トタン1

2016年10月16日 18時12分52秒 | マーロックの雑記

                                        ザァァァァァ   ・・・・・・・

                   パチチ

「温かい」

「ミィ♪」

火が燃える・・・

               ポチャ チャ

黒猫が小屋を見つけた。

木の小屋で、中には落ち葉を集めたりする道具があった。

小屋の横は、壁はないけどトタン屋根がある。

そこにたき火に使っているらしいドラム缶があった。

薪も。

きっと、近くの人がたまに落ち葉の掃除をしたりしているんだと思う。

獣道もあって、舗装路も近いと思う。

ただ雨がすごいし、ライターもあったからドラム缶を借りてる。

             パチチ  ・・・

イスも何個かあるので、ノロマさんとシロネコ達がその座って温まってる。

「・・・」

黒猫は、屋根の端の方で雨を見てる。

               ポチャ

        ――

人の数は70億を超えた。

その共通の祖先は、2~3万年前頃に生きていたと思われる――計算によるもの。

細胞内のミトコンドリアは常に母親から受け継ぐので、そのDNAを追うことで母系を辿った「共通の母」を推定することもできる――およそ16万年前だと思われる。

同じ様にDNAの変化を調べて行けば、それ以外の生き物との共通の祖先が生きていた時代もおおざっぱにわかる。

4.4億年ほどさかのぼれば、海や川でよくみる魚たち…条鰭類との共通祖先が生きていた――ざっくりと1.95億代前の祖先。

さらにそこから2000万年前に、サメたちと合流する。

もっとおおざっぱに、その倍くらい遡ると中原生代後半にトリュフなどを含む菌類との共通祖先が生きていた。

それより前にアメーバと粘菌類、さらにそれより前に植物との共通祖先にたどり着く。

植物とは遠い親戚になるけど、それよりも過去に分かれた古細菌や真正細菌からみれば近縁になる――植物と動物くらいの差を持った集団が、いくつもある。

これらの細菌は、数でも多様性でも私たち動植物をはるかに上回る――植物と菌類は私たち動物と同じ真核生物のドメイン…大きな分類で、細菌は真正細菌と古細菌のドメインに分類されている。

私たちの体は、30兆個を超える細胞でできている――血液に含まれる赤血球をのぞけば10兆個くらい。

人の体に共生している細菌などの微生物は、腸内だけで100兆個を超えている――細胞の数も遺伝子の数も、自分自身よりも共生する微生物群の方がずっと多い。

私たちは位相幾何学…トポロジーでは輪っかのドーナツと同じ分類になる――種数1のトーラスという。

口から胃、腸へとつづくトンネルがドーナツの輪っか部分になる。

なので胃や腸は体の外だと考える――内臓や血管、筋肉がある部分が体内になる。

腸にも胃にも、手のひらにも腕にも顔にも、私たちの体の表面には密度の差はあるけど微生物が共生している。

これらの微生物が、私たちの健康を維持するのに大きな役割を持っていることが分かって来た――悪影響を与えるものもいるけど、普通は害のない場所で生きており、近年の研究によると少なくともその一部は、外から侵入しようとする微生物を排除しているらしい。

以前は細菌が植物と同じ分類だったのでこれらをフローラと呼んでいたけど、現在はマイクロバイオータと呼ばれている――これらの微生物群とその発現遺伝子群、そして私たちの相互作用を含んだ系をマイクロバイオームと呼ぶ。

マイクロバイオータは個人によって差があり、3歳頃の構成が大人になっても保たれる事が多い――個人のDNAよりも差がはるかに大きいけど、ある個人の左手と右手の組成はよく似てる。

私たちの免疫系の発達と維持に、マイクロバイオータが重要な影響を与える様なのである――共に進化してきたので、それを前提として免疫が正常に働くようになっているのだと思われる。

先進国では、花粉症や喘息に食物アレルギーに自己免疫疾患など、免疫系が過剰に反応する病気が急増している。

消化管疾患やうつ病に肥満、自閉症など、現在増えている病と免疫系の関係も疑われている。

こうした病気が増加が表面化した時期はそれぞれ違うけど、増え始めた時期は抗生物質の投与が始まった70年前ごろにさかのぼる。

かつては擦り傷や軽い切り傷から感染症になり、命を落とすことも珍しくはなかった。

抗生物質は非常に多くの人の命を救う。

ただ、現在は過剰に使用されすぎていると思われる。

―――現在はがんと心臓病と脳血管の疾患で死亡する人が多いのだけど、100年以上前は肺炎と結核と感染性下痢症で亡くなる人が多かった。

抗生物質が普及し始めてから、感染症で亡くなる人は減る。

予防接種も大きな恩恵をもたらした――220年前にエドワード・ジェンナーが天然痘の予防接種を確立したのが最初で、それに近いことはそれ以前から知られていた。

国家は大きな費用をかけて子供に様々な予防接種をすることで、その後の医療費を大幅に削減できる。

免疫を持った人が増えて原因となる微生物が根絶されれば、予防接種も必要がなくなる。

病院の衛生状態が改善されたのも、感染症の拡大を抑える一因となった。

180年前ごろ、感染症の原因は微生物ではなく「瘴気…しょうき」と呼ばれる空気だと信じられていた。

なので医者や看護師が防げるものではないと思われていて、清潔にすることの重要性は理解されていなかった――微生物自体はずっと前から知られていたけど、病気に関係があるとは考えられていなかった。

傷を開いたままほっといたり、外科医の上着には古い血糊が残ったままだった――ごわごわで悪臭の上着は、それを着る医師の経験と技量の高さを示すものだとされていた。

多くの人が近代医療を受けれるようにと作られた病院だけど、実際には病院で感染症が広まった。

特に被害を受けるのは女性で、出産のために病院に行くと30%以上の確率で産褥熱で亡くなる――出産や流産のときに女性の命を奪う感染症。

当時は男性医師しかおらず、高い死亡率は女性の弱さだと考えていた。

イグナーツ・ゼンメルヴァイスは、本当の原因を探ろうとした。

彼の病院では、医師と助産婦が1日おきに別の診療所で出産の対応をしていた。

助産婦の診療所では、産褥熱の死亡率が2~8%と低かった。

このため助産婦の担当の日に産みたいと、病院の外で女性たちが痛みに耐えてそのまま外で産み落とすことも多かった様。

産褥熱で亡くなった女性を検死解剖していた同僚が、あやまってメスで自分の指を切り、その後同じような症状で死んだ。

それにひらめいたゼンメルヴァイスは、医師が産褥熱の原因を運んでいると考えた――それが何なのかはわからなかったけど。

医師は検診の間、医学生の指導のために検死解剖をしていた。

助産婦の診療所で死亡する人も、産後出血のために医者の往診を受けた患者だと思われた。

医者は死体の悪臭を取り除くのに、塩素化石灰の溶液で手を洗っていた――プールの消毒などに使うカルキ。

ゼンメルヴァイスは検死解剖と診察の間に、その溶液で手を洗うように指導した。

1か月で医師の診療所も助産婦の診療所と同じ水準まで死亡率が下がった――別の2つの病院でも同様の成果を出した。

だけど医師が患者の命を奪っているという説は多くの医師に受け入れられることはなく、ゼンメルヴァイスは相手にされなくなる――このため、女性が出産の際に死亡する確率は高いままだった。

