯にまで塗ることもあった――暗闇でも輝き、にっこりすれば素敵だと言われていたので。
1年も経たないうちに、彼女たちの歯は抜け、顎は崩れた。
何人も死に、医師たちがその体から大量の放射性物質を見つける。
メーカーは金銭上の補償には応じたものの、ラジウムとの関連性については認めなかった。
第二次大戦中、医学界によってラドンの被曝上限が設けられる。
ただ、利権のために放射線の遅延効果は隠された。
このため、最初の原爆をつくった人たちもほとんどは、その放射性降下物による影響は予測していなかった。
広島と長崎で最初の爆風を生き延びた人たちも、その後の黒い雨によって苦しみながら亡くなった――火災によるすさまじい上昇気流で、雨をともなう強風が起こる。
数年でがんになる人もいたけど、発病まで時間のかかる肺がんや乳がん、甲状腺がんなどは15年ほど経てから増加しだした―――
キキ ♪
原子核は核子…陽子と中性子が結合した複合粒子で、原子の質量の大半は原子核が占める。
陽子は+の電荷をもち、中性子は電荷を持たない。
原子核の周りには電子が雲のように広がっていて、原子を構成している――電子は-の電荷をもつので、原子は全体としては中性になる。
安定した原子は、原子核の陽子と同じ数の電子を持っている――電子の数が多かったり少なかったりすると、それぞれ陰イオン…アニオンと陽イオン…カチオンになる。
化学的な性質は、主に外側の電子雲の形によって決まる――すべてではないけど。
原子核の陽子の数で電子の数が変わるので、陽子の数が変わると化学的な性質が変わる。
元素は原子核に含まれる陽子の数で変わる。
陽子の数を原子番号と呼び、周期表は番号の少ない方から順番に並んでいる――周期表で縦に同じ位置にある元素は、電子の配置が似ていて化学的性質が似ている。
様々な元素があるけど、同じ原子番号の元素でも原子核の中性子数が違うものがあり、同位体…アイソトープという――中性子が増減しても電子の数が変わらないので、基本的な化学的性質は変わらない。
原子核の種類は核種という。
物質が自発的に放射線を出す能力を放射能といい、そうした物質を放射性物質と呼ぶ。
放射性物質の原子核は時間と共に崩壊…壊変して別の核種になり、この際放射線を出す。
同じ元素でもその同位体の中に放射能を持つものがあり、そのような同位体を放射性同位体という。
安定同位体の存在しない元素は放射性元素と呼び、放射性同位体と合わせて放射性核種と呼ぶ――ただ、放射性同位体も放射性核種もほぼ同じ意味で使われる。
放射能の強さを表す単位はベクレル…Bqで、1秒間に何回崩壊するかを表している――アンリ・ベクレルにちなんでいる。
放射性核種の数が同じであっても、崩壊しやすい不安定な核種は放射能が強い。
1回の崩壊で出る放射線の数と種類は、放射性核種によって違う。
Bqはその差は考慮されていないから、Bqは放射性核種の量や出てくる放射線の数を表す単位ではない。
ポチャ
放射性核種の崩壊は時間と共に進んでいくので、その量は減っていく。
放射能が半分になるまでの期間を、半減期という。
半減期が1日なら、次の日には放射性核種の量がだいたい半分になっている。
これは確率的なもので、2日めにはその半分くらいになっている――最初が100gなら1日目で約50g、2日目で約25gになっている。
同じ速度で減るのではないので、2日では無くならない。
1日ごとに半分の半分・・・と減っていき、やがてほとんどなくなる。
半減期は放射性物質の種類によって違う。
例えば、食品に含まれるカリウム40は約13億年、ウラン238は約45億年と非常に長い。
一方、ポロニウム210は138.4日、ラドン222は3.8日、ポロニウム215は0.0018秒と、短期間で半減する。
放射性物質は、半減期を何度も迎えて時間を経ていくうちに放射能が弱くなっていき、最後には放射能をほとんど持たない安定した物質へと変わる。
