隠す

2017年02月12日 14時17分06秒 | 黒猫のひとりごと

                      ガサ

                                                 ォォォォ  ・・・・・

        ガタン

フタが閉まった・・・

「・・・」

男の木箱ベッド。

寝袋をどかして、その下の箱に秘密のゴミ袋を隠したのである。

マグネットも。

なんでかな。

「・・・・」

男が僕をみた。

目は光ってないけど、何かを伝えているのだ。

コートじゃなくて、フードのついたのを着てる。

リュックも用意しているから、森に行くみたい。

黒い杖もあるし。

        トコ  ・・・

そして男は歩き出した。

      

僕もついて行く。

                                 ・・・

動くと点くライトの上に、メジロがいる。

ゴミ袋を隠した場所を、見ていたのだ。

                トコ

                               ―――  ・・・・

おや。

声。

右、左、左、右と曲がると、冷凍庫。

「いいね・・・まだまだ入る」

「うん・・・だいぶ使ったから」

チーフさんとバレッタさんがいる。

冷凍庫を開けて、中を確認している。

「・・・あんたは移らないの?」

「うん」

「ニャ~」

                   バタン

閉めた。

横向きで上にフタが開く冷凍庫だから、あんまりつめたい空気が出てこない。

「おいで」

チーフさんがしゃがんで手招きする。

      ト  ト

チーフさんをだますのは難しいと考えて、秘密のゴミ袋を隠したのかもしれない。

           スリ  スリ

僕はスリスリしておく。

「元気そうね」

「ニャ~」

                トコ

男はそのまま去った。

「箱が多いね」

「うん」

「なんでこんな迷路になってんの」

「マロックさんがつくったの」

「♪」

のどを撫でてくる。

バレッタさんがドアの方をキョロキョロ見てる。

「・・・マロックさんがね、こっそりリンゴとかをたべてるみたい」

そして、コソコソチーフさんに話しかけた。

「ああ・・・それで迷路にしてんの?」

「そうかも」

密談である。

冷凍庫の何かを、つまみ食いかな。

「・・・・」

でも僕は、それを目撃するつもりも責めるつもりもないのだ。

僕らはリンゴをたべているんだから。

                 ――  トン

冷凍庫のフタにのる。

「・・・・」

                              ――  ・・・・

声がして、誰かこっちに来る。

                                      

僕は枠台車にのる。

「・・・上手に乗るね」

「うん」

              

                               トン

箱から箱に跳ねて移動する。

人よりも速くドアに行ける。

                   

ニャ

コックさんが箱を見てる。

「これじゃ、中身が分からないな・・・」

何か言ってる。

「ニャ~」

「・・・よぅ」

僕に気付いた。

箱を確認しているのだ。

コックさんだから。

チーフさんじゃなくてコックさんに見つかるリスクを回避するために、秘密の袋を隠したのかもしれない。

             

僕は去る。

「・・・ずいぶん積み上げたな」

                とりあえず冷凍のだけ運ぼう

                                        ―――

後ろから聞こえる声は、心配ない。

男はすでに袋を隠している。

寝袋をどかしてまでは、調べないはずである。

                                     ――  トン

素早い僕は、箱島まで一気に来た。

             トコ

男は後ろを振り返らずに、ドアに向かっている。

                              ギィィ  ・・・

開いた。

「ニャ~」

僕も外に出る。

                            キキ

             ――

どっかに隠れてたリスが、僕の背中にのった。

                        ―――

                                            ザヮヮヮヮヮ  ・・・・・・

・・・外は荷台の中より明るい。

でも、もうお日様が帰る前。

                        バタン

         ジャリ

家トラックの方に行く。

それよりも前、横向きに家トレーラーがいる。

コックさんたちが乗って来たのだ。

トラックと同じくらいの大きさである。

斧さんがいた。

箱テーブルで、斧さんが大きなリュックに何か入れてる。

お弁当かな。

「ニャ~」

鳴く。

「あ、マロックさんも食べますか?」

「?」

「出発前に、少しでもたべておいた方がいいかと思って」

「パン?」

「うん・・・焼きたてですよ」

「たべる」

       ジャリ  ・・・

ごはんみたい。

でも、ちゃんとした食事ではなく軽食である。

        