ゼンメルヴァイスは医者たちを罵倒し、自説の正しさを訴えて情緒不安定になった。

同僚が何か口実を付けて彼を精神病院に呼び出し、暴れたゼンメルヴァイスを守衛が集団で殴打し、熱病になって2週間後に亡くなった――傷口から感染症にかかったと思われる。

その後、ルイ・パスツールによってゼンメルヴァイスの正しさは証明された。

消毒液で手を洗う外科医は増えていく。

そしてジョセフ・リスターがそれを衛生習慣として定着させる――彼が執刀した患者は45%が死亡していたけど、石炭酸で器具や包帯や傷を洗うようにしたら15%と大幅に減った。

同じころ、公衆衛生も改善される。

連合王国でコレラが流行して多くの人が亡くなっていた時、ジョン・スノーが初めて疫学調査を行い、汚水に汚染された水が原因だと示した――彼も瘴気を信じていなかった。

同じ井戸水を使っているのに修道院ではコレラにかかる人がいなかった。

その理由が、井戸水をビールにして飲む習慣のためだという事もわかった。

彼は塩素で水を消毒し、この方法はすぐに各地に広がる――ちなみにAB型の人はコレラに非常に強い。

そして76年前、ハワード・フローリーとアーネスト・チェーンのチームが最初の抗生物質であるペニシリンの生産に成功し、多くの命が救われるようになった―――

                   パチン  ――

ある種の細菌やウイルスが人の中に侵入し、制御範囲を超えて増殖すると感染症になる。

天然痘や麻疹、結核、ペスト、ポリオ、コレラ、チフス、インフルエンザ、ジフテリアなど、感染症は多くの命を奪っていた――戦争による死者よりもずっと多い。

そうした病原体は家畜や野生動物から持ち込まれる事もあり、ネズミも病原体をもつノミを運ぶ――食料庫をネズミから守り、感染症のリスクも低減させてきたであろうことから、ネコは人の命をかなり守ってきた。

                          ミャ~

ずっと昔、狩猟採集生活を送っていた頃は、そうした感染症が現れてもひとつの集団で流行して終わる。

周りに感染するべき人がいなくなるからだけど、潜伏感染は別――病原体が脊髄や脳に数十年潜伏し、孫の代に体外へ出て感染を再開する。

農耕が始まって人が村に集まる様になって、感染症のリスクは高まった。

普通は、高齢者や小さな子供、すでに別の病気で弱っている人が犠牲になりやすい。

だけど若い人は、免疫反応が強すぎて死に至ることもある――このため、現在はこのような場合はサイトカインという免疫を高める伝達物質を抑える対処が有効になっている。

抗生物質は、細菌感染症の脅威に対抗する。

100年ほど前、メアリー・マーロンという女性が裕福な家庭でコックをしていた。

その家で腸チフスが流行したので別の家のコックになったのだけど、そこでも腸チフスが流行した。

当時は腸チフスの患者は多く、25%ほどが死亡した。

医学者のジョージ・ソーパーは、メアリーが流行源だと突き止めた。

メアリーは不顕性感染者で自身は健康で症状はないけど、病原体を排泄していた。

まだそのような知識が一般的ではなく、彼女は無実を訴えた。

監禁から仮釈放されると、メアリーは行方不明になった。

しばらくして、また腸チフスが流行る。

ソーパーはまたメアリーを発見する。

彼女は犯罪者ではないけど、街にとっては脅威であった。

結局、その後は街の近くにある島の刑務所で過ごす。

もし抗生物質があったら、メアリーと彼女が感染させて亡くなった人たちは別の人生を歩めた。

                パチチ

最初の抗生物質であるペニシリンは、ぺニシリウム属というカビが生産する。

古代から、一部の地域ではカビを傷の治療に使う伝統医療はあった様。

アレクサンダー・フレミングは、細菌を殺す方法を探していた。

ペトリ皿に細菌と餌をいれて培養する。

すると細菌は、肉眼でも見えるほどのコロニー…集団をつくる。

フレミングは、白血球や唾液に含まれる酵素で細菌を殺せるかの実験をした。

そして、唾液中のライソザイムを発見する――細胞壁を壊すことで、細菌を溶かす。

そして88年前の8月に、フレミングは休暇をとって別の国に行った。

9月に帰ってくると、放置されたペトリ皿を何枚か見つける。

廃棄しようとすると、その1枚に青緑のワタの様なものが生えていた。

パンによく生えるぺニシリウムで、そのカビの周囲に細菌がいない事に気付いた。

このカビはぺニシリウム・ノタータムで、その後の数か月で、フレミングはそのカビの培養に成功する。

液体の培地をフィルターに通して、世界で初めてとなる抗生物質を集めてペニシリンと名付けた――これは細菌が細胞壁を作るのを阻害する物質。

ただ、量が少なかった。

すべてのぺニシリウム・ノタータムがペニシリンを生産するわけではない――活性期間も短く効果も遅い。

実用化の方法を発明できず、フレミングはそれを公表する。

精製していないものを患者に投与したけど、効果はなかった。

それで、フレミングはこの研究を断念する。

今から84年前、ゲルハルト・ドーマクは、プロントジルという赤色染料に抗菌物質が含まれることを気づく――発見自体は、その20年前。

これは人工合成の物質で、最初のサルファ剤…スルホン酸アミドだった。

そしてサルファ剤系の薬剤が開発される。

持続可能な抗菌効果が期待でき、副作用も許容範囲内だった。

ただし、効果は限定的なものだった。

そして第2次世界大戦がはじまる。

多くの兵士が感染症で亡くなる。

強い殺菌効果のある薬剤の開発が急がれた。

76年前、ハワード・フローリーとアーネスト・チェーンのチームが、忘れられていたペニシリンの効果的な生産方法の開発を始める。

フローリーの妻の医師エセルが、警官のアルバート・アレクサンダーにペニシリンの投与を頼んだ――アレクサンダーはバラのトゲでひっかいた傷から感染し、顔がひどくはれ上がって片方の目を摘出するほどの状態だった。