放射性核種の数が同じなら、半減期が短いものほど不安定で強い放射能を持つことになる。
この半減期の性質を上手く利用すると、古いものがいつ作られたものなのかなどを調べるのに使える。
考古学者は、炭素の放射性同位体である炭素14…14Cを使って化石の年代を測定する――放射性炭素年代測定法という。
14Cは宇宙線によって大気中でつくられる――半減期は5730年。
光合成を通じて生体にも入ってくる。
私たちの体を構成する物質はかなりの速度で入れ替わるので、体内の炭素は大気中とほぼ同じ放射能になる――1gあたり、1分で12個くらいが崩壊する。
死んだ生き物は新たに炭素を取り込まないので、14Cは徐々に崩壊して減っていく。
見つけた化石に含まれている炭素を調べて、放射能が半分になっていたら半減期である5730年が過ぎたものだとわかる――1gあたり、1分に6個くらいが崩壊する。
さらに半分に減っていたら、半減期2回が過ぎているので11460年経たものだとわかる――1gあたり、1分に3個くらいが崩壊する。
あまり古いものだと放射能が弱すぎて、測定が困難になる。
14Cで測定可能なのは半減期10回分あたりまでで、、およそ57300年前まで――1gあたり、85分くらいで1個崩壊する。
酸素安定同位体比を使って過去の気候を調べたり、他にも半減期を利用した年代測定法はある。
♪
水素は原子番号1の元素で、99.985%は陽子1つだけの原子核に電子が1つの電子雲で構成されている――宇宙で最も数の多い元素。
残りの0.015%の水素のほとんどが、原子核に中性子を1つ持っている同位体で、重水素…デューテリウムと呼ばれる――水素6666個に1つくらいの割合。
水は酸素と2つの水素でできているけど、重水素が含まれている水は重水と呼ぶ。
中性子をもう1つ余分に持った原子核の水素は、三重水素…トリチウムと呼ぶ――水素の1000000000000000000個に1つくらいの割合で存在する。
トリチウムは放射性を持っていて、医薬品や水爆に使われる。
ウラニウムは原子番号が92で、電子の数も92。
地球のウラニウムの99%は、原子核に92個の陽子と146個の中性子を持っていて、合わせて238個の核子でできている――ウラン238と呼ばれる。
0.7%くらいは中性子143個の同位体で、ウラン235という。
原爆や原子炉で重要な役割を果たすのはウラン235で、発電に使う燃料には3%くらい含まれている。
私たちを構成する主な元素は、恒星内の核融合や超新星爆発のエネルギーで作られている――昔光っていた星の残骸になる。
ウラニウムもそうで、ウラン238は45億年で半減するのに対して、ウラン235は7億年で半減する――半減期の長い核種はゆっくりとしか放射線を出さないので、単位量の放射能は非常に弱い。
減る勢いが違うので、時間がたてばウラン238に対してウラン235の割合が減る。
20億年前の地球には、天然のウラニウムの3%くらいがウラン235だった――これは原子炉の燃料棒と同じ濃度で、なので天然の原子炉もあった。
同様に多くの物質が最初は放射性だったと思われるけど、長い時間をかけて安定しており、現在の原子は多くが放射性を持たない。
チャプン
放射線は物質中を通過するとその原子との間に相互作用を起こし、徐々に放射線自体が持つエネルギーを失っていく。
物質が吸収したエネルギーの量を吸収線量といい、単位はGy…グレイで表す。
1Gyは、1kgの物質に1J…ジュールの放射エネルギーが吸収されたときの吸収線量に相当する――1Gy=1J/kg。
1Jは、1N…ニュートンの力が力の方向に物体を1m動かすときのエネルギーで、1Nは、1kgの質量を持つ物体に1m/s2の加速度を生じさせる力――1kcalは4184J。
Gyは同様の概念を使用したルイス・ハロルド・グレイにちなんでおり、すべての物質、あらゆる放射線に適用される。
生体が放射線に曝されると、エネルギーを吸収した細胞が壊れる場合がある。