斧さんはフードの付いたコートを着てる。

ずっと前に、ノロマさん達に選んでもらっていたやつである。

                        トン

僕は大きな肩にのる。

                    モグ

パンたべてる。

「クゥ♪」

ノロマさんの足元に、チワワがいる。

シッポがゆれて、足にあたってる。

「いただきます」

                 サク

男も、お皿にのったこんがりパンを食べた。

タマゴとベーコンがのってて、一緒にかじった。

                                モグ

おいしそう。

「♪」

ノロマさんの手が伸びて、僕を掴んだ。

「・・・」

逃げることは簡単だけど、捕まっておく。

何かくれるかもしれないのだ。

男の杖のグリップには、腕ライトが付いてる。

「・・・・」

パンを食べながら歩いてるリフがいる。

大倒木の横をうろうろしていたみたい。

リュックを背負ってる。

3人で森に行くようである。

マッチョさんたちはたぶん崖の方。

「ニャ~」

マグロを見つけたら、僕のも持って帰って来てね。

「・・・ァゥ」

斧さんは了解した。

ノロマさんは、たぶん家トレーラーの中を見に行くと思う。

僕は中の様子を確認する必要があるのだ。

チワワと・・・・

                              チュン

 

          モグ

                                                  ヮヮヮヮヮ  ・・・・・

                     