少量のペニシリン投与から24時間で、熱が下がった。

症状は良くなっていったけど、尿からペニシリンを回収しながらの利用では量が足りず、5日目に亡くなった。

彼らの研究室のある街は爆撃されていたので、合衆国に移る。

―――74年前、当時33歳だった看護師のアン・ミラーは産褥熱に苦しんでいた。

高熱が1か月も続き、41℃を越える体温になっていた――幻覚も現れ命が尽きかけていた。

主治医は、少量のペニシリンの入手に成功する。

飛行機で運ばれてミラーに投与され、数時間後に彼女は回復を始めた。

熱が下がり、幻覚が消え、やがて食欲も戻った――1カ月後には完全に回復した。

わずか5.5gのペニシリンによる奇跡だった――当時生産されていたペニシリンの半分に相当する。

ペニシリンはあまりにも希少だったのでミラーの尿が集められ、製薬会社に送り返された――ペニシリンを抽出して、他の患者のために精製する。

その後、ミラーは90歳で亡くなる―――

                     ポチャ  ポチャ

合衆国に移った研究チームは、カビの発酵の研究をしていたチームとの共同研究に力を入れる。

そして研究者たちは、知り合いにカビの生えた果物や野菜、穀物、土壌のサンプルを送ってくれるようにメッセージを送る。

カビを探すための女性もひとり雇われた――彼女は青カビを求めて、市場やパン屋、チーズのお店を探しまわって頑張った。

そしてある主婦が、カンタロープというメロンを持ち込んだ。

このメロンに生えたカビは、それまでの60倍以上の効率でペニシリンを生産した。

そして、そのカビの変異株のひとつが、さらにその200倍の効率を達成した――当初の効率からみれば、12500倍。

今から73年前の事で、現在のペニシリンを生産するカビは、すべてこのカビの子孫である。

続いて製薬会社が、糖蜜を使って、ペニシリンの大量生産に成功する。

その後、ストレプトマイシン、テトラサイクリン、エリスロマイシン、クロラムフェニコール、イソニアジドなどの抗生剤が開発される。

さらに、自然の物質を化学修飾して作る半合成薬、そして完全な合成薬の開発も行われる――厳密には生きたカビなどから生産される物質を抗生物質と言うけど、専門家はこうした合成薬も便宜的に抗生物質と呼んでいる。

抗生物質によって多くの感染症が克服され、外科手術の術前に抗生物質を投与することで、安全に手術ができる様になった。

回復した患者は、新たな感染源となることもなくなった。

がんの治療に抗がん剤を用いる場合も、感染症のリスクが高まるので抗生物質が必要である。

抗生物質は、3つの方法でその効果を発揮する。

ひとつはペニシリンの様に、細菌が細胞壁を作るのを阻害する。

2つめは、細菌が生きるのに必須のタンパク質の合成を阻害する――人のタンパク合成には、大きな影響は与えない。

3つ目は、最近の増殖を邪魔する――やがて宿主の免疫が、細菌を排除する。

病原体の方も多様性があり、ある抗生物質に対しては耐性をもつものもいる――このため、複数の抗生物質が投与される場合もある。

効果は限定的なものから、出会った細菌を次々死滅させる広域のものまである。

そして極まれに、抗生物質にアレルギーを示す人もいる。

クロラムフェニコールという抗生物質は、40000回に1回くらいで、致死的な副作用があった。

このためクロラムフェニコールの使用は中止された――ただ、非常に強力な抗生物質ではある。

                        パチン

口の中にもたくさん微生物はいて、歯肉と歯の間辺りは密度が高く大腸に匹敵する。

ほとんどは嫌気性菌で酸素を嫌う。

寝ている間は鼻で呼吸することで口腔内の換気が低下し、こうした嫌気性菌が増殖する――これが口臭のもとになる揮発性の物質を生産する。

朝、歯磨きすればこれらの菌は減る。

こうしたことは肌でも起きていて、肌のうるおいを保ったり有害な微生物の侵入を防いでいる。

赤ん坊と母親は、互いにそのにおいを覚えている。

蚊に刺されやすいかどうかも、体のにおいで決まる。

胃にはピロリ菌を持つ人が多い――酸やホルモン生産、免疫維持に重要な菌。

ただ、子供のころから抗生物質を使う頻度が増え、先進国では保菌しない人も増えている――また胃がんのリスクを高めるので、病院では積極的にその除菌を勧められる場合が多い。

花粉症や喘息、肥満や胸やけなど、ピロリ菌がいないことによってそのリスクが高まるらしい事が分かった――逆流性食道炎のリスクが高まり、その結果食道がんのリスクも高まる。