DNAが切断された場合、修復できなければ細胞は壊れるのでそれまでだけど、修復した場合その際発生するミスが、その後がんになるリスクを高める。
細胞は分裂して数を増やす。
擦り傷があれば、細胞はどんどん数を増やして傷口をふさぐ。
だけど無制限に増え続ける事はなく、細胞は必要がなくなった時に自ら壊れる機能もある――アポトーシスという。
DNAの修復や複製の際にミスすることが重なると、アポトーシスの能力を失うことがある。
さらに生殖細胞のようにテロメラーゼという酵素を生産する能力を持つ場合があり、こうなると制限なく増殖を始める。
これががん細胞で、健康な人の体にも発生しているけど免疫の働きで排除されている。
だけどもともとが自身の細胞なので見逃す場合があり、そうなると増殖したがん細胞が身体機能を阻害し、死の原因となる。
・・・
放射線によって細胞が受ける損傷は、シーベルト…Svという単位で測る――国際放射線防護委員会…ICRPの委員長だったロルフ・シーベルトにちなんでいる。
吸収線量が同じであっても放射線の種類やエネルギーによって影響が変わるので、Svはすべて同じ尺度で示せるように補正してある――β線とγ線はほぼGyと同じで、体内で被曝したα線と高速中性子はほぼ20倍で、骨の場合はさらに5倍する。
以前はレム…remが単位として使われていて、合衆国の公式報告書には今もremが使われている――remはRoentgen equivalent in manの略で、1レントゲンと同じ人体への影響という意味。
1Svは100remで、1remは0.01Sv。
ミリシーベルト…mSVやマイクロシーベルト…μSvが使われることも多く、それぞれSvの1/1000と1/1000000を意味する――1Sv=1000mSv=1000000μSv。
人が放射線に曝されることを被曝といい、体の外からの被曝を外部被曝、経口摂取した放射性物質などで人体内部から被曝する場合を内部被曝という。
がんの治療などで特定の患部だけ被曝することを局部被曝と言い、全身が被曝する全身被曝と区別する――特に記載がなければ、普通は全身被曝。
また、宇宙や地殻からの放射線、体内の放射性同位体などによる自然の被曝を、自然被曝と呼ぶ――体重60kgの人で、体内に平均7000Bqの放射能を持っている。
放射線による細胞のダメージが大きいと、体の新陳代謝を乱して放射線症という病気になる。
人間は7Svの被曝で、ほぼすべての人が死亡する致死量となる。
10Svの被曝だと1~2時間で体の正常な機能が失われ、生存の確率は非常に低い。
100Sv以上の被曝すると、短時間で平衡感覚や方向感覚、運動能力が失われ、ショック状態になって数日で死亡する。
3SvでLD50となり、治療を受けなければ60日以内に50%の確率で死亡する――LDはlethal dose…致死量の略。
1~2Svの全身被曝だと吐き気や脱毛などの軽い症状が短期間あり、死亡の確率は非常に低い。
1Sv以下の被曝では、短期的な疾患は出ない。
だけど放射線症がなくても、長期的にはがんのリスクを高める事が分かっている。
がんをほぼ確実に誘発するのは約25Svだとするのが、現在の最良の推定値だとされている――昔は100Svだと考えられていたので、古い本にはその様に書かれているものもある。
25Sv被曝するとがんになるよりも先に、放射線症で亡くなる。
だけどそれよりも少ない線量の被曝であっても、その量に比例してがんを誘発する可能性があると考える。
線形効果といい、1%にあたる250mSVの被曝ならがんを誘発する可能性が1%あると考える。
例えば私の祖国なら、およそ50%の人が生涯でがんになるとされている。
なので10000人の人が250mSVの被曝をしたなら、もともと5000人ががんになるのに加えて、放射線の影響で100人多くがんになるという意味になる。