新しい杖

2017年02月12日 00時45分34秒 | マーロックの日記

                                            ヒュルル  ・・・・・

                   ブロロン

   ジャリ

小石が跳ねた・・・

天然橋を渡るトレーラーのタイヤが、弾いた。

「・・・戻っていく」

「・・・・」

タブレットには、ドローンの映像が映ってる。

私たちを追ってきていたバイクが、狩猟小屋の方に去っていく。

コックさんたちが乗って来たキャンピングトレーラーは、無事に橋まで来た。

狩猟小屋の先は地面がデコボコしていて、あまり速度は出せない。

それでも小屋にいたバギーは、追ってはこなかった。

トレーラーが小屋を通って2時間くらい経ったころ、5台のバイクが小屋から向かってくるのをカールさんのドローンが見つけた。

コックさんたちのトレーラーよりも後ろから小屋に向かってきていた、2台目の大型トラックが運んでいたらしい。

4台は一人乗りで、1台は2人。

みな背中に長い銃をかけていて、たぶんライフル。

それから1時間、トレーラーを誘導して先にここまで戻ってこられた。

かなりの速度で追いかけて来ていたけど、あきらめたらしく5台が去って行く。

無理に追ってこないのは、ガードさんの狙撃が効いているんだろう。

あいつらが何者かは分からないけど、むざむざ的になりに来るほど愚かではないらしい。

走行中に追いつかれたら、危なかったかもしれない。

「・・・・」

トレーラーを無事に通した後、私たちのバギーも一緒に逃げた。

あのまま助けを呼びに舗装路を目指していたら、バイクに囲まれていただろう。

無理はしないでよかった。

                                                       ウィィィ     ン

ドローンが下りて来る。

車とバギーは先に橋の向こうにとめて、私たちは橋の上でトレーラーが通過するのを待っていた。

カールさんが大型ドローンを飛ばして、追ってくるバイクの様子を伺っていた。

「私たちも戻りましょう」

「はい」

ゆっくり安全に橋を渡っていたトレーラーが、無事に手すり倒木の間を通過した。

マッチョさんとガードさんとハンスさんが、一緒にいる。

ハンスさんが猟銃を3つ持って来てくれていたから、マッチョさんもライフルを持ってる。

衛星電話で熊もいるらしいと聞いていたからで、ショットガン1つにライフルが2つある。

バレッタさんが誘拐されそうになった事もあったので、こういう事態も想定はして余分に持ってきたらしい。

弾もそれなりにある。

防弾シールドも持って来てくれた。

シールドは私たちが頼んだからだけど、老紳士が用意してくれたらしい。

2枚あって、1枚はマッチョさんのヘルメットと同じ超高分子量ポリエチレンでできたシールド。

サイズの割りに軽く、小窓も付いていて防弾ガラスになってる。

ライフルの弾も弾く様。

もうひとつのシールドは高価なやつで、重くて車輪が付いてる。

セラミックで弾を弾かずに止める。

3枚の板がコの字になっていて、すべて正面に向けるとそれなりの範囲を守れる。

重いから、まだトレーラーの中。

                               ブロロロロン  ・・・・・

森の近くでとまっていたトレーラーが、また動き出した。

斧さんとゴムさんと、チーフさんを降ろしたらしい。

私たちが乗って来た大型トラックに近いサイズの、大型のキャンピングカー。

                                         ィィィ  ン

私たちより先に、ドローンが橋の向こうに戻った。

離陸地点に自分で戻る。

                   ジャリ  ・・・

「・・・やっぱり逆恨みかな」

「どうかな・・・」

ヘテロたちは自分たちを襲った連中には、心当たりがあると言ってた。

たぶんヘテロたちが潜入して壊滅のきっかけをつくった密売組織のやつらだと言う。

警察から逃げ切ったブローカーたちが、3人を恨んでいて襲ってきた可能性はある。

・・・ただ、頭にきたからと言うだけでここまで大掛かりに攻めてくるものなんだろうか。

金銭的な利益の可能性も低いだろうし。

「・・・財宝の日記というのは?」

「まだ読んでませんか?」

「ええ・・・」

ハンスさんとゴムさん夫妻は、急きょコックさんたちに同行することになった。

ざっくりと状況は聞いている様。

「森の中にあるから、後で読んでみてください」

「うん」

                                       ブロロロ  ・・・・・

森の方に行ったトレーラーが向きを変えてる。

後進で森に入る様。

ノッポさんとシャープさんが、2人で誘導してる。

                                          ――

にぎやかな声。

大タープから来た女性たちが、チーフさんとゴムさんと再会したのを喜んでいるみたい。

まだヘテロたち4人は大タープには来ていない。

小屋の連中も襲ってはこなかったし、準備をして迎えに行ってみよう。

マッチョさんとガードさんは橋の守りがあるから、私が行く。

斧さんも一緒に行けるかな。

「なんで電話持ってこなかったの」

・・・フワリさんがチーフさんを責めてる。

「あんた達が持ってたし・・・」

「無事でよかった♪」

女性たちの中では、チーフさんは一人体が大きい。

客船では、船底のクルーのチーフ。

「ああ・・・そうだ、冷凍庫あるんだろ」

「うん」

「いろいろ買ってきたから、移そう」

「冷凍庫に入れてないの?」

「箱に入れて、ドライアイスで冷やしてる」

「ふぅん」

トレーラーには、かなりの食料を載せて来たらしい。

燃料も。

助けを呼びには行けなかったけど、トラックの荷台にあるのと合わせれば相当持つ。

保安官が異変に気付いてくれるまで、十分に食べて行けるだろう。

水は、森の中にも川がある。

ろ過ポンプはいくつもある。

                                               ――   ヮヮヮヮ

                    チチチ  ・・・

下の森から音。

風がよく通るみたい。

          