私たちがたべたものは胃で混ざって、少しの消化酵素を加えられながら酸で有害なものを壊す。

その後の小腸で多くの酵素で食べ物を分解し、小腸壁から分子を血液中に入れる――多くの栄養素を吸収する。

ここにもマイクロバイオータはいるけど、数はすくない――栄養を吸収する邪魔になるからだと思われる。

残ったものは大腸に行く。

最もマイクロバイオータの密度が高く、私たちが分解できなかった食べ物を餌にして生きている。

そこで短鎖脂肪酸に分解されたものを、私たちが吸収する――私たちの5~15%のカロリーが、そこで吸収される。

腸マイクロバイオータの総遺伝子数を調べると、個人差があることが分かった――ヨーロッパでの研究で、292人が対象。

77%の人が、腸マイクロバイオータに固有の遺伝子を80万個ほどもっていた。

残りの人は約40万個で、この集団は肥満傾向にあった。

大腸の入り口に盲腸があり、その先に虫垂が垂れている――虫垂の長さは2~25cmで、稀に2つ持っている人や全くない人もいる。

ここが炎症を起こすとけいれん痛が出て、治療を受けなければ半数くらいが死亡する――生涯で虫垂炎になる人は5~10%で、10~20代の人で発症する人が多い。

ダーウィンが生きていた時代、虫垂炎は稀で、それで死亡する人はあまりいなかった。

それで、虫垂は食生活の変化によって退化した痕跡器官ではないかと考えた。

この説への反論はほぼ無く、100年の間疑う人はほとんどいなかった。

そして虫垂炎のような問題も起こすので、半世紀前頃には先進国では虫垂を切除する事が増えた――別の手術で開腹した際にも、ついでに虫垂を切除することがあった。

なぜ虫垂炎が増えているのかはわかっていない。

繊維質をあまり食べなくなった事が最大の原因だという説が、現在では広く支持されている様――新しい仮説もある。

虫垂が痕跡器官なのに、子孫を残す前の若者が虫垂炎で死亡するリスクがあるなら、自然選択は虫垂をなくす方に圧がかかるはずである。

昔は虫垂炎が少なかったから、有益でも有害でもないので虫垂が残ったとも考えられる。

だけど実際には虫垂炎になるリスクを上回る利益があるために、積極的に虫垂は残っていると考えられている。

虫垂の長さは平均8cmで直径は1cm、消化管の食べ物の流れを邪魔しない位置にある。

この中には免疫細胞と分子が詰まっていて、微生物がバイオフィルムをつくって敵となる細菌などの侵入を防いでいる。

虫垂は人が微生物に用意した家らしいのである。

赤痢やコレラなどの消化管感染症で多くの人が亡くなっていた時代、死なずにすんだ人は虫垂に隠れていた微生物のおかげで回復が速くなる――現在でも世界の子供の死因の25%くらいは感染性の下痢症。

食中毒や感染症で消化管が荒れた後、虫垂からいつもの微生物が移住してそれ以前の状態に戻る。

現在の先進国は衛生水準が高いので、このような役割を必要とする機会が減った。

ただし先進国であっても、少なくとも成人になるまでは虫垂を持っていた方が良い様。

血液のがんや免疫機能障害、消化管感染症に自己免疫疾患、心臓発作の予防効果があるとわかっている。

            zzz

                       

先進国では5人に1人くらいが過敏性腸症候群で、多くが女性――海外で寄生虫によって炎症を起こした人は、7倍過敏性腸症候群になりやすい。

患者の多くは激しい腹痛と発作的な下痢のせいで、行動に制限がかかる。

便秘とそれによる腹痛が数週間続く人もいる――ただこの症状の人は、家から出たりとまだ自由に行動はできる。

人工透析が必要な腎不全やインスリン注射が必要な糖尿病は、生活の質を大きく下げる。

だけど過敏性腸症候群は、管理の仕方が分からないという点でそれ以上に生活の質を下げる。

多くの人が下痢のことは話そうとしないので、この病の急増があまり表面化しない。

胃腸科に来る人の半分が、この症状を訴えている。

過敏性腸症候群の患者の腸は、健康な人と同じでピンク色をしていて見た目では原因が分からない。

ストレスを受けると症状が悪化するので、ストレスが原因だとされる場合が多い。

私たちは短時間で排便をすませれるように進化しており、現在の有病率の高さは何か他にも原因があると思われる。

抗生物質での治療中にこの症状が出る人もいる――抗生物質で下痢の副作用が出ることはあり、その後も下痢が続くことがある。

さらに、過敏性腸症候群の治療に抗生物質が使われることもある――症状を数か月抑えることができる場合もある。

おそらく抗生物質でマイクロバイオータの組成が乱れ、その乱れが長期間崩れたままになっているのだと思われる――まだ断定はできない。

DNA解析で、腸内の微生物の種類と量が分かる。

過敏性腸症候群の人のマイクロバイオータは、健康な人と組成が変わっている――健康な人と変わらない組成の人もいて、こうした人は心理的なものが原因だと思われる。

便秘や下痢など、症状によって増えている微生物の種類も判明した。

そして過敏性腸症候群の人はマイクロバイオータが不安定で、その組成が変わりやすい。

―――過敏性腸症候群の患者の腸には潰瘍はないけど、別の所に炎症はあって、腸壁から水分を出して洗い流そうとしている様。

これは、コレラなどで下痢になる場合に似ている――病原菌を外に出すのに都合がよく、病原菌も外に出て新たな宿主に入る機会を得ることができる。

腸の細胞はたんぱく質の中に入っていて、腸から血液に移動する分子を調べる。

ただ必要な時は、このたんぱく質を緩めて物質の移動をスムーズにする――細胞によって調べられることなく、様々な分子が腸と血管とを移動する。

血液から腸に水分が押し出されると下痢になる。

コレラ菌の場合、それぞれがコレラ自己誘導物質1…CAI-1という物質をすこしだけ出す。

増殖することでCAI-1の濃度が高まると、AI2を出して腸壁に張り付くための遺伝子の働きをとめる。

続けて腸壁を緩める様に作用する遺伝子が働き、出て来た水と一緒に体外に出る。

マイクロバイオータのバランスが崩れると、この時と似た状態になって、人が自分で作るたんぱくで腸壁を緩めて下痢になる。

このとき、逆方向にも様々な分子が体内に入って炎症の原因になる―――

           ミャ~

冬虫夏草という昆虫に寄生する菌類がいる。

この菌がアリに入るとアリは働くのを止めて、地面から150cmくらいの高さまで木の幹を上り、北側にある葉脈を見つけて食いつく――そのまま死ぬまで動けない。

アリを乗っ取った冬虫夏草はその中でエネルギーを得て数日後、芽を出して細長い管を伸ばす。

そして胞子をばらまき、下にいる新しいアリに寄生する。

宿主の行動を変える事を高度な知能でやっている訳ではなく、そのような遺伝子を持ったものが繁殖に成功しやすいので現在まで受け継がれているのである――子孫を残すのに成功した遺伝子だけが次の時代に生き延びるので、宿主の操作はどんどん洗練されていったと思われる。