こうした知識は、原発事故や大戦中に私の祖国に投下された原爆による高濃度被曝に基づいている。
実際の測定値と発がん率にはある程度不確実さの幅があり、大きな線量になるほどその幅が大きくなる。
発がん性の基準である25Svは、250mSVの被曝による発がん率である約1%を100倍している。
線形効果があると仮定しているのだけど、実際に大きな線量の幅にその線がほぼ収まる。
非常に低い線量でもがんを誘発するのかは、わかっていない。
どんなにわずかな線量であっても発がん作用があるという考えは、線形仮説と呼ばれる。
これを信じるなら、25mSvの被曝でがんのリスクが0.1%高くなることになる。
統計変動のため、これを実際に実証するのは難しい。
線形仮説を信じる研究者の根拠になっているのは、人体が常に様々な分子によってダメージを受けている事である。
そうしたダメージに、さらに放射線によるダメージが加われば、それがごくわずかであってもより悪化すると考えている。
線形仮説に懐疑的な見方もある。
小さなダメージなら細胞は自分で修復するので、影響はないと考える。
放射線症やヒ素などの多くの毒物には、線形仮説は当てはまらない。
低線量では低い確率でも放射線症は起こさないし、脂溶性のビタミンの様に微量なら生きるのに必須だけど大量摂取で害があるものも多い。
だけどがんは確率的な病気で、放射線症や毒物とはずいぶん違う。
放射線症や毒物は、体の回復力を害が上回ると発症する。
そうした閾値があるという点で放射線症と毒物は似ていて、がんは違う。
線形仮説の実証は難しいけど、もし1人でも多くがんになるのなら、その本人にとっては重大問題になる。
このため多くの人が、線形仮説を仮定して公共政策を決める基準にするべきだと考えている。
―――放射線の強さを測るガイガーカウンターには、低圧の気体が封入されている――エタノールを混ぜたアルゴンや臭素を混ぜたネオンなど。
筒の内壁と中央の導線に、500~1200Vかけて、放射線にはじき出された気体の電子を測定する。
β線はほぼ捕捉できるけど、γ線は1%くらい。
シンチレーションカウンターは放射線を吸収して光を出す蛍光体を使い、その光を検出する。
フッ化リチウムなどの熱発光する物質をいれたものを身に着けておくと、放射線で励起された電子が結晶内に溜まる。
結晶を熱すると電子がもとに戻り、その際発光するのでそれを測ると、累積の被曝量がわかる―――
チャポン ♪
胎児への影響はより大きいと考えられている。
放射線の影響に関する国連科学委員会…UNSCEARの研究によると、10mSVの被曝で胎児への影響は3%とされている――成人の75倍のリスク。
歯科用のX線が胎児に照射された場合で約0.01%程度のリスクで、実際には母親の歯に照射されるので影響は0.0001%になると思われる――線形仮説を仮定すると。
したがって妊婦が歯の治療を放置した場合の方が、胎児への影響は大きいかもしれない。
放射線はすべての分子と直接反応できるけど、人体には多くの水が含まれているので水と反応する確率が最も高い。
それによって水が酸素と水素に分解され、その中間体のフリーラジカルによって体がダメージを受ける――酸素の毒性と基本的に同じ。
子供は水分含有量が平均75%と高く、γ線やX線は有機分子よりも水の結合と反応しやすい――成人男性の水分含有量は平均60%で、男性よりも皮下脂肪の多い成人女性は55%ほど。
このため、子供の方がX線照射に弱い――脂肪の多い女性が、最もX線に耐えやすい。
装置や検査方法により違いはあるけど、集団検診での胸部レントゲン写真で1回0.05mSv、胃のレントゲンで0.6mSv、胸のCT検査で6.9mSv程度になるとされている。
がんの放射線治療では大量の放射線を受けることになり、がん細胞を死滅させるために患部に対して60Sv程度の放射線をあてる――これは局部被曝で、あらかじめ低線量の放射線を浴びておくとその後の生存率が高まることが分かっている。
