行雲流水

阿島征夫、一生活者として、自由に現代の世相を評す。時には旅の記録や郷土東京の郊外昭島を紹介する。

31年ぶりの貿易赤字が示唆するもの

2012-01-26 11:48:15 | Weblog

昨夜のトップニュースは31年ぶりの貿易赤字であった。しかし、経常収支は依然として大幅な黒字であり、円高は依然として続いている。1960年代の高度成長期には成長が加速すると経常収支がすぐ赤字になり、国際収支の天井にぶつかった。1970年代は石油ショックで石油の値段が高騰すると貿易赤字となった。その後、自動車、電機といった国際競争力の強い産業の輸出が伸び、貿易収支は黒字に転換、また円高傾向になり、企業の海外投資で所得収支も黒字が加速し、世界トップクラスの外貨を貯め込むことが出来た。

今回の貿易赤字は原発事故で燃料の輸入が急増したことも要因の一つだが、今後の日本を占う一つの現象で何を示唆するものだろうか?マスメディアが輸出立国日本と言っているが国際的に見て、日本の輸出はそれほど大きくない。GOP比率で見ると、日本の10%は先進国の中でも米国(7%)と並んで最小の部類だ。ドイツは数量で約日本の倍、輸出比率は37%にも達している。

貴重な資源やエネルギーの輸入を一部の輸出産業で賄っているという構図が崩れ、当面は所得収支の黒字でやりくりするという事になる。個人で例えれば利息生活者になるという事だ。従って世界的に金利が高ければ左団扇だが、低くなれば経常収支は赤字になり、謝金生活が始まる。

その時期をエコノミストは5年から30年と予想にもならないことを並べている。自動車産業は大震災とタイの洪水でドイツや韓国に遅れをとったが、技術的な優位でまだまだ期待は出来る。しかし新たな輸出産業で貿易赤字を均衡させることが求められている。輸出比率を倍にしても20%で、そんなに難しい目標ではないだろう。要は日本人にとって良いものは他の国でも良いからどんどん買って貰おうというオール輸出産業化で、インスタントラーメンなどはその先駆者だ。

シンガポールは人件費は日本と変わらなくても165%の輸出比率で繁栄を謳歌している。規制の緩和、貿易の自由化を徹底しているからで、話題のTPPを提唱したのもリークワンユー元首相だ。ハイテク企業でこれからシンガポールに工場を建てようとしている企業があるが、日本に踏みとどまらせる総合的政策が必要だ。

コメント (1)
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