毛様線虫が寄生した昆虫は水に飛び込んで死に、毛様線虫は泳いで体から出る――生殖のために水場に行く必要がある。

狂犬病ウイルスに感染したイヌは、ウイルスのまじった唾液を泡立てながらウロウロする――けんか相手を見つけたら噛みつき、ウイルスは相手に移る。

トキソプラズマという微生物に寄生されたラットは、通常と違い明るい場所や広い場所を怖がらなくなる。

ネコの尿にひきつられるように出ていき、たべられる――そしてネコの中で生きる。

トキソプラズマは人にも感染する――ネコのトイレ掃除のときなどに、傷口から感染する場合もある。

セーヌ川のある国の首都で、妊婦を対象にトキソプラズマの検査が行われた。

すると84%が感染していた――ほかの都市では、もっと割合は低い。

妊娠中にトキソプラズマに初感染すると胎児に危険があるためで、それ以外の成人であれば健康への影響はめったにない。

ただ性格を変える様である。

男性が感染すると内向的になり、女性が感染すると明るくおおらかになって、決断力と心の広さを持つ様になる。

そして男女とも集中力が切れやすくなり、ある調査では感染者は交通事故を起こす確率が3倍になる――別の国では4倍。

トキソプラズマに初めて感染したとき、幻覚や妄想の症状が出る人がいる。

このため統合失調症と誤診される場合がある――ただ、統合失調症の患者はトキソプラズマへの感染率が3倍高い。

また、トゥレット症候群や強迫性障害の患者にトキソプラズマ感染が見つかる例も増えている。

腸の神経細胞は多く、脳につながっている。

腸のマイクロバイオータが人の脳に影響を与えている可能性については、長く無視されていた。

今世紀になる頃になると研究対象になり、すると次々と関連があることが分かって来た。

ある女性は18歳まで健康で明るく、試験のために勉強していた。

それが数日でけんか腰になって人づきあいが悪くなり、性的にだらしない性格になった。

女性は統合失調症と診断され、薬をもらった。

3か月後に症状は悪化し、嘔吐と下痢が続くようになる。

医師は脳の生研を行い、微生物が原因であると突き止める。

ウィップル病というめずらしい感染症で、行動が激変することで発覚する。

この女性は最初の症状が出たときに、胃腸の症状も出ていた――ウィップル病の患者は、腹痛や下痢を訴えて病院に来ることが多い。

ただ脳の症状が出ていたので、医師が見過ごしてしまった。

実験用のマウスには、品種のようなものがある。

臆病な系統もあれば、活発で群れるのが好きな系統もある。

5年前、2種のマウスで性格の取り換え実験が行われた――あるマウスに抗生物質を与えて腸のマイクロバイオータ組成を変えると、以前より大胆になったという発見がきっかけ。

研究者は2種のマウスの腸内マイクロバイオータを移して、箱の中の台に置いた。

そして周囲の探索に出るまでの時間を測った。

冒険好きのマウスは臆病になり、それまでの3倍の時間がかかるようになった――そして臆病だったマウスはすぐに台から降りるようになった。

ちなみに、無菌マウスは単独行動を好む。

                     zzz

翼に袋を付けたコウモリのオスは、細菌の力を借りてフェロモンを出す――手に入る25種の細菌から、1つか2つを袋の中で繁殖させる。

25年前、ショウジョウバエを2つの集団に分けて、餌を変えて育てる実験が行われた。

片方の集団には麦芽糖、もう片方にはでんぷんを餌として与え続けた。

25世代を経て再び一緒にすると、同じ集団としか交尾をしないようになっていた――当時はなぜそうなるのか分からなかった。

そして、6年前にジル・シャロンが同様の実験をして、エサの種類を分けて2世代で同様の結果を得れることが分かった。

食生活がマイクロバイオータを変え、フェロモンのにおいを変えるのだとシャロンは考えた――ハエの場合ラクトバチルス・プランタルムという単一種で、これはフェロモンに相当するハエの体表の物質を変える。

選り好みをするようになった2つの集団に抗生物質を与えると、交尾する相手は選ばなくなった。

無菌化したハエに再び2種類のマイクロバイオータを入れると、再び相手を選ぶようになる。

人の女性が、自分とは違う免疫を持っている男性のにおいのTシャツを好むという実験はよく知られている。

ただ、経口避妊薬…ピルを常用している女性は、自分によくにた免疫をもつにおいを好むようである。

55人の健康な人を対象に、細菌が2種類入った棒のお菓子を食べる実験が行われた。

2つのグループの内、片方には細菌の入っていない棒のお菓子を食べてもらった――プラセボ効果を知るため。

1か月後のアンケートでは、細菌をたべたクループでは幸福感が増して怒りと不安を感じることが減っていた。

神経伝達物質のセロトニンが影響を与えていると思われる――睡眠や学習などに関わっていて、濃度が高まるといい気分になる。

腸には、セロトニンを生産する細胞が多い――およそ80%を生産し、腸がスムーズに働くようにしている。

ただ1割ほどは脳にあり、気分や記憶に影響を与えている。

私たちの腸管には、1億以上の神経細胞がある。

腸管壁に末端を持っており、腸の状態や満腹かどうかなどの情報を迷走神経を通じて脳に送っている――トイレに行くべきだという信号も。

齧歯類での実験では、こうした腸から脳への信号が、認識の発達や気分に影響を与えるらしい事がわかった。

―――右側の前頭葉を損傷すると、グルメになる。

脳を損傷した2人が、異常なほど食べ物に凝るようになったことで発見された。

その後、美食家36人の脳をスキャンすると、34人の右前頭葉に損傷が見つかった――このメカニズムはまだ分からないことが多いけど、前頭葉のセロトニンの量が影響している様。