私の祖国での医療による被曝量は、平均で年間2.25mSvと評価されている。
宇宙線や食べ物や地面の天然の放射性核種から、私たちは常に被曝している。
これら自然の放射線量は、1年間の世界平均が宇宙から0.4mSv、大気中から1.2mSv、大地から0.5mSv、食物から0.3mSvで、すべてあわせて2.4mSv――住んでいる場所や生活習慣によって、年間1~10mSvくらいの幅がある。
―――アルコールもごく微量の放射能を持っている。
植物から作られたものではない、たとえば消毒用のアルコールならふつう放射線は出ない。
それで、ワインやジンやウォッカなどは放射能を調べる――単位量当たりある程度の放射能がなければ、飲料には適さないと判断される。
たばこも放射能を持っている――たばこ一日1箱を吸う人なら、年間9~18mSvの被ばく量になると考えられる。
たばこには、ポロニウム210という放射性同位体が含まれている――半減期138日。
半世紀前、科学者のヴィルマ・ハントはたばこの灰皿に残されたポロニウムを調べてみた。
すると驚いたことに、ポロニウムが全くなかった。
環境中には微量の放射性同位体が存在するのが普通で、これらが背景放射線をだしている。
ハントのそれまでの研究では、有機物中では、ラジウムとポロニウムは共に検出されていた――ラジウムは放射性元素。
このことから、たばこを吸うと気化したポロニウムが肺に入るのだと考えた。
ハントと同僚のエドワード・ラドフォードは、死後数時間以内の肺を調べるなどの困難な研究を続け、それを確認した――気道の分岐点に高濃度に集積する。
その後はたばこにポロニウムが含まれる過程の研究が続けられ、2通りの経路でたばこの葉にポロニウムがたまることが分かった。
1つは、自然に存在するラドン222が崩壊してできる鉛210などがタバコの葉につく――鉛210が、ポロニウム210になる。
2つめは、リン肥料に含まれる天然のウラン238が崩壊してできたラドン222が崩壊してできた鉛210が、土壌を通じて根から吸収される。
また、リン肥料のウランから出たラドン222は周囲の大気に放出されるため、ラドン222の濃度が通常よりも高まる。
それが、1つ目の経路でタバコの葉に沈着する――たばこの葉は細かい毛に覆われていて、それにつく。
たばこの企業もそのことを知っているけど、対策は取っていない。
考えられる対策は複数ある。
まず、ウランの含有量が少ない肥料に変えることである。
純粋なリン酸カルシウムから作った特別な肥料を使った場合、市販のものに比べて、葉のポロニウム量を1/7にできた――肥料からの除去によっても、3~5割は減らせる。
葉っぱを収穫後に洗うことでも25%ほどが落ちる――葉に毛がない品種を作ることでも減らせると思われる。
たばこ自体に添加物をいれて、ポロニウムの気化を防ぐこともできる。
イオン交換フィルターをたばこにつけると、ポロニウムをそこで捕まえる。
たばこは喫煙者だけでなく、家族などへの受動喫煙があり、それによって非喫煙者も被曝を余儀なくされる。
たばこによって誘発される肺がんのうち、2%くらいがポロニウム210の影響だと考えられている――発がんに影響を与える主要な成分は、多環芳香族炭化水素とニトロソアミンなどの化学物質と思われる。
世界保健機関…WHOによると、毎年、世界で117万人ほどが喫煙を原因とする肺がんで亡くなっていると推定している――たばこの影響による死者数は年間500万人以上と推定している。
その2%だと、2万人以上である。
ポロニウム対策の多くは、40年以上にわたるたばこ業界の研究による――ただ、値段が高くなるだろうから実行には移されていない。
たばこは吸わないのが一番だけど、ポロニウムの対策をするだけでもそれによる死者を数千人は減らせるかもしれない。
ちなみに喫煙者が家にいる場合、たとえ家族の前で吸わなくても、壁に付着した粒子によって受動喫煙することが分かっている―――
