黒猫のつぶやき

法科大学院問題やその他の法律問題,資格,時事問題などについて日々つぶやいています。かなりの辛口ブログです。

司法試験に合格しても弁護士になれるとは限らない

2006-01-30 13:29:44 | 法曹養成関係(H25.1まで)
 金曜日に書いた記事のせいか,29日はひさしぶりにアクセス数の順位が付きました(299位)。普段は順位がつくようなブログじゃないのにね。
 今日は,ボツネタ経由で読んだ記事を紹介します。

http://shirahama-lo.jp/column/syukatsu.html

 この記事,白浜徹朗先生という京都の弁護士さんが書かれたものですが,黒猫の言いたかったことを,ちょうど黒猫以上に事情通の先生が代弁してくれています。
 平成17年10月に司法修習を終えた58期は,二回試験の合格者が1,158名ですが,うち裁判官にも検察官にも弁護士にもなっていない「就職先不明者」が27名いるそうです。なおこの数字には,二回試験に落ちた人(留保31名,不合格1名)は含まれていません。
 司法試験の合格者数が1500名になった今年修了の59期,来年修了の60期はさらに就職が厳しくなると予想される上に,ちょうど今年新司法試験を受けるロースクール1期生たちは,ちょうど60期の就職で法曹界が飽和状態になった半年後に就職することになります。
 法曹界の需要は現在急激に増えているわけではなく,むしろ法曹人口拡大の声に応えるため,これまでめいいっぱい採用枠を増やしてこれまでの合格者数増員に対応してきたという感じです。なにしろ,20年前の司法試験合格者は年間500人程度しかいなかったのであり,急激に年間3000人も受け容れられるほど法律事務所の数が増えるはずもありません。
 しかも,ロースクール卒業生の「前評判」は必ずしも良くないので,採用を考えている人も60期から取ってしまい,わざわざロースクール1期生のために採用枠を残そうと考える人は少ないと思います。去年の同窓会で元検察教官に聞いた話では,検察の人事もロースクール卒の採用枠確保という問題は特に考えていないのではないか,ということでした。
 以上の状況から考えると,おそらく1000人くらいは出す予定と思われるロースクール卒業生のうち,司法修習を経て無事に就職先が決まる人は,いいとこ全体の半分くらいしか出ないんじゃないか,という恐ろしい想像が成り立ってしまうわけです。
 これが弁護士業界の「2007年問題」と言われている問題ですが,いま選挙活動が行われている日弁連会長選挙においても,これを弁護士会が対処すべき重大な問題だと主張しているのは久保利候補くらいです。他の候補が当選した場合は,おそらく日弁連も知らん顔でしょう。
 
 でも,黒猫もときどきロースクール生のブログを読みますが,今年の新司法試験に向かって悪戦苦闘している受験生に向かって,「君たち残念だけど,せっかく頑張って合格しても,就職先ないよ」などと無情にも宣告するなんて,黒猫にはとてもできません。
 司法制度改革審議会の会長としてロースクール制度を積極的に推進された佐藤幸治先生,責任持ってこの役割やってくださいね。その結果,ロースクール卒業生たちに石を投げられたり,佐藤教授が書いている憲法の教科書の不買運動起こされたりしても責任は取れませんが。

注:この記事の公開当初は,ネタ元の白浜先生について「佐賀県の弁護士」と紹介していましたが,佐賀県というのは白浜先生の出身地であり,白浜先生の事務所は京都にあるようです。訂正の上お詫びいたします。

18 コメント

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Unknown (PINE)
2006-01-30 16:55:28
就職不明者については、私のときには、修習終了後大学院に戻って研究者の道に進んだ者や、出身官庁に戻った者、弁護士登録せずに企業に就職した者などもいましたので、必ずしも全員が法曹になれなかったわけではないと思いますが。

黒猫さんご指摘の「2007年問題」については、大変な問題だと認識しております。

ちなみに、私の事務所では、事務所の方針で、暫くは現行試験合格者しか入れない方針です。
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Unknown (ロー生)
2006-01-30 19:11:54
渉外弁護士以外を志望する私としては、