視床下部側面のセロトニンの濃度が高まると食欲が無くなり、濃度が下がると食欲が出る―――

生きた細菌をたべると、トリプトファンの血中濃度があがる。

トリプトファンはセロトニンに直接変わるので、幸福感には必要な物質になる――トリプトファン不足は、セロトニン不足を意味する。

うつ病の人はトリプトファンの血中濃度が低いことが多い――トリプトファンの含まれる食べ物を食べなくなると、一時的に重度のうつ病になる。

細菌をたべると、それがトリプトファンを破壊する免疫の反応を抑える。

アレルギーと同じように、うつ病も免疫の機能不全が原因の可能性がある。

うつ病の治療に、迷走神経の刺激装置が使われることもある。

詳しい仕組みは分からないけど、十分な刺激が加われば気分がよくなる様なのである。

腸内の神経細胞はマイクロバイオータと接触していて、その中には神経細胞に作用する物質を生産するものもいて、迷走神経を刺激する。

ガングリオシドという、神経細胞の皮膜に使われている小さな分子を生産する細菌もいる。

ガングリオシド生産やセロトニン生産に影響を与えているかもしれない細菌は、抗生物質の投与で少なくない影響を受けるだろう。

それが、脳が急速に発達している新生児なら影響はより大きいかもしれない。

自閉症が急増している合衆国では、幼いころから抗生物質を頻繁に投与される――自閉症の人は血中のセロトニン濃度が高い。

自閉症の人は、そうでない人と脳の働きが違う。

以前は、病名もないような稀な病気だった――70年くらい前に、レオ・カナーが最初の報告をする。

50年くらい前に最初の調査が行われたとき、2500人に1人の割合だった。

合衆国の疾病管理予防センター…CDCが正式に記録を取り始めたのは16年前で、自閉症スペクトラムの診断を受けた子供は8歳で150人に1人にまで増えていた。

6年前には68人に1人にまで増えた。

このペースが続けば、4年後には30人に1人になる。

男児に多く、これまで診断されていなかったケースも多かったと思われるので、自閉症の認識率の高まりが数字を上げている点もある。

20年以上前、ヨーロッパや合衆国にアフリカから多くの難民が移住した――内戦のため。

祖国では自閉症の有病率は極めて低かったのだけど、移住先で生まれた子供は先進国並みに急上昇した――このため、彼らは西洋病と呼んでいる。

                               ポチャン

              パチ チ  ・・・

24年前、3人の子供を産んでいたエレン・ボルトは4人目の男児をアンドルー産んだ。

15か月で医師の診断を受けたときに耳感染症だと診断される。

医師は抗生物質を投与した。

―――乳幼児は耳感染症で抗生物質を投与されることが多い。

感染が悪化すると言語を覚える時期に難聴になったり、乳様突起炎になって聴覚を失うことがある。

ただ、乳様突起炎になるのは耳感染症の子供50000人に1人の割合で、乳様突起炎になってもほとんどの場合で自然に回復する――乳様突起炎の死亡リスクは1/10000000。

医師が万が一のために処方するのだけど、抗生物質を投与した後に生き残る耐性菌の増殖リスクの方が大きいと思われる―――

10日後の再診でまだ治っていなかったので、さらに10日間別の抗生物質を投与した。

その後も再発を繰り返し、3度目4度目の治療を受けても改善しない。

アンドルーの聴覚に異常はないようだし不快感も感じていないようだから、エレンはこれ以上の治療に疑問を持った。

だけど「万が一のことがあるといけないから」と医者に言われ、指示に従った。

そのころにアンドルーの下痢が始まった。

よくある副作用なので、そのまま30日間の抗生物質投与を受けた。

この期間中に、アンドルーの行動に変化が出た。

最初はふらふらしていてかわいかったらしいけど、1週間も経つと、不機嫌になったり怒ったり叫んだりするようになった。

下痢は止まらず、粘液と未消化の食べ物も出てくるようになった。

それ以前は話していた言葉も話さなくなり、つま先で歩いたり母親と目を合わそうとしなくなる。

エレンは耳の専門医に行き、医師は液体を抜いて感染症は治っていると診断した。

ただ、アンドルーの行動は悪化していき、手足が細くなりお腹だけ膨らんできた。

ずっとスイッチをカチカチしたり、鍋などに以上に執着するようになった。

他の子供には関心を示さず、叫び声をあげる。

医師を渡り歩き、2歳1か月で自閉症と診断された。

自閉症は先天的なものだと思われていたけど、エレンはそれを疑った。

それまでに3人の子供を育てていて、アンドルーも産まれたときは正常だった。

医師は兆候を見逃していただけだと説明した――そしてもう治らないと。

エレンはこれに納得せず、自ら調べることを決意する。

この10年前ごろには、自閉症の原因は冷淡な母親のせいだという説が支持されていた。

アンドルーが診断されたころは、遺伝子が原因だという説が支持されていた。

プログラマーの経験のあったエレンは、論理的に物事を見る訓練を受けていた。

アンドルーの様子を観察することから始めて、図書館で勉強をした。

医師をめぐるのは続けていて、ある医師の助言に従って論文を読み始め、徐々に理解できるようになった。

そして、抗生物質投与後のクロストリジウム・ディフィシル感染についての研究論文を見つけた。

エレンは、アンドルーがクロストリジウム・テタニ…破傷風菌に感染しているという仮説を立てた――通常血液から筋肉に感染するこの細菌がアンドルーの場合は腸に入り、本来なら腸のマイクロバイオータが入植を妨げるはずが、抗生物質の投与で数が減っていたために定着し、何かの神経毒でアンドルーの脳に影響を与えたと考えた。

エレンは主治医にこの仮説を話し、主治医は検査の手配をした。

ほとんどの幼児と同じで、アンドルーも破傷風の予防接種を受けていた。

なので抗体があるのは想定内だったけど、検査結果はグラフに収まらないほどの高い抗体値を示した――予防接種でこの様な高い数値はでない。

その後、他の検査がすべて陰性だったのでエレンはさらに自分の仮説に確信を強めた。

そして多くの医師に、バイコマイシンで破傷風菌の治療をしてくれるように手紙を書いた。

破傷風の症状がなく、神経毒が血液脳関門を通過できるはずがないという理由で反論された――予防接種を受けているのになぜ感染するのかとも。

エレンはさらに勉強し、破傷風の筋収縮が神経毒が筋肉の神経に作用するために起き、腸で感染した場合はそうならないこと、そして神経毒が迷走神経を伝って脳に到達する実験についても学んだ――迷走神経は血液脳関門を迂回する。