野菜などの食品に放射線を照射することで、発芽防止や殺菌、殺虫の効果が有り、食品の保存性を高めることができる――食品照射という。
放射線を照射した食品は放射線照射食品と呼ばれる。
様々な食品への放射線照射が行われているけど、私の祖国では今のところジャガイモ以外には照射されていない。
この食品照射については、国連食糧農業機関とWHOと国際原子力機関による、照射食品の健全性に関する合同専門委員会において検討されている。
それによると、平均10kGyの線量までなら、どのような食品に照射しても、食品の安全上の問題はないという結論に達している。
医学の発展に大きく貢献している「無菌マウス」のエサと敷き藁は、放射線で殺菌消毒されている。
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チャポ
原子炉で使われる燃料のウラン235は、天然には同位体であるウラン238の0.7%しかない。
原子力発電はウランの崩壊を連鎖的に起こすことで、エネルギーを得る――核分裂反応による原子爆弾も同じ。
ウランには陽子が92個あり、その原子核は大きい。
核子をまとめている核力…強い力は、非常に強い力だけど届く距離が極僅かである。
それに対して、電荷に対して働く電磁気力は距離の2乗に逆比例して弱くなるけど、どこまでも働く。
原子は全体としてみると電気的に中性だけど、小さい範囲では電気的な偏りがあり、ある陽子と他の陽子全部との間に、反発力が生じる――電荷をもたない中性子が、それを安定させる。
核の陽子の数が多ければ、それだけ電気的な反発力が強くなる。
ウラン235のような原子核の場合、そのバランスがとても不安定で、弱いエネルギーを持った中性子で軽く叩くだけで、核が分裂して飛び散る――分裂のパターンは多く、35種の元素…200種以上の核種ができ、90前後と130前後の核子でできたものが多い。
この大きな2つの核の破片の運動エネルギーが、周囲のものに当たって熱エネルギーになる――熱エネルギーは、乱雑に動く粒子の運動エネルギー。
こうして生じる電気的な斥力によるエネルギーで、原子炉は発電を行う。
ウランの核分裂によって商業的な発電するためには、核分裂反応を連鎖させる必要がある。
そのためにウラン235の濃度をある程度高め、そこに中性子を当てて連鎖反応を起こさせる。
核分裂の際、高い確率で高速中性子が2つ飛び出す――経路のひとつは3つ中性子が出る。
新たに飛び出した2個の中性子は、周囲にあるウランの原子核に当たって、また分裂させる――このため近くにウランがなければならず、その濃度をある程度高める必要があるのである。
すると今度は、2つの核分裂によって4個の高速中性子が飛び出す。
その次は8個、その次は16個と、どんどん核分裂の数が増える――この中性子が倍増していく1回ごとを、世代という。
核分裂の連鎖反応によって生まれるエネルギーは、1世代進むごとに2倍になる――原子炉では制御棒を用いることで、平均して発生した高速中性子の1つを吸収するので、一定の出力に制御できる。
私の祖国に投下された都市攻撃としては世界初の原子爆弾は、僅か1/1000000秒の間に81世代の連鎖反応が進み、TNT火薬16kt…キロトン分の爆発的なエネルギーを出した――81回連鎖した時に、そのエネルギーで爆弾そのものが吹き飛んで連鎖は終わった。
もし後1世代分裂が進んでいれば16ktの倍、32ktのエネルギーが解放されていたことになる――核兵器に用いられるプルトニウムの場合、1世代で通常3個の高速中性子を出すために1世代で発生エネルギーは3倍になる。
このような爆発的な連鎖反応を起すには燃料の濃度を非常に高くしなくてはならず、原子力発電で用いられる燃料の濃度では核爆発は起きない。
燃料の中にあるウラン235は約3%であり、あとはウラン238である。