かなり深刻な問題です。



2007年問題についてはローの先生は

(渉外弁護士)「雑音に惑わされないように」とおっしゃっていました。



今、渉外事務所は規模の急拡大をしている

ので、年俸1000万以上のままで、

大規模事務所は年間数十名以上を採用する

予定があるところもある、ということでした。



その先生のお話では、今後は、渉外弁護士

とそれ以外の弁護士で、一軍と二軍という

ようなレッテルが明確になってくることが

確実で、



成績の良いものは渉外弁護士になる、そうで

ない者は、任官・任検、それ以外が町弁という階層構造が法曹界にも生まれる、との

ことでした。



最近は法曹の世界も、「金儲けが出来るか

否か」が唯一の価値基準になっているようで、なんだかさびしく思いました。



私は、行政訴訟や刑事事件を扱う町弁に

なりたいので、就職問題は本当に心配です。

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うーむ・・・。 (黒猫)
2006-01-31 12:02:07
PINEさん,ロー生さん,コメントありがとうございます。

就職先不明の人が研究者になっているならまだいいですが,出身官庁に出戻りとか弁護士登録せずに企業に就職というのは,司法試験合格だけでも十分できることで,修習までやる意味があったのかという気がします。

なお,行政訴訟や刑事事件を扱う町弁を希望されるなら,東京よりは地方での就職・開業をお勧めします。地方では競争もあまり激しくないので。
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ちなみに (zzz)
2006-01-31 23:53:05
白浜先生は京都の先生です
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Unknown (1期既習)
2006-02-01 12:45:29
俺はもう、就職は半ばあきらめつつあるよ。

早く合格してもうこの世界終わりにしたいだけ。

この世界に足を踏み入れたのが間違いだったかも
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たしかに。 (黒猫)
2006-02-01 13:17:12
zzzさん,1期既習さん,コメントありがとうございます。

白浜先生のHPを再確認してみたところ,佐賀県というのは白浜先生の出身地であり,たしかに事務所は京都にあるようです。本文も訂正しておきました。

> 1期既習さんへ

 大変厳しい状況にはあると思いますが,仮に法曹ではないとしても,これまで学んだ法律の知識を活かせる仕事ができるかどうかは本人のやる気次第なので,最後まで諦めずに頑張った方がよいと思います。・・・あまり慰めにもなっていませんが。
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やっぱり就職は厳しそうですね。 (クロウ)
2006-02-01 21:50:58
私は地方(地元)で仕事をする予定なのですが,地元の弁護士先生も,去年は修習生の就職相談者が飛躍的に増大したとおっしゃっていました。

ただ,新司法試験では,合格者にも「順位」が通知されます。これをどうにか活かせないかなぁ,と思う今日この頃です。

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1000万円 (業界人)
2006-02-02 16:35:31
って、修習生にはインパクトがあるんでしょうね。

でも、大手渉外でなくても普通に稼げますから。誰も大声で言わないだけで。

まあ「拡大中の大手渉外に来れば、他ではそれだけ稼げない人にも1000万円を保障するよ」という意味なのかもしれませんね。
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気になる (別のロー生)
2006-02-03 00:33:14
> 私の事務所では、事務所の方針で、暫くは現行試験合格者しか入れない方針



PINE先生の事務所では,なにゆえロー卒業生を差別するのか,教えていただきたいものです。

一企業で大量に何百人と採用する業界であれば,「総合職は大卒のみ」などといった枠をかけるのも合理的かもしれません。

しかし,「ロー卒がだめ」だという評価の妥当性が検証されないうちから,個別に人物評価してもらう機会もなく差別することが横行するのだとすれば残念です。
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就職する気が無い人も (みゆみゆ(ロー未修))
2006-02-03 15:11:54
自分の場合は既に開業コンサルで年収1000万どころか…ごほごほ。

ただ、業務相談で法務に出くわした場合、弁護士さんに仕事を相談せざるを得ない。そこをワンストップにして更に仕事の幅を広げるつもりのロー進学なので、就職の心配は全然していませんよ。



有職者ロー生がどのくらいいるかわかりませんが、既に何かしらの開業をしている人は、自社サービスの高度化をするだけの話ですから、従来のような「司法試験合格時点では無職」っていう人ばかりでは無い事も考慮に入れて、気楽に考えられたら…と思いますよ。



ただ、有職者ローの枠が小さすぎですから、将来の就職問題と法曹の多様化というお題目から考えると、ロー入試段階で有職者枠を増加させて、無職合格者を制度として押さえ込む方策も必要かとは思いますが。
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