37人目の医師、小児胃腸科専門医のリチャード・サンドラーがエレンの仮説をじっくり聞いた。

2週間考えたサンドラーは、4歳半のアンドルーに8週間の抗生物質投与を決めた。

サンドラーは治療前、一連の検査と臨床心理学者の協力を得た――アンドルーの行動を連続で観察し、何か変化があったらすぐわかるように。

治療が始まって2日後、症状は激しくなった。

その後、多動が収まった。

2週間でトイレの練習を始め、その後の2週間で習得した。

母親の言葉に関心を示し、共感を示すようになり、多くの言葉を覚えた。

食べ方も落ち着き、臨床心理学者の記録をみなくても、見ただけでその変化は理解できるほどのものだったらしい。

だけど抗生物質の投与をやめると、1週間でもとに戻った。

この改善は非常に明白だったので、微生物学者のシドニー・ファインゴールドが関心を示した――嫌気性細菌の専門家で、クロストリジウム属も嫌気性細菌。

サンドラーとエレンは、ファインゴールドと共に、遅発性自閉症と下痢を併発している子供11人に同じ試験を行った。

アンドルーと同じ結果だった――残念ながら、効果は持続しない。

その後、今から15年前にファインゴールドは自閉症児13人と健康児の8人で、大腸内の微生物を比較する試験をした。

ヒトゲノムプロジェクトの解析が終わったばかりで、DNA解析はまだ高価だった――ヒトゲノムの解析が終わった後、ヒトマイクロバイオームプロジェクトの第1期が始まる。

彼は無酸素状態で培養する技術を持っていたので、調べることができた。

破傷風菌は見つからなかったけど、自閉症児の腸にはクロストリジウム属の細菌が10倍多くいた。

うつ病や統合失調症、強迫性障害などの心の病は、サイトカインという物質が出て免疫が過剰反応している。

自閉症患者も、サイトカインが多く出て免疫が過剰反応している。

マイクロバイオータが変化すると、免疫が過剰に反応して危険なのだと現在ではわかっている。

ファインゴールドはその後も、自閉症児と健常児のマイクロバイオータを比較する研究をつづけた。

そして多くの自閉症児に共通している種を発見した――エレン・ボルトにちなんでクロストリジウム・ボルテアエと名付けた。

          ミィ

デリック・マクフェイブは、高校生の時に支援を必要とする児童の世話をするボランティアをしていた。

多くは自閉症児で、胃腸障害もあった。

精神医学を学んで病院で働いているとき、精神科に回されてくる患者に胃腸障害が多いことに気付く。

そうした中に、突然精神障害が出て統合失調症と診断された男性がいた。

胃腸の症状を手掛かりにウィップル病だと判明した。

多くの自閉症児と同じで固執傾向が強く、1日中マクフェイブの名前を呼び続けた。

抗生物質の投与で、1週間でもとに戻った――男性は長い夢をみていた様だと語ったらしい。

マクフェイブはこの経験で、腸と脳の関連性を強く信じるようになった。

そしてファインゴールドの研究を知る。

彼はその時、プロピオン酸を調べていた――脳卒中の研究をしていた。

プロピオン酸は短鎖脂肪酸で、腸でマイクロバイオータが食べ物を分解するときにできる――酢酸や酪酸とともに、私たちには重要な物質。

マクフェイブはプロピオン酸がパンの防腐剤に使われていて、自閉症児がパンを好むことに注目した。

そしてプロピオン酸はクロストリジウム属の細菌が生産する。

この分子自体は有害ではないけど、自閉症児の体内にこれが多いかもしれないと考えた。

最初にラットの脳脊髄液にプロピオン酸を微量入れてみた。

すると数分後、ぐるぐる回ったり何かに固着したり、奇妙なふるまいを始めた。

そのラットを同じケージに入れると、互いのにおいは嗅ぎあわずに相手を無視してぐるぐる走り続けた。

チックや多動も示し、自閉症の人と同じ特徴が出る。

ただ30分でもとに戻る。

生理食塩水を入れた場合は、変化はなかった。

注射や食べ物からプロピオン酸が入っても、同じ効果が出ることも確認した。

次に自閉症患者とラットの脳を比べた。

どちらも炎症の痕跡があり、免疫細胞が大量にあることが分かった――統合失調症なども同様。

不必要な神経細胞を分解するので、免疫による炎症はすべてが異常な状態ではない。

マクフェイブの研究チームは、プロピオン酸を入れたラットを迷路にいれた。

すぐに正しいルートを学習した。

次に正解ルートをかえる。

このラットは最初に覚えたルートを忘れる事が出来ない様で、何度も最初のルートを進もうとする。

なので壁にがんがんぶつかる。

自閉症の人の中には、非常に記憶力が高い人たちもいる。

レオ・カナーは、自閉症児たちが一度覚えたことを応用できない様だと指摘している。

マイクロバイオータに記憶形成を促進する能力があるのなら、自分たちに都合のいい食べ物を記憶させることができる――無菌マウスを迷路に入れると、まったく抜け出せなくなる。

マクフェイブは、自閉症が忘却を阻止する経路が過剰に反応していることで出る症状なのではないかと考えている。

微生物学者のエマ・アレンは、ファインゴールドから自閉症の原因が腸ではないかという考えを聞いた。

アレンもそのことを疑っていて、ただ特定の種や属ではなくマイクロバイオータ全体の影響が重要なのではないかと考えている。

それで重度の自閉症児の排泄物から集めたマイクロバイオータを、研究室の容器で培養して研究することにした――このチームには、エレンの娘でアンドルーの姉の、エリン・ボルトが参加している。

容器内で生産される物質を、腸の細胞に加えるとどうなるかを繰り返して調べている。

この容器に入れるエサを変えれば、マイクロバイオータにどのような変化が出るのかも研究されている。

十分に試験を重ねて実証するまでは、まだ確実なことは言えない。

性格は遺伝子や育つ環境だけではなく、腸のマイクロバイオータによっても変わるという説はまだ多くの反発を受けている。

                         ポチャ ポチャ  ・・・

私たち動物は、マイクロバイオータの助けで食べ物から効率よく必要な栄養を摂取できる。

パンダも牛も、ゴキブリも魚も鳥も、マイクロバイオータの助けで生きている――それがなければ栄養が足りずに生きていけなくなる。

―――デイヴィッド・ヴェッターは、マイクロバイオータをほとんど持たずに生きた。

彼は遺伝的に免疫が働かず、病原体への抵抗力を持たない重症複合型免疫不全症という疾患をもって生まれた。

帝王切開で産まれ、無菌室でビニール手袋越しに育てられた――消毒した粉ミルクを与えられていた。

両親のにおいを知ることはなく、何かをするときも、ビニールシートが常に間にあった。

望みだった姉の骨髄は移植に適合せず、彼は12歳で亡くなるまで一度も病気にかかることはなく過ごした――ドナーが見つからなかったのでリスクを覚悟で姉から移植を受け、その骨髄に隠れていたエプスタイン・バー・ウイルスによってリンパ腫が引き起こされ、手術から1月後に亡くなった。

彼はビタミン剤を飲むことでマイクロバイオータの不在を補っていたけど、徐々に腸内の微生物が増えていた――定期的に便が調べられていた。

無菌マウスは、小腸壁のひだが無い場合が多く、みな盲腸が巨大になる――理由は分からない。

小腸壁にはパイエル板という通過する粒子を調べる免疫器官がある。

無菌マウスはこれが未熟で、無菌室から出ると感染症にかかり死ぬ――たった一種の微生物を無菌マウスに与えるだけで、赤痢にかかっても死ななくなる。

通常マウスが抗生物質でマイクロバイオータが乱れると、感染症にかかりやすくなる。

85000人を対象に、ニキビの治療で抗生物質を長期間服用した人は、そうでない人に比べて風邪などのリスクが2倍だった――大学生を対象にした別の試験では、4倍だった。

