黒猫のつぶやき

法科大学院問題やその他の法律問題,資格,時事問題などについて日々つぶやいています。かなりの辛口ブログです。

論点が違うのではないか・・・?

2007-08-02 22:42:22 | 法曹養成関係(H25.1まで)
 「ボツネタ」経由。

http://www.chunichi.co.jp/s/article/2007080101000557.html

 中日新聞の引用記事によると、実際の問題と似た論点を考査委員の植村栄治・慶応大法科大学院教授(57)が学生に伝えていた5月の新司法試験をめぐり、神戸学院大法科大学院の樺島正法教授(62)らが1日、公平な採点を求める上申書を長勢甚遠法相あてに郵送したそうです。
 上申書では、「現行の試験は一部の有名大学に考査委員が偏っており、西日本に不利だ」とも主張されており、関西大(大阪府)と関西学院大(兵庫県)の両法科大学院も7月、同様の要望書を法務省に提出しているとのことです。

 司法試験の考査委員に限らず、法律学者のうち政府関係の公職に任命される人は、以前から東京やその近辺の大学の教授に偏っていると言われています。ただ、それは東京の学者の方が優秀だからというわけではなく、西日本など遠隔地の大学の教授に委員を頼むと交通費がかさむから、という極めて安直な理由のようです。
 司法試験の考査委員に関する不満は、そういった公職の東日本偏在に対する不満の延長上にあるとも考えられ、上申書を提出した樺島教授らの主張も心情的に理解できる余地がないわけではありません。

 しかし、「西日本に不利だ」という主張は、明らかに論点が違うでしょう。本来、考査委員が新司法試験を受験する学生に試験問題を漏洩するなどという事態はあってはならないことであり、それを防ぐためには、現役の法科大学院教授は考査委員になれないものとするしかないと思われます。
 これに対し、「一部の有名大学に考査委員が偏り、西日本に不利だ」などという主張では、「俺たちにも考査委員の利権を分けろ」と言っているようにしか聞こえません。新司法試験の施行後2年目にして、早くも考査委員は各法科大学院による利権抗争の具となり果てた感があり、見苦しい限りです。
 樺島教授らは、植村教授を国家公務員法(守秘義務)違反で刑事告発する準備も進めているということであり、それ自体に反対する理由はありませんが、この種の問題について法科大学院側の「自浄作用」を求めるのは、所詮無理な話なのかもしれませんね。

2 コメント

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Unknown (potpot)
2007-08-03 08:34:15
なるほど、この前の読売に全74校でつくる法科大学院協会が有効な対応策を打ち出せずにいるという記事があって、http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20070728i301.htm なぜ法科大学院サイドが漏洩防止のための対応策を立てられないのか不思議に思っていましたが黒猫先生の文章を読んで納得しました。要するに法科大学院協会のメンバーの中心をしめる有名ロースクールは考査委員ポストの利権を手放したくないからなんですね。黒猫先生がおっしゃるとおり公正な試験運営のためには現役の法科大学院教授は考査委員になれないものとするのが最も妥当な対応策だと思われますが、そのような動きが法科大学院サイドに見られないのはもし考査委員から法科大学院の教授を外してしまうと考査委員による漏洩が期待できなくなるため、有名ロースクールといえども合格率が低下する可能性が高いからだと。実際に考査委員の教授がいることを宣伝にしているロースクールもありますし。

そうすると試験対策は法学の勉強そのものよりむしろ考査委員による漏洩情報を入手するという情報収集が重要だという事になります。しかし考査委員による漏洩を前提にした国家試験って試験の意味があるのでしょうか。少なくとも今の司法試験は公平な試験だとは到底言えませんね。現状では法科大学院サイドに自浄能力は全く期待できそうにありませんし、そもそも公正な試験運営を望んでいるという意思があるのかどうかも疑わしい。考査委員から法科大学院の教授を外すべきだと主張をする学者教員は皆無だし。法科大学院にとっては大学の生き残りや教授ポストの確保さえできれば司法試験の公正さなんてどうでもいいという事なのでしょうか。予備校批判から作られた法科大学院ですがやってることは予備校以下ですね。漏洩を前提にした国家試験。それによって大量製造される弁護士。なんか日本の法曹界の将来が不安になります。
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Unknown (Unknown)
2007-08-03 20:25:31
 「利害相反する事件を取り扱ってはならない」というルールは,禁止規範であると同時に,抜き差しならない状況から弁護士を守ってくれる武器でもありますね。やってくれと言われても,「やりたくない」というその人の意思ではなくて,「やってはいけないことになっています」という外部的理由を持ち出して断れるのですから。

 LS教員は試験委員(出題者・採点者)にはなれないというのをルール化した方が,教える方ものびのびとできるので,よっぽど良いと思うんですが。

 法務省様は,LSの教育を信頼していないのですから,そんな信頼できない人たちに頼らずに,自前で問題を作ればいいでしょうし,採点もお茶の子さいさいでしょう。

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