ウラン238は高速中性子を吸収するので、中性子を減速させて吸収率を下げないと連鎖反応を止める。
そのために減速材が必要で、低速になった中性子はウラン235に吸収されやすくなる――このためウラン235は3%で反応を維持できる。
普通の水を減速材に使った原子炉を、軽水炉という。
重水素を含む水である重水を減速材に使った方が減速効率がよく、この場合はウラン235の0.7%だけ含まれた天然ウランを燃料に使うことができる――CANDU炉と呼ばれる。
したがって、原子炉がどれほど制御不能になっても核爆発は起きない。
冷却水は中性子の減速材としても働いているため、それがなくなるとウラン238に高速中性子が吸収されて、即座に核分裂の連鎖反応が止まる。
原子炉で起きる可能性がある爆発は水素爆発と水蒸気爆発。
水蒸気爆発が起きた場合、事態は非常に深刻であるけど、核爆発のような破滅的な爆発ではない。
原子炉が停止した場合、非常用のディーゼル発電機が動き、冷却システムを作動させる。
原子炉を停止させても、稼動時の3~7%の熱を発する――冷却水を循環させるのに十分な熱である。
この熱はウランの連鎖反応によるものではなく、ウランの核分裂の放射性崩壊によって生じる。
ときどき逃し弁を開いて、加熱した蒸気を外に逃す。
燃料を冷却する水が蒸発しきって炉心が露出すれば、燃料は溶け出し、炉心溶融…メルトダウンが起きる。
このリスクは、燃料の交換が近いほうが高い――長期間核分裂を起しているためで、崩壊熱が多いので冷やすのに時間がかかる。
新しい燃料棒であれば程度は低く、メルトダウンを起しにくい。
融けた燃料は炉の底に落ちて、容器を溶かしだす。
融けて濃度が高まると、再臨界の可能性もある――さらに、温度が上がる。
最悪の場合、2800℃にまで熱せられた溶岩のような燃料が、炉の底を溶かして格納容器の底に落ちて、水とぶつかって水蒸気爆発を起す。
原子炉格納容器は、水蒸気爆発には耐えられない――隙間が出来たり、亀裂が入るだろう。
したがって、放射性廃棄物が環境中に出る。
チェルノブイリは黒鉛減速炉で、設計ミスもあって稼動中の原子炉の連鎖率が高まって温度が上がりすぎて、冷却水を一気に蒸発させて水蒸気爆発を起し、その後減速材である黒鉛を燃やして放射性廃棄物を撒き散らした。
ポチャ
原子炉内の核分裂で新たに生じた2個の中性子のうち、平均して1つは制御棒に吸収される。
だけど一部は燃料の97%を占めるウラン238にも吸収される。
するとγ線を出してウラン239という半減期23分の放射性物質になる。
ウラン239はβ線とニュートリノを放出して、ネプツニウム239になる――半減期は2.3日。
さらにβ線とニュートリノを出してプルトニウム239になる――核兵器に使われる核種で、半減期は2.4万年。
プルトニウムはウランとは違う元素なので、化学処理で分離することができる。
プルトニウムは分裂の際、3つの中性子を新たに出す。
なのでこれをそのまま燃料として使うと、一定の出力を保てない。
生じた中性子をウラン238に吸収させて新たにプルトニウムをつくれば、消費する燃料よりも多くのプルトニウムを新たに作れる。
こうした原子炉を増殖炉と呼び、高速中性子を使って燃料を増やすものを高速増殖炉と呼ぶ。
高速増殖炉は制御不能になった時、メルトダウンではなくて原爆のように爆発する可能性がある。
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チャプ
原子炉に使われる燃料棒は、原子炉が稼働している間は元のウランの100万倍以上の放射能になる。
減速材をなくすか制御棒によって連鎖反応を止めても、ウランの分裂によって生じた分裂片の崩壊によって高い放射能を持っている。
このため新しい燃料棒よりも古い方が危険――使用後の燃料棒は元のウランの10万倍くらいの放射能を持つ。
ただ、この分裂片の多くは短期間で半減していき、1年後には元のウランの8000倍にまで低下する。