マイクロバイオータは、私たちの免疫系の発達に重要な影響を与えていると思われる。

デイヴィットは死後解剖で、消化管が正常に発達していたことが確認された―――

卵から孵化した時、固形物を食べ始める前、生まれた直後に母親が自分の便を与えるなど、様々な方法で母から最初のマイクロバイオータが子供に渡される。

人であれば、産道を通るときに受け取る――他の動物では子宮内で微生物の受け渡しが始まっているらしい事もわかっていて、人に関しても研究されている。

ラクトバチルスが多く、これらが出すバクテリオシンによって病原菌は数を増やすことができない。

帝王切開が世界的に増えていて、この最初の受け渡しができない子供が増えている――感染症やアレルギー、自閉症に自己免疫疾患などのリスクが上がる…肥満のリスクも。

子供と母親の命を守るために、帝王切開が必要な時はためらうべきではない。

ただ、そうではない場合が多くなっている。

出産の痛みを避けることができるし、仕事をしている女性の場合スケジュールが確実になる――担当の医師も。

妊婦は時間を節約し、病院は帝王切開によってより収入があがる。

合衆国では3人に1人が帝王切開で産まれる――私の祖国は5人に1人にまで増えている。

5割近い国もある――教皇の居住地がある都市だけでみると、80%にも達する。

アマゾン川の主な部分がある国では特に帝王切開の割合が多く、3人目の子供は自然に産もうと考えた母親が自主的に病院を退院したら、武装警官に捕まって強制的に帝王切開にされた――過去の傷口が破裂する危険があるという古い考えのためだと思われる。

帝王切開だと、新生児は医師や看護師、空気中に浮遊している微生物やシーツの細菌を受け取る――帝王切開の後、ガーゼを使って、母親からマイクロバイオータを子供に移すと言う方法もある。

ただ、出産後の数か月で経腟出産の子供の組成に似てくる――この期間のマイクロバイオータの差が、その後に影響を与えているかもしれない。

そしてあらかじめ計画して帝王切開にする場合と、出産中に止む負えず帝王切開にする場合とでは、その後の母乳に変化が出る。

人はオリゴ糖を分解する酵素を持っていない。

だけど人の母乳には130種くらいのオリゴ糖が含まれている――これは人に特有で、牛乳だと数種類しかない。

女性の乳房では妊娠期と授乳期に、オリゴ糖がつくられる。

このオリゴ糖は、生まれたばかりの赤ちゃんのマイクロバイオータのエサになっている。

母乳で育つと、その子の腸にはラクトバチルス属とビフィドバクテリウム属が増える。

ビフィドバクテリウムは酪酸などに加えて、乳酸塩という短鎖脂肪酸も出す。

この乳酸が、赤ちゃんの免疫の発達を助ける――大人が食物繊維に頼っている様に。

またオリゴ糖は、病原菌が腸壁に結合する前に、その足場に結合して害を未然に防ぐ――130の内、数十種類がその仕事をしているとわかっている。

そして母乳の成分は、子供の成長に合わせて変化する。

出産直後は免疫細胞と抗体、それにオリゴ糖が豊富に含まれている。

赤ちゃんのマイクロバイオータが安定して来るのに合わせてオリゴ糖の量は減り、1年後には1/4程度に減っている――母親がその生産量を変えている。

また、母乳には細菌も含まれている。

樹状細胞という免疫細胞は、長い腕を持ってる。

それで腸内の微生物を調べ、敵を見つけたら取り込んでナチュラルキラー細胞…NK細胞に退治させる。

母親の樹状細胞は、有益な微生物も取り込んで血流にのせて乳房に運んでいる。

出産直後の母乳には、数百種の微生物が含まれている。

徐々に減っていき、やがて口内にいる微生物にかわる――離乳に備えているのだと思われる。

この微生物の取り込みはまだよく理解されていないけど、陣痛中に何か信号が出るらしい――そして胎盤から母乳に栄養が行くようになる。

計画的に帝王切開した場合、母乳に含まれる微生物が減り、その影響は半年は続く。

陣痛が始まってから帝王切開に切り替えた場合、経腟出産した場合と同じような成分になる。

粉ミルクは様々な栄養を付加されているけど、微生物やオリゴ糖は含まれていない。

WHOは、最初の6か月は母乳のみで、それから2歳までは適切な補完食を合わせて母乳で育てることが望ましいとしている――ちなみに狩猟採集民は、3歳ころまで母乳で育てる。

生後すぐに粉ミルクで育てた場合、耳感染症と皮膚炎と喘息が2倍、呼吸器感染症が4倍、胃腸感染症が3倍、壊死性腸炎が2.5倍、乳幼児突然死症候群が2倍、それぞれリスクが高まる――それ以外にも指摘されているリスクはあり、糖尿病のリスクは60%高まる。

母乳で育てると、子供が過体重になるリスクも下がる――長い期間続けるほどよく、最大9か月で30%下がる。

でも、様々な理由でそれができない場合もある――十分に母乳を出せない女性は、5%ほどいると推定される。

経済的に難しい場合もある。

なるべく母乳育児がしやすいような社会的環境と、周りの理解が必要だろう。

粉ミルクの改良も努力されている――オリゴ糖と微生物群の適切な組成はまだ理解されていない。

生まれて3年間は、まだ腸の微生物の組成は安定していない。

ビフィドバクテリウム属は1年かけて減っていく。

その後、固形の食べ物を食べ始めるとアクチノバクテリア属とプロテオバクテリア属が減ってフィルミクテス門とバクテロイデーテス門の細菌が増える。

どんどん多様性が増していき、3歳ごろには母乳育児と粉ミルク育児の差は無くなっていく――乳酸菌はほとんどいなくなり、母親の腸の組成に似てくる。

マイクロバイオータの多様性は、肥満やアレルギーにも影響を与えている可能性がある。

                                                   ―――

                    パチチ  ・・・

ノロマさん達の体温が上がったら、雨の様子を見てまた歩こう。

舗装路に出てしまえば、ノロマさんが道を知っているだろう。

「zzz」

折れ耳のネコは、寝てる。

体も乾いて、シロネコに抱えられて温かそうにしてる。

            パチ

黒猫の側に行く。

「ニャ~」

さっき、頭を撫でてやった。

黒猫は筋肉が発達しているから、多少の寒さは平気な様。

         ペチ

「・・・」

しまネコも結構平気みたいで、ドラム缶の周りをウロウロしてる。

よく黒猫と一緒にいたから、十分に運動能力が発達したらしい。

2匹とも、見張りをしているんだろうか。

耳がよく動く・・・・

                   パチチ

              zzz                 

                                            ァァァァァ   ・・・・

                        ポチャ ポン

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