倒木の間を通る。

「・・・・」

リフが細い幹を持ってる。

「・・・何に使うの」

「根っこに引っ掛けて門にするんだ・・・」

・・・橋の両脇に置いた手すり倒木の根っこらしい。

横に木をかけて、バイクなどの侵入を阻止するための門にする様。

もし橋を突破されそうになった時の、最後の守りのためだろう。

丁度いい長さに切ってある。

                   ガタ  ・・・

「・・・・」

私とマッチョさんも手伝って、倒木の橋側の根っこにかける。

その幹の下をくぐって、内側に入る。

「・・・ごくろうさま」

ハットさんが来た。

まだ起きてる。

「ええ・・・彼らが知らせてくれなかったら小屋のトラックと勘違いしてましたね」

「小屋のトラックは青くなかったよ・・・」

「そうだった?・・・でもまぁ、一度はとまって確認しただろうね」

私たちの乗ったトラックは青いと言うのは伝えてあった。

狩猟小屋にあった同じくらいのサイズのトラックは、緑。

「・・・・」

幹の門の前に、車をとめておけばさらに安全だろう。

高速でバイクに突破されることもない。

「・・・ァゥ」

斧さんが私の杖を持って、待っている。

「ありがとう」

プリントとDLCコーティングは、間に合ったらしい。

「そっちは?」

もうひとつ、長めの棒を持ってる。

「・・・ああ、彼があの研究者に頼んで作ってもらったらしいよ」

ハンスさんが説明してくれた。

「そうですか」

                ――――

私は自分の杖をみる。

長さは119cm。

新しくAIが設計してれた。

チタン合金だけど、中心の軸と表面、その間を支える構造で合金の組成を少し変えてあるらしい。

硬く靭性もあって、大気圏外の様な極低温でももろくならない。

重さは以前のより、150gほど重くなってる。

その方が望ましいというAIに従った。

                  ―― ゥン

重さは気にならない。

もともとそんなに重いわけではない。

先の方に重心がある素振り木刀よりも、振った感じは軽いし。

まっすぐ楕円で、先に行くほど細くなる。

もともとの杖は、持ち手…グリップの部分から先にかけてただ細くなるだけだった。

「・・・・」

新しいのは、グリップからすぐ先の長軸側がほんのわずかに厚みが増している。

そこから細くなるので、全体的に前のより厚みがある。

電話でそう聞いていたからわかるけど、見ただけでは差はほとんど感じない。

グリップの部分も表面の合金を変更していて、これもよく見ないと分からない程度にひねりが入ってる。

それだけだけど、持った時の感じがいい。

もともとの杖は115cmだったから、4cm長くなってる。

これはわたしが頼んだもので、グリップから先が長くなった。

「新しいのだね」

「はい」

「どう?」

「・・・よくできてる」

前のはただの棒だったけど、これはより武器らしくなってる。

表面はDLCコーティングで、さらに硬度が上がってる。

色は光沢を抑えた黒。

「新しい輪をつくる?」

「うん」

僅かだけど厚みが増してるなら、微調整して新しい輪っかを作ってもらおう。

ベルトループに固定して、そこに杖を通しておける。

必要ない時、両手が空く。

「武器なの・・・?」

「そうだよ」

「・・・・」

リフがハットさんを見たら、ハットさんが頷いた。

「それは君が使うのかね」

「ァゥ」

斧さんは、相変わらず体が大きい。

               ジャリ  ・・・

                                   ヒュン  ――

                                                   ヒュゥゥ  ―――

すこし離れて、回し始めた。

「・・・すごい」

「・・・・」

船で教えていた時よりも、ずっと上手になってる。

マッチョさんより体は大きいけど、なんだか以前より素早くなっている気がする。

「練習してたのか」

「ァゥ」

そもそも斧さんの育った国は、棒を回す技術に優れている。

船を降りてから夏の間、誰かに教わったのかもしれない。

斧さんの杖は、長さが1.8m位。

私のと違ってただの棒で、グリップ部分もない。

「すぐ、4人を迎えに行ってきます」

「疲れてないかい」

「・・・俺は寝てるから大丈夫です」

「そう」

「お前も来い」

「ァゥ」

斧さんも連れて行く。

テントとか多いし、持ってもらおう。

「僕も行く」

リフが言った。

・・・何か手伝いたいんだろう。

「うん」

3人で行こう。

「リュックとってくる」

                

大タープの方に去った。

                         チュチュン

「ニャ~」

黒猫が来た・・・・

               

                                   ロロロロ  ・・・・

                                                 ゥゥゥウウ  ―――