100年で100倍程度まで下がり、10000年後には元のウランよりも放射能は低くなる。
この放射能にはプルトニウムの分は入ってない。
プルトニウムは半減期が2.4万年と長く、崩壊によって出るのはα線で皮膚でとまる。
体内に入らなければ危険はないので、私の祖国などは使用済みの燃料棒からプルトニウムを抽出した残りを放射性廃棄物として扱う――合衆国の使用済み燃料には、そのままプルトニウムが含まれている。
多くの研究者は、プルトニウムを危険な放射性元素だとは考えていない。
プルトニウムは水に溶けにくい――17億年前の天然原子炉の跡の周りには豊富に地下水があったのだけど、この17億年の間に石の間に広がったプルトニウムなどの生成物の範囲は10m程度だった。
微粒子になったプルトニウムを肺に吸い込むと危険だけど、地下水の汚染の可能性は低い。
使用済み燃料棒のように放射能が強く、それゆえ発熱に対する考慮を必要とし、その上半減期が非常に長いものを高レベル放射性廃棄物と言う。
そうでないものは低レベル放射性廃棄物という。
もし放射性物質が体の中に蓄積されてしまうと、そこから放射線を長期間浴びてしまうし、放射性物質が生活場所の近くに存在し続けることでも、長期間の被曝を余儀なくされる。
人の体を構成する粒子は脳細胞も含めて、1年で98%ほどが別のものに入れ替わるので、短期間に大量に体内に入らなければ問題ない――末端の神経細胞や腱、ヘモグロビンの中心の鉄などは、数年かかる。
原子炉が出す放射性廃棄物のうちで危険なもののひとつが、ヨウ素131で、半減期が8日であるため短期間に大量の放射線を出す――体の外に出るまでの間に、沢山の放射線を浴びることになる。
このヨウ素131が体内に入ると、のど元にある甲状腺にたまり、甲状腺がんの原因になる。
それで、ヨウ素131による被爆が懸念される場合、非放射性のヨウ素剤を服用することで予防できる――甲状腺が非放射性のヨウ素で飽和されると、放射性のヨウ素がそれ以上たまらないからである。
ヨウ素131の半減期は8日なので、ヨウ素剤の服用は数週間でいい――ヨウ素剤で予防できるのは、ヨウ素131に対してだけである。
原発で事故がおきたときに注意する必要がある放射性物質としては、ストロンチウム90がある。
これは半減期が28.8年で、人の一生に渡って放射線を出し続ける。
微量の放射性物質であっても、環境中に放出されると食物連鎖を経て、食物連鎖の上位に物質が蓄積される生物濃縮が起こる。
だから、原子炉などから出る放射性廃棄物の環境中への放出は、厳重に管理されている。
通常、放射能を持たない物質が放射線を照射されても、放射性同位体からの汚染の可能性が無い限り放射能を持つことはない。
だけど放射線のエネルギーが著しく高い場合には、原子核が励起されて放射性物質に変換され、放射能を帯びる可能性がある。
このようにして生じた放射能を誘導放射能と呼び、自然の放射能とは区別する。
原子炉では、高速中性子による誘導放射能が出る。
原子炉の構造材などの誘導放射能は、点検保守時の作業者の被曝線量や、放射性廃棄物の量に直接関連するため精力的な研究が行われており、その結果かなり正確に評価できるようになっている。
ォォォォ ―――
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ニャ~
黒猫が鳴いた。
魚がたべたいのかな。
「・・・」
見ると、私をみた。
タ
「マロックさん見ててください」
「ミュ♪」
「うん」
タ
♪ ♪
バレッタさん達が来て、オッドネコを置いて行った。
「ミィ♪」
シロネコも。
白玉かわらび餅をつくるのかな。
必要なら、私もホットケーキを焼く。
マッチョさんはもう炭に火を点けようとしているみたい。
「・・・・」
もう少し魚をみてよう・・・・
ポチャン
チャプ
ォォォォ ・・・・・
ザヮヮヮヮ ・・・・・