黒猫のつぶやき

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判決文、わかりやすく 最高裁、裁判員導入へ文例検討 (朝日新聞)

2005-11-09 12:01:29 | 司法(平成17年)
判決文、わかりやすく 最高裁、裁判員導入へ文例検討 (朝日新聞) - goo ニュース

 新しい判決文では,「未必の故意」を「とっさに『死んでもかまわない』との思いを抱いたとしても特に不自然ではない」と言い換えるそうですが,故意に関する刑法の考え方は,そもそも一般の裁判員に理解させるにはあまりにも複雑で分かりにくいんですよね。
 殺意の問題で言えば,死という結果が起こる可能性を多少認識していただけでは,単なる「認識ある過失」であって故意ではない。
 結果が起こる可能性を認識し,かつその結果を認容して(死んでも構わないという認識で)いた場合には「未必の故意」になり,死という結果を意図して(殺してやるという認識で)いた場合には「確定的故意」になる。未必的故意と確定的故意は,法定刑は同じだが情状面で大きく異なる。
 もっとも,この「故意」を実際にどうやって判定するかというと,具体的な行為の態様に照らし,通常人が死ぬと認識できるような行為であれば,たとえ本人が殺意はないと主張していても殺意を認めている。そうしないと否認得になってしまうからだ。
 裁判にかかわるのが専門の法曹だけであれば,こういった法体系でも問題は特に生じなかったかも知れないが,裁判員に判断させるのであれば,そもそも殺意の有無という曖昧な概念で殺人罪と傷害致死罪を分ける刑法の規定自体を改めるべきではないかと思うし,法定刑についても細かく分ける必要があると思う。
 そうしないと,せっかく裁判員が出した判決が高裁で破棄されまくって,裁判員制度の意味がなくなるでしょう(もっとも,こういう制度を導入すると,法科大学院の学生たちに小難しい刑法理論を教える意味もなくなってしまうけど)。